第28話 晩餐
夏帆の部屋で、美希達の服を選び終わり、今は夕食の準備をしている。
この家で摂る最後の夕食だ。
明日の朝はパンになるだろうから、日持ちのしない他の残った食材は、今夜で使い切るつもりだ。
俺も手伝いはしたが、メインシェフの美希が腕によりをかけたので、なかなか豪勢な夕食になっている。
優しくて子供好きで、家事全般卒なくこなす上に可愛いってかなりハイスペックだな・・・。
「美希ちゃん・・・何気にかなりハイスペックだよね・・・」
「俺の自慢の妹ですからね!」
俺が思った事を口にしたら、何故か悠介が得意げに言ってきた・・・。
(お前は何もしてないけどな・・・)
「そんな事無いですよ・・・母が働いてくれてたので、その代わりに覚えたんです! まぁ、家事は嫌いじゃ無いですしね!」
美希は顔を赤らめている。
「いや、美希ちゃんは良いお嫁さんになると思うよ? 相手は幸せ者だよね」
「そんなの、俺が認めた奴じゃないと許しませんよ・・・? 少なくとも、俺以上に家族を大切にする奴じゃないと!」
俺の何気ない発言に悠介が真顔で答える・・・兄バカも良いところだなコイツ・・・。
美希は俯いているが、耳まで真っ赤だ・・・素直に可愛いと思う。
「わたしは? わたしは良いお嫁さんになれる!?」
千枝が俺に聞いてきた。
「なれるよ! だけど、千枝ちゃんをお嫁さんにしたいなら、悠介とおじさんを納得させないとな!!」
(ふざけた奴など門前払いだ・・・)
「ですよね! 美希と千枝の相手はまず、俺と誠治さんを超えて貰わないと! それが最低ラインですよ!」
俺と悠介は拳を握り力説した。
「兄さんはまだしも、誠治さんを超えるって無理じゃない・・・?」
そんな俺達を見て、美希が呟いた。
「おい! 兄さんはまだしもとかさらっと言うな! まぁ、確かに誠治さんを超えるとか無理ゲーだよな・・・俺なら、外で戦う誠治さんを見ただけで漏らす自信あるわ・・・」
(君達、なんか酷いこと言ってない・・・?俺、そんなに怖いのか・・・?)
「なぁ、そこまで言われると、いくら俺でも傷付くよ・・・? 俺、こう見えてもガラスの心臓よ・・・?」
俺の言葉に悠介は、何言ってんだこの人って感じの目で見てきた・・・。
美希は横を向いて目を逸らしている・・・だが、肩が小刻みに震えてる・・・。
(こいつら・・・!)
「おじちゃん大丈夫?」
千枝は俺の頭を撫でて慰めてくれた・・・。
(千枝ちゃんマジ天使!!)
「おじちゃんの味方は千枝ちゃんだけだよ・・・」
俺はそう言うと、千枝を抱き寄せ頭を撫でた。
くすぐったそうにしている姿がまた可愛い・・・!
「誠治さん、すみません・・・」
美希は謝ってきたが、まだ笑いを堪えている・・・。
(だが、まぁ許そう! 俺は寛大だ! だが、悠介・・・お前はダメだ・・・!)
俺はテーブルの下から悠介の脛を蹴った。
「痛え!? 何するんすか誠治さん!」
「悠介・・・お前、さっきおれが千枝ちゃんを抱っこしてる時に何て言った・・・? 確か、おっさんのイジケル姿は萌えないとかなんとか言ってたよな?」
俺は、痛がる悠介に笑顔で言った・・・。
(心配するな悠介、お前もあと6年もすれば、立派なおっさんだ・・・20代の一年は10代よりもかなり早いぞ!)
俺は顔を真っ青にしている悠介に心の中で呟いた。
「げっ・・・聞こえてた・・・!? 嫌だなぁ・・・! 冗談ですよ! 冗談に決まってるじゃないですか!?」
悠介は慌てている。
(まぁ、別に言うほど怒ってはいないんだけどね・・・)
「もう! 兄さんは直ぐ調子にのるんだから!」
(美希ちゃん、君もある意味同罪なんだけど・・・)
悠介もそう思ったのか、美希を恨めしそうに睨んでいる。
「まぁ、悪ふざけはこのぐらいにしとこうか・・・悠介、大丈夫か? すまんな、痛かっただろ?」
俺は悠介に手を差し伸べながら言った。
「いや、こっちこそすみません・・・なんか、誠治さんといると安心感あるんで、つい調子に乗っちゃって・・・」
「余裕があるのは良い事だよ。 常に気を張ってると、いざという時に油断してしまうからな・・・ガス抜き程度の悪ふざけなら、別に良いんじゃないか?」
謝ってきた悠介を引き上げながら言った。
「まぁ、俺は大概の事じゃ怒らないから安心しろ。 ただ、お前が無謀な事をしたなら本気で怒るぞ? お前には妹達を守るって言う大事な目的があるんだからな。 俺の目的はお前達を無事に九州まで連れて行く事だ・・・だが、俺だけでは無理な時はお前が頼りだ。 しっかり考えて行動してくれよ?」
「はい、肝に命じます・・・誠治さんに頼りにされるって、なんか嬉しいですね!」
俺の言葉に神妙な顔で返事をした後、照れくさそうに笑った。




