撃退戦と真紅の目
外はいっそう寒く、体の芯から凍ってしまいそうだ
今は冬なので当たり前かもしれないが。
ふと、辺りを見渡す。周りは瓦礫と塵、そして化け物だらけだった。
いまの地球は破壊し尽くされ、毒が蔓延している。空は暗く、まるで夜の様だった。しかし、大昔のようにそこに星空はない。あるのはおどろおどろしい雲と濁った空気だけ。
地は割れ、今にも崩れそうだった。
建物は崩壊し、もはや意味を成さなくなっている。
「おい新人!ボケっとすんな!来るぞ!」
分かっている。どうせ僕がボケっとしていなくても囲まれた。
それに異形生物を駆除するのが特別掃除隊の役目だろう?
雑魚なんか適当にあしらえばいい。銃を取り出し撃つ。まず一体。
続けて2発3発。残りの敵の数は24体
まるでゲームのチュートリアルだよな。
チュートリアルは飛ばすもんだ。特によくやり慣れたものならな。
でもこれはゲームじゃない。
もちろんスキップなんて機能もない。
だからささっと終わらせてしまおう。
連続で銃を撃っていく。銃から発砲音が響き、頭部が黒い液を吹き飛ばしながら弾け飛んだ。
先輩方の協力もあり、敵は直ぐに片付いた。
「ほんとにてめえ新人か?銃の扱い慣れすぎだろ。」
「裏社会の人間だったりして……」
「そんな訳……ないよな?」
隊員までもが疑ってくる。僕は断じてそんなものでは無い。
てか失礼極まりないな。
先輩を無視して先に進む。小屋には夜までにつかなくてはいけないのだ。
ちんたらしていたら日が暮れて今回の目的を果たせなくなる。それだけは避けたい。
てか関係ないけど、特別掃除隊って名前ダサくないか?略も特掃隊だしな…
考えたの誰だよ。あ、王か。
ネーミングセンス皆無じゃねーか。
「おい怒るなよ!悪かったって!」
隊長がひたすら謝ってくるので頷いておく。もう半分くらい歩いたと思う。正直、遠すぎて歩きたくないくらいだ。
ーー暫く歩くと小屋が見えてくる。そしてその先にはーー
「おいおい……D級にしちゃでかいな……!」
「随分早いお出ましだね…」
たくさんの玩具や仕事に使う道具で出来た鯨が浮いていた。
鯨はこちらを気にせずゆっくりと飛んでいる。
Dream Wreckage
その名に相応しい容姿と力差がはっきりと目に見える
弱点は見えず、どこもかしこも弱点な僕らからしたらこちらが圧倒的に不利だ。
少し見とれていると、不意に発砲音が響いた。
これは散弾銃の音。
「ぼさっとしてないで!死にたいの?!」
その声に皆はっとして攻撃を始める。
機関銃、重機関銃、短機関銃、散弾銃、そして拳銃
種類の違う銃たちは皆一様に弾を放つ
銃弾は的確に敵の体に当たる
が
「ヴォォォオオオオオオ!!」
鯨は大きく吼え、部隊を真紅の眼で見据える。
どうやら敵の気に触れただけのようだ。
奴を倒すにはコアに直接攻撃する必要がある。
「くそったれ!」
空から雨のように鉄槍が降り注ぐ。
躱してやり過ごすが、これではいつまでたっても倒すことが出来ない。
「すぅぅ……」
大きく息を吸い、空高く跳ねる。
槍を壁蹴りの要素で上にあがっていく。
ようやく鯨の横までたどり着くと、そこには射抜くような赤い大きな目があった。
その身体からは静かなこの場にはそぐわない静かな音楽が流れている。これは
「『シューマン作、子供の情景』」
そして僕が呟いたのもつかの間
あっという間に鯨に飲み込まれた