表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この▽▲▼を愛してる  作者: 五十寺 悟
6/9

悪夢により


「うわあああ!!!」


槍が空から降ってくる。

鉄製のそれは柔らかい人間など一突きで殺せてしまうだろう。


必死で避ける。


銃弾は通らないし、急所も見当たらない。

足がもう限界に近い上に恐怖が重なって今にも動きを止めてしまいそうだ。


でもここで止まったら確実に死ぬ。



「ゔぅっ!」



左腕を槍が掠める。

幸い動く程度の怪我なので問題は無い。


しかしより一層死ぬかもしれないという恐怖が強まる。


怪我をした箇所は焼けるかのように熱く、痛む。


逃げたい、逃げ出してしまいたい。


王に決められた役目なんぞ知るか!なんで、なんで僕がこんな!


訓練所に戻りたい。あそこは随分と楽だったのに。


でも逃げちゃいけない。仲間を捨てる訳にはいかない。



頭が混乱して、考えがぐちゃぐちゃになる。


まるで絡まった毛糸みたいだ。

そしてその毛糸は恐怖で黒く塗れている。


少しだけ残った理性がここに僕を留まらせていた。


しばらく逃げ続けていると、突然鯨が急降下しながらこちらに迫ってきた。


間に合わない!食われる!



そう感じた瞬間、大きく開いた口が僕を飲み込んだ。




暗い。暗い上に酸素が薄い。出たいけど……口はしっかりと閉じていて、出れそうにもない。

脱出口を猫に封じられたネズミは死を待つのみ。


初任務で死ぬなんてださいなぁ……


思わず涙がでる。おまけに鼻水まで出た。本当にダサいと思う。



とりあえず死なないために頑張るしかない。まずは奥に進んでみよう。なにか見つかるかも。



しばらく進むと、鼓動音が聞こえる箇所まで来た。

若しかすると、この下にコアがあるかもしれない。


酸素が薄いために痛む頭を必死で働かせ、瓦礫を退け始める。


瞬間、鯨が激しく動き出した。もう本当に嫌になる。正直吐きそうだし、こんなのでは作業が進まない。


それでも必死で瓦礫を退けてコアを見つける。

紅くて巨大なコアがそこに座していた。


ゆっくりとした速度で鼓動するそれは神秘的で美しい。

いつか博物館で見たルビーに似ている気がする。


壊すのは勿体ないが、僕の肺はもう限界なので銃口をコアに押し当てる。


引き金に指を添え、放つ。


すると光が漏れ、辺り一面が光に覆われた。


瓦礫と共に僕は落ちていく。鯨は幸い急降下していた途中らしく、そこまで高いところにはいなかった。


僕は鯨から飛び降り。皆の元へ駆け出す。


「h:sjbbsvxdg~」 ar#h :h!」


皆が賞賛と労いの言葉をかけてくれる。


ふと振り返ると、そこには綺麗な朝日と青空があった。さっきの戦いで強風が起きたから、分厚い雲がどこかへいったのだろう。


初めて見る朝日は写真や博物館で見るよりもっともっと美しく、力強かった。

…………

………

……



バサッ



息が詰まる感覚に目が覚めた。

思いっきり空気を吸い込みむせる。


悪夢を見るのは日常茶飯事だが、どうも慣れない。

冷たい汗が首筋をつたう。



しかし本当に悪夢だったのだろうか。僕は飲み込まれた所までしか覚えていないが、他にも何か見たのかもしれない。



タオルで軽く拭き、仕事着に着替える。


ふと時計を見ると時刻はまだ午前4時で出勤するには早すぎる時間だった。


早すぎる時間に起きたことと、仕事着に着替えてしまったことにため息が出る。


冷えた汗を流すのと気分転換を兼ねて服を全部脱ぎシャワーに向かう。



「全く、本当に朝は嫌いだ。」



シャワーのボタンを押して、独りごちた

記述間違いがありましたので、修正しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ