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064 一番弟子、テキパキ依頼をこなす

「ヴァイス! そっちに行ったよ!」


「了解……!」


 展開された【赤土の大地(レッドフィールド)】の中では、茂みに隠れたモンスターの動きもまるわかりだ。

 オーカの指示を受けてヴァイスが【暗闇縫糸(ダークスレッド)】で標的であるダークベアを縛る。


「デシル……!」


「はい! 雷光剣!」


 動きの止まったダークベアにデシルが稲妻の剣でトドメを刺す。

 三人はわずか数十秒でCランクのモンスターを簡単に仕留めてしまった。

 まったく無駄のない連携にラーラは舌を巻く。


「はぇ~やっぱり強いわ、あなたたち。プロでもなかなかこうはいかないわよ~。うちの団の若い騎士のお手本にしたいくらい」


「それほどでもないですって! 誉めすぎですよラーラさん!」


「いやいや、本当よ。この調子なら今日中に全部のモンスターを狩れそうね。焦っちゃダメだけど、一応討伐任務は危険な存在を倒して人々の平和を守るのが仕事だから、早いに越したことはないのよね。いけるなら素早くテキパキとこなしていくべきよ」


 四人はまた依頼書や周辺地域で聞き込みをしてとったメモを確認する。

 現在地『ジスル樹海』はうっそうと木々が茂っているものの地形は平坦だ。

 見えにくい崖や大地の割れ目もないので、足場は安定している。

 また、毒性のある植物が多いわけでもない。

 まれに毒の植物が多すぎて空気中に毒が混じっている危険な森林も存在するのだ。


「気になる情報と言えば、あたしが聞いた地震の話くらい? 地震というより地鳴りっぽいって言う人もいたけど」

 

 オーカがポケットに突っ込んであったせいでシワシワになっているメモをみんなに見せる。

 彼女が周辺地域に住む人に聞いた情報が記されているそれには、森から地鳴りが聞こえてきたとか、最近小規模の地震が増えたなどと書かれている。

 大型モンスター同士が戦ったせいで大地が揺れている可能性もあるが、その場合だと鳴き声が聞こえたり、下級モンスターが戦いに巻き込まれないように森から逃げだす現象も起こる。


 なので、どちらかというと純粋に自然の地震である可能性の方が高い。

 ただ、なにぶん地震について話してくれた人が少ないので何とも言えないところもある。

 たまに勘違い情報が混じることも忘れてはいけない。


「本来この地域にはいないはずの大型モンスターがいるかもしれないってことを頭の隅に置いて討伐を続けましょうか。次はブラックスパーダ―です。ここよりもうちょっと奥の方によく出没するらしいですよ」


「どう移動する……?」


 移動経路も三人で決めてラーラは求められたら答えるのみ。

 ダークベアとの戦闘で少々森に敷かれている古い道から離れてしまったので、まずはそこに戻ってできる限り視界の良い道に沿って移動することになった。

 しかし、途中でデシルたちは地図に記されていない分かれ道に遭遇した。


「……あれ? 左の道は地図に描かれていますけど、右の道はどこにも見当たりませんね。どういうことでしょうか?」


 ラーラに助言を求めるデシル。

 少し考えた後、ラーラはこう答えた。


「ミスかな! 地図を作った人のね。あるいはこの道は行き止まりというかすぐに途切れているのか……。右の道はかなり狭いし、人間が作ってる以上見落としはあり得るからね~」


「道がどうなっているのか確認した方が良いでしょうか?」


「ん~、本来の目的はモンスターの討伐だけど、余裕はあるしこれも自由騎士の仕事よね。行こうか!」


 四人は地図にない道を慎重に進んでいく。

 トラップや落とし穴なんてあからさまな罠はなかった。

 ただ、どうも今まで歩いていた道に比べて荒いというか、正しい工事で作られた道ではないように思えた。

 まるで重い物を引きずって出来た跡のように、その道は緩いカーブを描きつつ続いている。


 三人娘を信用してこの道に踏み込んだラーラも少しづつ不安になってくる。

 地図に記されていないのは、これが道ではないから。

 そして、最近できたものだから……という推理で頭がいっぱいになってきた。


「デシルちゃん……封印してた感知魔法を使ってくれて構わないわよ。なんかこの道おかしいし……」


 索敵も自由騎士には必須の技能なので、他の二人を鍛えるためにデシルはその強力な感知能力を封じていた。

 しかし、デシル自身も違和感を感じていたので、ラーラの許可が出てすぐ感知の範囲を大きく広げた。

 そして、その魔法に何かが引っかかった。


「ああっ……!?」


 似た魔力を最近感じたことがある。

 しかし、あの強大な魔力は感知魔法を弱めていても感じ取れるはず……。

 この個体が隠密能力に優れているのか、何か魔法を遮断するもので隠されていて今出てきたのか。

 どちらにせよ、見逃せない敵だ。


「近くに恐竜がいます。クランベリーマウンテンにいたものとは種類が違いますが、おそらく間違いありません」


 デシルの言葉で空気が張り詰める。

 恐竜というものは遥か昔の生き物で、そこらへんを歩いているものではない。

 簡単に生み出せるものでももちろんない。

 つまり、クランベリーマウンテンを襲撃した何者かが近くにいる可能性が高い。


「運命的だねぇ……。まさかあたしたちが当たりを引いちゃうなんてさ」


「どうするの……デシル?」


「まったく相手の情報がわからない以上、本来ならば引くべきだと思います。ただ、恐竜の相手は私単独の方がむしろ安全ですし……」


 前回と違い、今回の恐竜はまだ臨戦態勢ではない。

 デシルたちを狙っているわけではないので、逃げるのは容易だ。

 ただ、逃げて誰かに助けを求める意味もない。

 恐竜はそこらへんの騎士には倒せないからだ。

 人を呼んでる間に恐竜が動いて、人のいる地域に向かわれても困る。


 デシルの出した答えは、攻撃だった。


「私がとりあえず恐竜を仕留めます。敵は一体じゃなくて他にも隠れているかもしれませんから、少し距離をとって私の後ろをついてきてください」


 転移魔法使いも近くにいるはずだ。

 この状況では恐竜に周囲を囲まれているくらいの気持ちで動かなければならない。

 オーカ、ヴァイス、ラーラもこくりとうなずく。


「じゃあ、作戦開始です!」


 デシルの体から赤い稲妻がほとばしる。


「電光石火!!」

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