プロローグ
初めて投稿します。
どこにも発表する事なく趣味で書いていたものですが、読んでいただけたら幸いです。
「うおおおー! ミラちゃあああん!」
「キャアーー! ソフィ様可愛いぃーーー!」
「こっち向いてくれトモエっちー! 今日もエッチイイィ!!」
野太い悲鳴、黄色い悲鳴が入り乱れる。
石畳に覆われた街の広場は、今回も熱狂的なファン達で一杯だ。
何しろ今ここには街中のほとんどの人間が集まっている。
八百屋も肉屋も仕立て屋も居酒屋も本屋も術具屋も皆、今だけは店を閉めてここに集まっているのだ。
それもお揃いのライブTシャツを着て。
人々は木靴を踏み鳴らし、さらに一体感を増していく。
「皆ーーー! 今日は私達の為に集まってくれて、ありがとうーーーー!!」
ミランダの声が特殊な鉱石で作られたヘッドセットマイクを通して増幅される。
「うおおおおおおおおお!!」
観客の熱狂を一身に浴びる三人は、それを更なる高みに導こうと、煌めく汗を迸らせる。
「どんどん行くよ~!『大事なのは風術? 火術? 恋愛術!!』」
ステージで歌い踊る彼女達を、俺はステージ脇の通路から見守る。
プロデューサーである俺だけの特権であり、この仕事をやっていて最も幸せな瞬間の一つだ。
ステージ上の三人は今日も絶好調。
一七〇センチメートルを超える身長と巨乳、そして黄金色の角を揺らしながら踊るトモエはとてもエネルギッシュで、健康的な大人の色気に満ちている。
トモエとは反対に一五〇センチメートルにも満たない身長のソフィは、その体の小ささを感じさせないほどのダイナミックかつキレの良いダンスを披露している。
最初は表情の固さが目立っていたソフィだったが、最近では自然な笑顔も零れるようになり、顔で歌えるようになってきた。
そして三人のセンターにしてリーダーのミランダは……今日もちょくちょく振り付けをトチっている。
でも多少のミスはご愛敬。元気だけは人一倍で、今日も観客を大いに盛り上げている。
……というか、観客にもミランダのキャラクターが浸透してきたようで、ミランダがミスするのを楽しんでいる節さえあるようだ。……この状況に慣れてしまってはいかんぞミランダ……!
まだまだ懸案事項は山積みだが、この世界でもう一度この仕事が出来るようになった事を、俺は心の底から感謝している。
そう、この世界で。
察しの通り、ここは「現代日本」どころか、「現代」ですらない。
剣と術が息づくどことも知れぬ幻想世界──
ここが俺の現実だ。
今でこそこうして順調に活動出来ているが、ここまでこぎつけるのは、自分自身の気持ちも含めて中々に大変だった。
全ての始まりは、今からおよそ半年前──