星とDream Wreckage
鯨の体内には酸素が少ない。
残念ながらガスマスクは浄化式でガスボンベなどはついていない。
そのため、迅速に行動しなければ窒息死は免れることがでないだろう。
食道であろう場所を駆け抜け、鼓動音が聞こえる場所までやってくる。
コアはこの下だ。
隊員が援護してくれているらしく、銃弾が跳ね返る音が良く聞こえる。
沢山の瓦礫を押し退けて奥へと進む。
瞬間、鯨が暴れだした。
揺れが激しく今にも追い出されてしまいそうだ。三半規管も音を上げている。
体内を抉られているのだ。必死になって追い出そうとするのは当たり前だろう。
数秒後、コアを見つけた。ゆっくりとした速度で鼓動するそれは宝石のように輝いている。
酸素がもう少ない。意識が薄れていく中、拳銃を取り出しリロードする。
(やばいなっ……!)
目の前が白くなってゆく中、銃口をコアに添わせ弾を放つ。
白い光が漏れだし、大きな音を立てて鯨が崩れていく。
夢の残骸は正しく処理されたのだ。
徐々に視界が開け、地面が無くなっていく。同時に酸素も戻ってきたが、このままでは地面に叩きつけられてしまう。
咄嗟に傍にある布を広い、パラシュートのようにして緩りと落ちてゆく。
振り向くと、そこにはたくさんの星と崩れゆく鯨の姿があった。それは何かに言い換えることの出来ない美しさだった。
宝石のように光る物達はどこか物悲しさを纏っている。
未だになり続ける『子供の情景』がより一層この景色を美しくさせた
この様な時代になってしまい、出来なくなった様々な仕事。叶わなくなった夢。そして未来があったはずの子供たちの悲しみが詰まっているような。美しく儚い子供達の恐怖と夢の造形。
古代人は夢を見る。
現代人は黄泉を見る。
僕は古代人のように夢がみたかった。
静かに地面に降り立つと、皆が駆け寄ってくる
「おまっ!ほんとに新人かよ!すっげえ!」
「只者じゃないと思ってたんだよなあ!」
「すごいすごい!今日プチ打ち上げしちゃう?」
「やるじゃん」
みんな口々僕を賞賛する。
でも当たり前なのだ。
だって僕なのだから。
軽く頭を下げ、帰り道を辿り始める。
早く帰って飯が食いたい。
今日のご飯は素麺にでもしようかな。
あけましておめでとうございます。これからもこの作品をよろしくお願いします