エピローグ 一番弟子、帰省する
師匠って……案外知名度低いですよ。
私が師匠の名前を授与式で言っちゃった後も、それに反応したのは元から師匠を知っているとわかっている国王様だけで、それ以外はみーんな無反応でした。
もう今の時代は嫌われ賢者じゃないかもしれませんよ?
まあ、だからってまた世の中に出てきて働けなんて言いませんけどね。
でも、おおっぴらに旅行とか楽しんでもいいかもしれません。
こっちはもう終業式です。
長いようで短かった一学期も終わって、いよいよ夏休みですね。
約束通り私は真っ先に師匠のもとに帰ります。
友達も二人連れて行きます。
師匠も知っているオーカさんとヴァイスさんです。
オーカさんは三者面談で会ったから十分と言っているので道場に帰省はしないそうです。
ヴァイスさんも一回家に帰ってますからね。しばらくはいいらしいです。
そういえば、一番師匠に会いたそうにしてたのはルチル先生かもしれません。
でも、やっぱり先生なので生徒と同じように夏休みとはいかないようです。
なんといっても、二学期には国外の自由騎士学校との合同体育祭も控えているらしいんで!
その学校もオーキッドに並ぶくらい名門ですごいことになっちゃいそうですね!
先生同士が争う競技もあるらしいんで、先生たちにとっても夏は修行の季節みたいです。
師匠も体育祭を見に来ませんか?
保護者は応援に来ても構わないらしいですよ。
全員入れるくらいでっかい競技場が国境付近にあるみたいなんで!
私、活躍しちゃいますから!
となると、夏休みはやっぱり修行ですね~。
あ、そういえばオーカさんもヴァイスさんも戦闘時に武器を持たない珍しい人なんですよね。
オーカさんはそういう主義らしいですけど、師匠は基本持ち込めるならば完全武装して戦うのが基本って言ってましたよね?
騎士として武器と防具なしでは戦えないというのでは困る。
でも、剣をいちいち魔法で作り出すくらいなら一本持ち歩いていた方がその分の魔力を他に回せるし、実際に存在する武器の方が魔法でいろんな強化も施しやすい……と。
防具も同様にあるならつけといた方が防御魔法を節約できるし、そもそも防具も防御魔法も併用した方がより生き残れると言っていましたね。
そこで二人に専用の武器を造ってあげてほしいんですよ!
夏休み中、どこか職人さんがいるところに連れて行ってください!
やっぱり武器がないのは友達として不安ですからね。
防具に関してはオーキッドの制服が相当いい防具らしいのでそれでいいです。
あとは海にも行きたいです!
学園にプールはありましたけど、やっぱり海に行きたいです!
師匠も絶対来てくださいね!
私、もう師匠の水着を王都で買っちゃいましたから!
安心してください。そんな布がほとんどないような水着じゃありません!
むしろ、ほとんど布です!
スラッとしたスタイルの師匠にピッタリな水着で、なんとこれを着ると泳ぎが早くなるらしいです!
魔法ではなく科学とか言ってましたけど、私には仕組みがよくわかりませんでした……。
でも、これは師匠に絶対似合います!
着てくださいね!
私もちょっと恥ずかしいけど攻めた水着を買いましたから!
おあいこです!
まあ、オーカさんの水着に比べると大人しいですけどね。
あの人自分の体大好きですから、見せつけるようなえっちぃ水着を買ってましたよ。
実は私も背中を押したんですけどね……。
女の子同士でも興奮します、あれには。
ヴァイスさんも日光に肌を晒せる吸血鬼という自分の生まれ持った才能を存分に生かすために肌色の多い水着を買っていました。
そこで生かす必要はないと思うんですけど、その美しさに見とれてしまったので言いませんでした。
白い肌と黒い水着のコントラストがたまりません。
女の子同士でも興奮します、あれには。
私は何を書いているのでしょうか。
まだまだ書きたいことはたくさんあるんです。
アズールさんがキャロさんを気に入って王国騎士に引き込もうとしていること(もちろん本人は今でも自由騎士志望です!)とか。
アルバさんの口癖が「ラーラに団長を譲ろう」になっていること(ラーラさんはめんどくさいのでなる気なし)とか……。
でも、それは会ってから話しますね。
だって、もうすぐ直接会えるんですから。
楽しみにしてます、師匠。
師匠のお話も聞かせてくださいね。
あなたの弟子、デシル・サンフラワーより愛をこめて――。
=追伸=
水着に浮かれて書くべきことを書いていませんでした!
私、特級自由騎士になったんです!
なんでも、緊急時だけ騎士として活動が許されるみたいな『ふわっ』とした自由騎士なんですけど、目標に一歩前進です!
それ用のバッチも貰ったんで見せますね!
制服に付けるとカッコいいんですよ!
― ― ―
「あの子も面白いことを書くようになったわ。一通目なんて業務連絡みたいだったのに」
家で一人デシルから送られてきた最新の手紙を読むシーファ。
机の上には一通目の手紙から最新のものまですべてが置かれている。
今日はデシルが帰ってくる日。
シーファもその時を今か今かと待ちわび、待ちきれなくて手紙を一通目から読み直していたのだ。
「帰ってくる前に隠しておかないと……。本人にならまだしも友達に見られるのは恥ずかしいわ」
丁寧に一通一通秘密の引き出しにしまい込むシーファ。
そうこうしているうちに、家の玄関の戸が上品にノックされた。
ここを尋ねてくるものは基本いない。
手紙も近くの村までで、シーファが取りに行く形だ。
扉をノックする人物はこの世に一人しかいない。
「あっ、来ちゃった……。どうしよう、どうしよう……」
シーファは笑顔の練習をする。
彼女もデシルと離れてから遊んでいたわけではない。
成長する弟子に何か自分も成長を見せようと、ずっと笑顔の練習をしていたのだ。
しかし、やっぱりデシルだけに見せるならまだしも、友達にも見せるのは恥ずかしい。
(私のイメージってきっと仏頂面で固まってるもんな……)
だが、ここでやらねば師匠として弟子に何も示せない。
鏡の前で笑顔を何度か作ってから、シーファは扉を開けた。
「おかえり、デシル!」
「ただいま、師匠!」
成長した弟子の姿に、師匠は自然と笑顔になった。
● ● ●
嫌われ賢者の一番弟子 ~師匠から教わった武術と魔術、世間では非常識らしいですよ!?~
-END-
デシルたちの学園生活はまだまだ続きますが、物語としてはここで一つの区切りとさせていただきます!
みんなの大きな成長は描けたかなと思っております!
『嫌われ賢者の一番弟子』を読んでくださった方、ブクマ評価してくださった方、感想を書いてくださった方、本当にありがとうございました!
これからも応援よろしくお願いします!
※7/15追記
新作『白紙の冒険譚 ~パーティーに裏切られた底辺冒険者は魔界から逃げてきた最弱魔王と共に成り上がる~』(https://ncode.syosetu.com/n4155fp/)投稿開始!
予告通り完結済みの自作『PASTEL POISON』のフルリメイク作品です!
本編完全新規書き下ろしなので前作を知ってる人も知らない人も楽しめます!
ぜひ読んでみてください!




