表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The End of The World   作者: コロタン
28/88

第27話 夏帆の遺品

  「誠治さん、お帰りなさい! 無事でなによりですよ!」


  「おじちゃん、おかえりなさい!!」


  俺がリビングに入ると悠介達の千枝が迎えてくれた。


  「あぁ、何事もなく帰ってこれたよ」


  2人に言い、走り寄ってきた千枝の頭を撫でてやる。

  帰る場所があるっていうのは幸せな事だと思う。


  「俺が見てきた事を話すから、席についてくれるか?」


  俺は皆んなに言い、状況の説明を始めた。


  「俺は奴等の進んで行った方に行ってみたんだが、此処から徒歩で30分ほどの所に学校があった・・・その周りに奴等がいた。 学校には生き残った人達が多数いるのを確認したが、あの数の奴等だ・・・門やバリケードはそう長くは持たないかもしれない・・・。 其処に行くまでにも奴等と戦ったが、一昨日よりも数が増えていた・・・このままだと、さらに増える可能性もある。 だから、明日の午前中には出発しようと思う」


  俺は皆んなに告げた。

  

  「学校の人達は救えませんよね・・・?」


  「10体程度なら俺1人でもなんとかなるが、表に確認出来ただけで5倍近い数がいた・・・車で突っ込んでも、奴等の血や肉でスリップして立往生するのが目に見えている・・・現実的に見て不可能だ・・・」


  俺は、尋ねてきた美希に答えた・・・。

  残酷なようだが、自分達の事ですら手一杯なのに、赤の他人のためにそこまて危険を冒す理由はない。

  まぁ、美希達を助けた俺が言っていい話じゃないが・・・。


  「ですよね・・・仕方ないって事は判ってるんですけど・・・」


  「君が気に病む事じゃないよ。 誰だって、こんな状況じゃ自分の事で手一杯なんだから」


  俺は、項垂れる美希を励ました。


  「悠介、何か使えそうな物は見つかったか?」


  俺は、状況の説明を終え、悠介に聞いた。


  「あるには有ったんですが、それほど多くはないですね・・・それと、誠治さん・・・客間に飾ってあるアレ、どうします? 誠治さんが全く触ろうともしなかったんで、一応そのままにしてますが・・・」


  悠介が言っているのは、客間に飾ってある二振りの日本刀の事だ。

  夏帆の父親のコレクションの一つで、遊びに来た時に何度も自慢された。


  「日本刀か・・・確かに武器としては良いが、扱いがな・・・」


  日本刀は、ヒロイッククレイモア、チンクエデアに並んで世界で最も高価な刀剣類とも言われている。

  日本刀は、見た目こそ他の2種類に比べて地味に見えるかもしれないが、刀そのものの攻撃力はかなり高い。

  まぁ、見た目が地味に見えても、拵や鍔などは凄い金額だが・・・。

  日本刀は、攻撃力があるのは良いが、それを活かせるのは熟練者でなければ難しい。

  素人が扱うには、重いのだ。

  客間にあるのは、長さ70cm程の打刀と、50cm程の脇差だが、どちらもマチェットよりもかなり重い。

  打刀で約3倍近い重さだ・・・長さがほぼ一緒なのに、それでは片手で扱うのは難しい。


  「俺もどうかなとは思ったんだが、重いんだよな・・・長い方は1.5kg位あるんだ・・・両手で持たないと、しっかりと振れないんだよな・・・」


  「俺も持ってみましたけど、そんなにあったんですか・・・確かに片手ではキツイですね・・・」


  俺の言葉に悠介が苦笑いした。


  「まぁ、あるに越した事は無いし、持っていくか!」


  俺はそう言い、客間から日本刀を持ち出し、脇差を悠介に手渡した。


  「こっちは、お前が持っててくれ。 マチェットより重いが、斬れ味は段違いだ・・・くれぐれも、扱うには気を付けてくれ」


  悠介は神妙な顔で頷き、脇差を受け取った。


  「さて、美希ちゃんと千枝ちゃん、ちょっと夏帆の部屋に行かないか?」


  俺は悠介に脇差を渡し、美希達に言った。


  「どうしたんです? 何か探し物があるんですか?」


  美希が千枝の手を引いて来た。


  「探し物とは少し違うんだけど、君達にみて欲しいものがあってね」


  俺がそう言うと、2人は顔を見合わせ首を傾げた。





  俺は2人を連れて夏帆の部屋に入り、クローゼットを開け、中に入っていたダンボールを確認した。


  「おっ、あった! 美希ちゃん、そっちのタンスの引き出しから夏帆の服を出してくれ!」


  俺はクローゼットからダンボールを取り出しつつ美希に頼んだ。

  美希は俺の真意がわからないまま指示に従う。


  「誠治さん、夏帆さんの服なんて引っ張り出して何をするんです?」


  美希が俺に尋ねてきた。


  「サイズを確認して、君達が気に入った服があったら持って行ってくれ。 こっちのダンボールの中には、夏帆が小学生の頃の服が入ってるから、千枝ちゃんのも選んでやってくれ」


  俺がそう言うと、2人はキョトンとしている。


  「えっ・・・でも、夏帆さんのなんですよね? 勝手にそんな事して良いんですか・・・?」


  「夏帆はもう居ないしね・・・このまま部屋で眠らせるより、君達に使って貰った方が夏帆も喜ぶと思うから・・・。 だから、この部屋にある物で、気に入った物は持って行って良いよ!」


  俺は2人に言い、部屋を出た。

  サイズを確認するとなると、着たりしないといけないからな! 千枝とはお風呂に入ったりもしたし、まだ子供だが、美希は高校生だ。しかし、20歳で身体は大人の女性だ・・・。

  居続けるわけにはいかない・・・。


  「終わったら、声をかけてくれ」


  俺は部屋の外から2人に言い、階段を降りてリビングに向かった。

  

  



  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ