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The End of The World   作者: コロタン
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第53話 雨降って地固まる

  俺を含めた全員が彼の死を偲び、言葉を発せないでいる。

  ただ、俺は慶次との約束を守るため、普段と変わらないように気を張っている。

  慶次が死んで2日が経った。

  隆二はあの日から、仮眠室からは出て来ない・・・。

  この状況になってから、ずっと支えてくれた、唯一の肉親を亡くしたのだ。

  彼の苦悩は如何許りだろうか・・・。


  今日も俺以外の者達は虚ろな表情で起き、皆んな何も手に付かないまま昼になった。

  しかし俺は、昼食の席に座った渚を見て、我が目を疑った・・・。


  「渚さん・・・その髪・・・」


  俺の言葉に、今まで項垂れていた悠介と美希が顔を上げる。

  彼等も、渚の変化に気が付いて驚いている。


  「また・・・バッサリといったな・・・」


  俺は驚きながらも渚に聞いた。


  「あぁ・・・。由紀子に切って貰ったんだが・・・どうだ、似合うか?」


  渚は、俺達の表情を見て、少し不安そうに小さく笑い、聞いてきた。

  少しだけ元気が出てきたのだろうか?


  「似合ってますよ・・・。ただ、いつも髪を結い上げてましたから、そこまで大きな違和感は無いですね・・・」


  美希が少し遠慮がちに答えた。


  「渚さん・・・良かったのか?高校時代、慶次さんと付き合ってた時に、彼が頼んだから、渚さんは髪を伸ばしていたって聞いたが・・・」


  「なんだ・・・あいつはそんな事をバラしてたのか・・・。寡黙に見えて、以外と口が軽いな・・・」


  渚は困った様な顔をした。


  「あぁ・・・。少し時間があったから、話をしたんだ・・・その時にな・・・。彼は今でも渚さんを好きだと言っていたよ・・・」


  「そうか・・・。あいつは、こんな女のどこが良かったのか・・・」


  渚は寂しげな表情を浮かべ、困った様に笑った。


  「すまない・・・配慮が足りなかった・・・」


  「構わないさ・・・。誠治さんには、そう言う所があるのは知ってるしな・・・。あいつは、他に何か言っていたか?」


  「あぁ、渚さんはメシマズ属性だって言ってたよ。高校時代に振る舞われた料理を口にして、劇物を食わされたって、遠い目をしてたよ」


  「何!?あいつはそんな事まで・・・!!慶次の奴・・・私の黒歴史を易々と人に教えるとは・・・!絶対に許さん!!」


  渚はマジギレしている・・・。

  そんな渚を見て、皆んなは小さくではあるが、笑った・・・。

  皆んな、少しずつでも前に進もうとしている。

  この場に、慶次と隆二が居ない事が悔やまれてならない・・・。



        カチャッ・・・



  俺達が渚を宥めながら昼食を摂っていると、休憩室の扉が開き、隆二が現れた。

  皆んなが隆二を見た。

  隆二は気まずそうにしている。


  「固まったかな?それとも、まだぬかるんでいるかな?どう思う、渚さんや?」


  「どうだろうな・・・?」


  俺は渚に問いかけ、隆二を見た・・・。


  「誠治さん・・・皆んな・・・。迷惑を掛けてごめん・・・。俺のせいで兄貴が死んで、皆んなにも心配を掛けたのに・・・そんな俺を見捨てずに待っていてくれて、ありがとう・・・!俺は、兄貴に言われた事を守るよ・・・。俺、兄貴の分まで頑張って生きるよ!」


  隆二は涙を浮かべている。

  それでも、笑顔で言ってくれた。


  「どうやら固まったようだね、渚婆さんや?」


  「そうだな・・・って、誰が婆さんだ!?誠治さんの方が年寄りだろうが!!」


  渚が激昂し、俺に掴みかかろうとして、由紀子に羽交い締めにされた。


  「隆二、腹が減っただろ?早く飯を食え!レトルトは冷めたら不味いぞ?」


  俺は暴れる渚を無視して、隆二に席に着くよう促した。






  「そう言えば、誠治さん・・・この前から言ってる、雨が降ったとか固まったとかぬかるんでるとか、一体何の話なんですか?」


  悠介が、食後のコーヒーを飲みながら聞いて来た。


  「たぶん、お前には解らないよ・・・」


  俺は、哀れんだ目で悠介を見た。


  「ですね・・・兄さんは無理でしょうね・・・」


  美希も悠介を哀れんでいる・・・。


  「えっ、何で!?何で俺がダメみたいになってんの!?」


  悠介は周りのメンバーを見渡す。

  渚も由紀子も、隆二までもが悠介を微妙な表情で彼のことを見ている・・・。


  「えぇっ!?皆んな意味解ってたの!!?俺にも教えてくれよ!!」


  「悠介・・・。そう言うのは、普通なら言われなくても理解するもんだ・・・少しは自分で考えろ。それが出来る様になるって事が、成長するって事だぞ?今回の件と照らし合わせて、自分で考えてみろ・・・。どんな小さな事でも、ちゃんと考えて、自分なりに答えをだせ・・・。もし違う答えを持つ人がいたなら、相手を否定せずに、自分の答えと比較して、より良い答えを導き出す。そうやって、知識を自分の物にする事で成長して行くんだ・・・俺はそう思ってる」


  俺を見る皆んなの目が気になる。


  「誠治さん・・・真面目だったんだな・・・。見た目からは想像出来んな・・・」


  (渚、見た目は余計だ!)


  「真面目すぎますね・・・まぁ、不真面目よりは良いですけど・・・」


  「真面目なのは良いことだと思いますよ!」


  (由紀子、美希、ありがとうな・・・。)


  「誠治さん、あまり考え過ぎると禿げますよ?」


  悠介と隆二は口を揃えて言った・・・。


  (お前ら・・・)


  俺は、机の下から悠介の脛を蹴った。

  隆二は勘弁してやった・・・。


  「痛いっ!?何で俺だけ・・・。くっそ、いつもいつも!」


  悠介は負けじと机の下から俺に反撃する。

  だが、当たらない。


  「くっそ!誠治さん、避けないでくださいよ!?痛い!?また蹴った!!なんで誠治さんのは当たるんですか!?」


  「ふはははは!貴様の足など当たらんよ!股下メートル超えをナメるな!!」


  「メートル超え!?足長過ぎでしょう!!」


  机の下で、俺と悠介の不毛な争いが繰り広げられていたが、すぐに終結した・・・。


  「2人共・・・。お行儀が良くないようですね・・・?」


  美希が仁王立ちしている・・・。

  凄まじい戦闘力を感じる。

  渚達は、とばっちりを受けないように退避している・・・。

  薄情な奴等だ・・・。


  「千枝が見てるんですよ!真似したらどうするんですか!?」


  美希は悠介を叩いた。

  俺も覚悟を決めて目を瞑り、歯を食いしばったが、何故か叩かれなかった・・・。


  「痛い!!なんで俺だけ!?美希!お前なぁ、いくら誠治さんが好きだからって、この扱いの差は酷いぞ!!?」


  悠介は涙を浮かべて訴えた。

  美希は耳まで真っ赤にしている。


  「お姉ちゃん、おじちゃんの事好きなの?」


  今まで、俺達のやりとりを楽しそうに見ていた千枝が、美希に聞いている。


  「私もおじちゃんの事大好きだよ!一緒だね!」


  千枝は笑顔で美希に言った。

  美希は胸を撫で下ろしている。



  「ぷっ・・・!あははは!やっぱり、あんた達は面白いよ・・・!」


  笑い声の方を見ると、隆二が笑っている。


  「誠治さん達を見てると、良いなって思うよ・・・。兄貴がさ・・・誠治さん達と一緒になってから言ってたんだ・・・。お前も、家族を持つなら、あぁ言う家族を持てってさ・・・。最初は、意味が解らなかったけど・・・今なら解る気がするよ・・・!血が繋がってなくても、家族になれるんだな・・・!」


  隆二は感慨深く話した。


  「あぁ・・・血の繋がりって言うのは、有っても無くても、どっちでも良いんだよ・・・。むしろ、それが有る事で、争いに発展する場合もある。血の繋がった親が子を殺す・・・逆もある・・・そう言う事件は多々あった・・・。大事なのは、心の繋がりだよ・・・。心が繋がっていれば、多少の諍いや誤解は有っても、許し合えるし、共に生きていける。もし無事に九州に行って、隆二と由紀子さんが結婚したとしても、血は繋がらない・・・子供が生まれても、血の繋がりは間接的なものだ。それでも、2人は家族なんだ・・・心が繋がっているからな。血は水よりも濃いと言うが、心の繋がりは血よりも強い・・・!俺は、そう思うよ」


  隆二と由紀子は、俺の言葉を聞いて涙を浮かべている。


  「深い話だと思いますけど・・・。誠治さんって、よく恥ずかしげも無くそんな臭い台詞が言えますね・・・」


  悠介が場の空気をぶち壊す・・・。


  (台無しだよ、悠介・・・)


  「兄さん・・・台無しです・・・。空気を読んで下さい・・・」


  美希は悠介を再び叩き、悠介は撃沈した・・・。

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