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才色兼備で残念な彼女  作者: 吐露非狩
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第1話

何気ない日常における、彼女の苦悩を描いた話。

「え~ここは三平方の定理により~」

 ああ・・・なんてことだ・・・

「じゃあここの線ABの長さを・・・木下!お前答えろぉ」

「え~」

 こんな時に、神の存在を疑いたくなる・・・

「え~、じゃない。今寝てただろ。答えられるもんなら答えてみろ。」

「先生、ゲスいでーす」

 どうしてこの世界は、こうも無慈悲に私たちに試練を与えてくるのだろう・・・

「ったく、なら寝ないでちゃんと授業受けろ!」

「それは~・・・ねえ?」

「ねえ、じゃない」

 ああ・・・・・・・・・・

 オナラ出そう。



 くそ、これは大変まずい。確かに朝ご飯はふかし芋だったが、芋を食べてオナラが出るというのは迷信ではなかったか?

 それにしても今は3時間目。後出しにもほどがある。大変空気を読んでほしいものだ。

 グッ、そんなことを考えていると少しやばいところまで来ている。困った・・・今ここでおならをしてしまったら確実に周りから白い目で見られてしまう。しかも、私の席はクラスのちょうど真ん中。一番後ろの席であればごまかしは効くが、この位置はマズイ。

 さて、この試練をどう対処したものか。

 この問題に対し、3つの対処法が思い浮かぶ。1つ目は、何か都合をつけて教室を抜け出す方法だ。トイレや体調不良、理由ならいくらでも浮かび上がる。しかし、

「おい木下ぁ、机の上にジュースを出しっぱなしにするなあ」

「いいじゃんかそんぐらいさあ。ケチケチしてるとはげるよ?せんせー」

こんな具合で、先生はさっきから私の隣の席の木下さんと熱心に会話している。ここを割って入るのは難しい。しかも、この先生は絡みだすと長い。あえなく違う方法にシフトチェンジする。

 2つ目は、すかしっぺだ。音が出なかったらワンチャンばれなくね?そんな安易な考えが頭をよぎり、かぶりを振る。匂いがマズイ。オナラで最も厄介ところはその匂いにある。何も自分が発射するそれが臭いと言いたいわけではない。ただ、オナラというものの本質上匂を帯びるのは必然的である。もし、位置的にそれを最も感知しやすい(後ろの席の)鈴木さんが感知し、発生源が私であると知られれば今後の鈴木さんとの会話に困ってしまう!(そもそも1度も話したことがない)・・・ダメだ!すかしっペは愚策!

 となると3つ目の案に頼るしか方法がない。案といっても、単純のことだ。この授業が終わるまで耐えればいい。そもそもオナラごとき騒ぐほどでもない。耐えろ、ただ耐えろ。そうすれば、気がつく頃にはきれいさっぱりそんなものなどなかったかのようにこの生理現象は鎮まる。さあ、佐藤 瑠璃子!あなたの我慢強さが今試される時。

 ・・・・・・・・ングゥ!

 なぜなの・・・主よ、なぜあなたは私にこうもきつい試練を与えるのか!ヤバイこの波はいけない・・・お腹を襲う激痛・・・確実にトイレに駆け込まなければ大惨事を招きかねないレベルだぁ!

 クソッ、これはやむを得ない・・・先生にトイレに行ってきますと、そういえば済む!

「まったく、かたくなになおさないというのならこれは授業が終わるまで先生が預かる!」

「なっ、ちょっと!勝手に触らないでよ!」

 いつまでじゃれ合ってんだバカップルぅ!やむを得ないのか!?このタイミングで、トイレ宣言をしろとッ!ック、ダメだ・・・・・げんか・・・・い・・・・

「あっ、ちょっ・・・」


パスゥ


 その瞬間、二人の取り合っていたペットボトルジュースが私の膝の上に飛んできた。

 ・・・・・ふたの空いた状態で。

「ああ!すまん佐藤!」

「やっば!コーラ結構落ちにくいよ!?大丈夫!?」

「・・・・・」

 私は、静かに立ち上がった。

「・・・どうかお気になさらず。それより、履き替えてきても?」

 そういって先生に体操服の入ったサブバックを見せると、「あ、ああ!ほんとにすまん!」と先生は見送った。

 私は、ようやく拷問から解放された喜びをしばらくトイレの中でかみしめた後、スカートを浸したコーラの存在の方が重大であることにきずくのであった。

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