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067 一番弟子、騎士として

「さあ、後は犯人を捕まえるだけです!」


 恐竜の始末を終えたデシルは感知魔法を王都全体へと広げる。

 転移のゲートをこじ開けた経験から犯人の男の魔力の特徴は完ぺきに把握している。

 今ならば追えるはずだ。


「見つけた! 転移の痕跡を!」


 男は作戦を失敗と見るや転移魔法でどこかに逃亡していた。

 そのゲートを開いた痕跡を感知したデシルはそこに向かい、再びゲートをこじ開ける。

 転移した先はあのジスル樹海のアジトだった。

 恐竜復活のために集めた材料や資料をもってどこかでまた計画を進めようというのだ。

 しかし、追ってきたデシルの稲妻を食らい今度こそ男の夢は潰えた。


 男がなぜこんなことをしたのか、動機をデシルは知らない。

 ただ、王都を襲撃した時点で逃がしたりとか、許したりするつもりはまったくない。

 この男は自分で起こしたことの報いを自分自身で受けなければならない。

 それが重いものであっても。


「おっ、デシルちゃん! 犯人を捕まえたんだね! さっすが~!」


「オーカさん! みんなも無事でよかったです!」


 オーカ、ヴァイス、ラーラの三人は無事だった。

 みんな初仕事ということでそれなりにオシャレしてきたのに、今となってはボロボロである。

 しかし、この姿が何よりも騎士として素晴らしい姿であった。


「転移魔法で逃げる前に捕まえるなんて流石はデシルちゃんね!」


「あ、いえ……一度逃げられてしまいまして……」


 デシルは王都での戦いのことをみんなに話した。

 それを聞いた三人は口をあんぐり開けて驚いた。

 まさか、自分たちが小型恐竜を相手にしている間に王都が滅びかけていたとは夢にも思わなかっただろう。


「まあなんとうか……流石デシルとしか言えないんだけどね……」


「私、デシルちゃんが学校を卒業してプロになって騎士団を作ったらそっちに移籍しようかな? なんてね~」


 デシルの行動にはいつも驚かされているが、今回ばかりはあまりにも想像の上をいった。

 王都への帰還方法が人の作った転移のゲートをこじ開けた物を使うというのも、さらに驚きを加速させた。

 なにはともあれ、デシルたち四人のパーティは不測の事態に正しく対処し、騎士としての役目をはたして王都に帰還したのある。




 ● ● ●




 犯人である転移魔法使いと数名の共犯者が王国騎士に引き渡され、半ば強制的に恐竜復活の研究をさせられていた学者たちも事情聴取のために王国騎士に連れていかれた。

 アジトの調査は王都にあるゲートが開きっぱなしだったので、通常より移動の手間が省けた分スムーズに進み、起こったことの大きさの割に事件は素早く収束に向かっていた。

 デシルたち四人は王城に招かれ、やはり事情を聞かれることになった。


「久しぶり……ですねぇ。アズールさん」


「その件は本当にすいませんでした。オーカくん」


 因縁の二人が再び顔を合わせることになった。

 とはいえ、ヴァイスの血族の方が学園に襲撃をかけた日に王城でお互い話をつけているため、険悪なムードではない。

 ただ、和やかなムードでもないのは確かだった。


「氷魔法を習得されたとかなんとか? いやはや、水魔法だけでも勝てなかったのに氷も加わるとあたしではますます勝てませんねぇ~」


「その氷の力を身につけられたのも、あなた方のおかげなのですよ」


「またまた~、お気遣いはいりませんよ~。アズールさんの実力は知ってますから」


「いえ、あの親善試合がなければ……私の魔力は冷たく鋭く進化することはなかった。あの時、死を覚悟した時……私は変わるきっかけをもらえたんです」


 アズールは語り始めた。

 人とは本来、死を恐れている。

 だからこそ学び、強くなり、人と結びつく。

 アズールもまた貧しい環境で自らの身を守るために強くなり、いつしかその強さで誰かを守りたいと思い王国騎士になった。

 人に厳しく、それ以上に自分に厳しく生きることで騎士団長に上り詰めた彼女は、いつしか死の恐怖を忘れていた。

 王城の付きの騎士団を任され、実戦から遠いところにいる時間が増えたこともその原因だ。


 他人に厳しくしていたのは、その人に死んでほしくないからだったというのに、いつしかそれはただのイライラになっていた。

 後ろ向きな言葉に聞こえる『死の恐怖』……それがアズールを再び騎士にするために必要なパーツだったのだ。


「あの雷の拳で殴られた時、死んだと思いました。いえ、間違いなく精神の方は体が死んだと判断していました。怖かったです。死の恐怖など誰にも感じさせたくない思いました。私自身にも、そして他の人にも。それこそが私が騎士になった理由……誰かを恐怖から守るために。思い出させてくれたのはあなたたちなのです。そして氷の力を与えてくれたのもあなたたちです」


 オーカ、そしてデシルへと視線を向けるアズール。

 その瞳は相変わらず鋭いが、瞳の奥にはあの頃失われていた輝きがあった。


「私たちはあくまでキッカケです。アズールさんが根は素晴らしい人だからこそ、変化があったんです。ちょっと偉そうな言い方になってしまいますが、自分を褒めてあげてください」


「自分を……褒めるですか……。さっき人を褒めるのも下手と言われたばかりなので、自信はありませんが努力しましょう」


「はい! きっとその方が人生楽しくなりますよ! あと、変化のキッカケをもらったのは私もなんですよ! 理由はどうあれ親善試合で封じの光波紋が発動していなかったら、それの私流アレンジ魔法の太陽の光波導も生まれなかったと思います! そうなると恐竜がどれだけ暴れることになっていたかわかりませんから、アズールさんが王都を救ったようなものなんです!」


「それは違うと言いたいところですけど、デシルくんの気持ちは受け取ります。改めて王国騎士団長としてデシルくんには感謝してもしきれません。本当にありがとうございます。あなたが学生を続け、卒業し自由騎士になったら、きっと何度も頼ることになるでしょう。その時はまたよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします!」


 デシルとアズールは固い握手を交わした。

 その後オーカともヴァイスとも。

 ここであの時のことが完全に氷解した。


「いやぁ、青春やっとるなぁ! 若者諸君!」


「あっ、国王様!」


「おっとおっと、ひざまずかんでいいぞ。こっちが頭を下げたくてうずうずしとるんだから!」


 国王エンドールもまたデシルたちに深く礼を述べた。

 ラーラは国王と直接話したことがないので、頭を下げられるとそれより頭を低くしようとして地面にうつぶせに寝そべってしまった。

 アズールはひざまずき「騎士として当然のことをしたまでです」と言った。

 国王もそれに対しては「うむ、大儀であった」と一言で答えた。


「ここに私が来たのはもちろん直接頭を下げて礼を言うためでもあるが、もう一つは君たちに後日渡したいものがあるのだ。それを伝えに来た」


「渡したいもの……?」


「そんなかさばるものでもないから安心してくれい! 寮の机の引き出しにもしまえるちょっとしたものだが、持っているとなんだか誇らしい気持ちになる……そんな小さな感謝のしるし『勲章』を授与しようぞ!」


「ええっ!? 私なんかが勲章を!?」


「むしろ、デシルくんに送らなかったら誰に送るんだ!?」


 こうして、デシル、オーカ、ヴァイス、ラーラ、アズールは勲章授与式に参加することになった。

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