第36話 確認
「さて、そろそろ明日からの打ち合わせをしたいんだが、良いかな?」
俺は、美希と千枝が待機室から出るのを見送り、悠介達の身の上を話した後、その場に残った他のメンバーに切り出した。
腕時計を見ると、今は21時過ぎだ。
「そうだな・・・明日には町を出るのだろう? ならば、確かに今の内にやっておいた方が良いな」
渚が俺の意見に賛同し、他のメンバーも頷いた。
「取り敢えず、明日は朝7時には朝食を摂り、まずは互いの物資や武器を自分達の目で確認をして、それぞれの車に別けて載せよう・・・もし一台に集中して載せて、その車が動かなくなった場合、積み替えの手間が勿体無い・・・作業中に奴等に出くわしたら、全て棄てる事になるからな」
「そうだな・・・それが良いだろう・・・!」
「そちらの食料はどんな感じだ? こっちは、1日2食なら4人が5ヶ月程食っていける量はあるが」
「かなりあるな・・・私達は1ヶ月分あるかないか位だ・・・」
「なら、合わせて約5ヶ月弱位か・・・四国に行くまでに足止めをくっても、かなり余裕があるし、十分大丈夫そうだな・・・足りなさそうな時は補給しよう」
「補給するもなにも、残ってるんですかね?」
俺と渚が食料の備蓄と補給について話していると、隆二が不安そうに尋ねてきた。
「どうでしょう・・・保存の出来るような物は、他の生き残りの人達が持って行ってる可能性がありますからね・・・」
悠介も隆二と同じ考えだ。
「確かに、店には無いだろうな・・・だが、店に品物が行く前の段階ならどうだ? 食品製造会社や食品卸業会社の倉庫なら、備蓄が大量にある可能性が高いと思う・・・まぁ、他にも同じ考えを持った奴もいるだろうから、期待はしてないけどな・・・」
確かに、そう言った場所なら備蓄もあるだろうが、絶対に残っていると言う確信は無い。
「まぁ、俺達の食料の備蓄が足りなくなった時は、補給候補として考えておこう・・・では、次は武器の確認をしたい。 そちらの武器の種類と量はどの位だ?」
俺は議題を切り替え、武器の確認に移った。
「私達の方は、近接用が鉄パイプ2本と金属バットが3本、ナイフが4本だ・・・遠距離用は、高校の弓道場で見つけた弓だけだが、使えるのは、学生時代に弓道部だった由紀子だけだ・・・」
(この人数にしては少ない気がする・・・)
クロスボウは専門店などでしか手に入らないから仕方が無いが、拳銃は転化した警察官から手に入らなかったのだろうか・・・?
「そうか・・・思っていた程多くは無いな・・・。 まぁ、この町だけで武器の調達をするとなると仕方が無いか・・・。取り敢えず、こちらの武器は、近接用がマチェット10、タイヤレバー8、金属バット2だな・・・遠距離用はクロスボウ4とコンパウンドボウが3、拳銃5、散弾銃2、ライフル1だ。 銃器の弾は拳銃が70、散弾銃が40、ライフルが30位だな」
「凄いな・・・よく短期間でそれだけ集めたものだ・・・すまないが、武器に関してはそちらに頼るしか無さそうだ・・・」
渚はこちらの武器の量を聞いて呆れた表情をしている。
「誠治さん、一つ聞いても良いですか? 何処で銃器と弾を手に入れたんです?俺達も、この町の警察署を見ましたが、銃器保管室では見つからなかったですよ?」
「俺も君達と同じで警察署に行って見つけたよ・・・。ただ、向こうの警察署も銃器保管室は空だった・・・この銃器と弾は、署内の証拠品保管室で見つけたんだ・・・向こうは大きな街だったから、物騒な事件の証拠品が結構あったよ・・・」
俺は隆二に説明した。
「渚さん、貴女は元警察官だったらしいし、拳銃の扱いには慣れてるだろう? だから、使い方を皆んなに指導してあげてくれないか?」
「私は構わないが、貴方も使えただろう?」
「俺は、昔社員旅行先のグアムで撃った事があるくらいだから、離れた標的を撃つのはまだ慣れてない・・・だから、皆んなに教えて貰えると助かる」
「あぁ、そういう事なら了解した」
渚は快く引き受けてくれた。
まぁ、あまり使うことは無いと思うが、いざという時の為に、習うに越したことは無いだろう。
「それと由紀子さん、弓道用の弓だと大きくて取り回しに困るんじゃ無いか? 良かったら、コンパウンドボウを渡すから、そっちを試してみてくれ」
「ありがとうございます! でも・・・コンパウンドボウってどんなのですか?」
「そこからかよ!?」
恥ずかしそうに顔を赤らめながら聞いてきた由紀子に、すかさず隆二がツッコミを入れた。
まぁ、解らないのも無理はない。
(普通はそんな物騒な物を使う機会は無いからな・・・)
俺はそう思いつつ由紀子に説明を始めた。
「コンパウンドボウって言うのは、滑車付きの弓だよ。 引く力は強いけど、滑車と連動する事で効率良く引けるんだ。 そのおかげで、保持力が少なくて狙いが安定するし、初速の向上と高い命中精度を両立する事の出来る便利な弓だよ」
「そんな弓があるんですね・・・」
由紀子は感心したように呟いた。
「ただ・・・かなり威力があるから、扱いには十分に注意してくれ・・・。前、コンパウンドボウでの狩猟の動画を見た時には、矢が鹿を貫通して、地面に半分くらいまで突き刺さってたから・・・」
俺が付け加えて注意すると、由紀子は青くなっていた・・・。
(教えない方が良かったか?)
「もう22時半だし、今日はこのくらいにして、そろそろ休むか?」
「そうだな、あまり遅くまで起きていては明日に響くからな」
明日は早めに物資などの積み替えを済ませて10時にはこの町を出たい。
渚達も賛同してくれた。
「見張りだが、23時から翌3時までと、3時から7時までの2交代でどうだろう? こっちは俺と悠介、そっちは慶次さんと隆二君で良いかな?」
「ちょっと待ってくれ、私も見張りをするぞ! 女だからと言って気を遣わないでくれないか!?」
渚が俺の提案に反対した。
「そうは言ってもな・・・」
別に差別している訳ではないが、俺としては、女性に無理をさせたくは無い。
渚は強い女性だが、それはそれだ。
(どう説得したものか・・・)
俺はしばらく思案した。
「いや、やっぱり渚さんは仮眠室に行ってくれ・・・女性だけの部屋に男が入るわけにはいかないだろう?向こうにも窓があるから、もし昼間の男達が報復に来たら、仮眠室に誰も居ないのは危険だ・・・」
俺は、考え抜いた末に、渚に苦し紛れの提案をした・・・。
(まぁ、女性だけの部屋に入るのは気がひけるのは事実だし、嘘は言っていない)
「むぅ・・・上手く言いくるめられている気がするが・・・確かに、いくら信頼しているとは言え、女性の寝ている部屋に男性が入るのは良くないか・・・。 わかった・・・! そうさせて貰おう!」
(良かった・・・了承してくれた・・・)
俺は安堵の溜息を吐いた。
「慶次さんと隆二君は先と後どっちが良いかな?」
「そうだな・・・なら、誠治さん達は先に休んでくれ・・・。 誠治さんは今日の事で疲れてるのではないか?」
慶次が俺の事を気遣って言ってくれた。
彼は無口だが、良い奴だ。
それに、しっかりと場を見て判断出来る。
「ありがとう、助かるよ・・・ なら、何かあったらいつでも起こしてくれ!」
「えぇ、その時はお願いしますよ!では、ゆっくり休んでてください!」
隆二は俺と悠介に言って、慶次と2人で車庫に降りて行った。




