プラン▷▶︎◀︎◁
「みんな!資料まとめしてもらってるとこ悪いがちょっとだけこっち見てくれ!」
「今日からここに配属になったアベリアだ。しっかり面倒見てやってくれよ」
みんなの視線がこちらに集まる。皆一様に死んだ目をしており、覇気が無い。
「女みてぇな名前だから一体どんなクソアマが来るかと思ったら…男かよ」
背中に虫の羽を生やした猫背の男が言った。
随分と口が悪い。
同僚で関わりたく無いランキングなんてものがあったのだとしたら、まず上位に入ることは確定だろう。
しかし、そんな彼は寒がりなのか首に灰色のマフラーを巻いている。
「案内ならミリカにしてもらって。」
こちらに顔を向けずにそう言った女の子には腕や脚が無く、手足が浮いていた。それは美しい容姿には不釣合いで、不気味だ。
首に巻いている蛍光色の黄色のスカーフのリボン部分がゆらゆらと揺れている。
「私はミリカ。これから君を案内するね。君が今日から寝泊まりする部屋を先に紹介するよ。ちなみに送られてきた君の荷物もそこにあるよ。いまはダンボール詰めされてる。」
ニコニコと目を細めて笑う女性がこちらに寄ってきた。
首からは特掃隊ならつけておかなくてもいいはずの住民票を下げており、笑顔は何処か狂気じみている。
ミリカは僕の前を歩き、第一部隊部屋入り口とは逆の方向に向かって行く。
個室と書かれた扉を開けるとそこにはそれぞれの名前が書かれた扉があった。扉は8つあり、僕の名前は5つ目に書かれている。
「此処が君の部屋。これからは此処で寝泊まりすることになるから、今日の案内が終わったらすぐに環境を整えることをお勧めするよ。トイレやお風呂、キッチンは部屋についてるからそこを使ってね。」
「肝心の出動入り口はこの部署の隣にあるから、捜査の時に紹介するね。あそこは許可がないと入っちゃいけないから。」
設備はそれなりに整っているのだなと思う。国家機密なんて言うものだからもっとしょぼいものだと思っていた。
なんせあの国王だ。あいつならやりかねない。
今日は仕事はないからもう部屋に戻っていいよと言われたので部屋にあるダンボールを片付けていく特にものはないがとりあえず片っ端から出していく。
前していた様なというよりほとんど同じ配置で置いていく。毎回毎回部屋の形は同じだ。この世界は同じ様な部屋ばかりだから当たり前なのだが。
ひとつひとつダンボールの中身を取り出していく。
2つ目のダンボールを開けた時に、ふと写真ファイルが目に付いた。
いつ撮ったのかも忘れてしまった写真。気づいたらもうあったのだ。
小説の主人公ならこんなとき物思いにでもふけるのだろう。だがあいにく今はそんな気分ではない。
2つ目のダンボールの中身も全て取り出し、並べる。それが終わった途端、どうしようもない幸福感が込み上げてきた。
ああ、これから自分は此処で生きていくのだ
此処で可能性溢れる人生を謳歌するのだと。
どうしようもなく頬が緩んで笑みが零れる。自然と胸が踊る。
皆今は冷たいけれどやりようによっては心を開いてくれるはずだと確信をしていた。
自分は必ず先輩に追いつく実力を手に入れる自信があった
これから新たな人生が始まる。
さて、どうしようか?
1ヶ月に一回は必ず投稿します。よろしくお願いします。