表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The End of The World   作者: コロタン
21/88

第20話 山なし谷なし

  俺達は温かい食事をとり、リビングでそれぞれ思い思いに過ごしていた。

  今はお風呂を沸かしている。


  「入る順番は、美希ちゃんと千枝ちゃんが最初で、次が悠介、最後が俺で良いかな?」


  俺は美希に、お風呂に入る順番を提案した。


  「ダメですよ! ここは夏帆さんのご実家なんですから、彼氏である誠治さんが最初に入るべきです!!」


  美希は強い口調で反対した。


  「いや、美希ちゃんも悠介も疲れてるだろうし、先に入ってくれ」


  俺は美希に拒否権は認めないとばかりに断言した。


  「うぅ・・・そう言う事なら、お言葉に甘えますけど・・・」


  美希は俺に言われて弱腰になった。

  悠介は千枝とじゃれあっていて話を聞いていない・・・。


  「おっ、風呂が沸いたようだ。 じゃあ、美希ちゃん、千枝ちゃんをよろしくね」


  俺は美希にそう言って、リビングのテーブルの上に地図を広げた。

  逃走ルートを決めるためだ。


  「仕方ないなぁ・・・ほら、千枝! お姉ちゃんとお風呂に入ろう!」


  美希が千枝を呼ぶ。


  「ダメ! まだ入らないの!」


  千枝が拒否している。


  「じゃあ、兄さんと入る?」


  「おっ、久しぶりに一緒に入るか!?」


  俺はそんな兄妹の会話をBGM替わりに地図を眺める。


  「今日はおじちゃんと入るの!」



  (ん? 何だって・・・!?)



  俺は千枝の発言に驚いた。


  「あの・・・千枝さん? 今、何と・・・?」


  俺は千枝に震えた声で聞き返した・・・。


  「だから、今日はおじちゃんと一緒にお風呂入るの!」


  千枝は涙ぐみながら言った・・・。





  

  「かゆい所は無いですかー?」


  無邪気な声が頭上から響く・・・。


  「あ・・・あぁ、ダイジョウブデスヨ・・・」


  俺は片言で返事をする・・・。

  俺は今、千枝とお風呂に入っている・・・俺達3人は千枝に根負けしたのだ・・・。

  

  (幼女には勝てなかったよ・・・。)


  千枝と入ると決まった時の悠介と美希の目が据わっていて怖かった・・・。


  「誠治さん・・・くれぐれも・・・この先は、言われなくても解りますよね?」


彼等は、普段より1オクターブ低い声で言ってきた・・・。


  (俺は、自分が思っている程、彼等に信用されてないのでは無いか・・・?俺だって男だ・・・人並みの性欲はある・・・。 だが! 俺は千枝くらいの子供がいてもおかしくない年齢だ!! そんな子供に、自分の性欲をぶつけるほどHENTAIでは無い!!断じて違うと声を大にして言おう!!)


  千枝にされるがままに頭を洗われながら、目を開けて前を見る・・・。

  そこには、生まれたままの姿の千枝が居る。



  つるん! ぺたん! ぴったんこ!



  まさに山なし谷なしだ。


  確かに千枝は可愛い・・・テレビに出る子役もかくやという可愛いさだ。

  だが、だからと言って欲情はしない。


  千枝は俺の頭を洗い終わり、今は背中を流してくれている。


  「おじちゃんの背中おっきいね!」


  千枝が笑いながら言う。


  「千枝ちゃん、俺はもう良いから、先に湯船に浸かりなさい」


  「ダメー! おじちゃんも一緒!」

  

  (ぅゎょぅι゛ょっょぃ・・・)


  「了解・・・じゃあ、一緒に入ろうか・・・」


  俺は考えるのをやめた・・・。





  「誠治さん、大丈夫ですか? 千枝の服、ここに置いておきますね・・・」


  俺達は風呂から上がり、千枝の体を拭いてあげていると、扉の外から美希の声がする。


  「あ! お姉ちゃん! 聞いて聞いて! おじちゃんの背中すごくおっきかったよ!!」


  千枝が急に扉を開けた・・・。


  『あ・・・』


  俺と美希の目と目が合い、声がハモる・・・。


  「キャーーーーーーーーッ!!!」


  美希が絶叫した・・・。

  

  俺は慌てて美希の口を手で塞ぎ、自分の口の前に人差し指をあて、美希に言う・・・。


  「美希ちゃん、落ち着いて! 奴等に聞こえる!」


  「美希! どうした!?」


  美希の叫び声を聞いた悠介が慌てて駆けつけて来て、俺と美希を見る・・・。


  「誠治さん・・・説明して貰いましょうか・・・」


  悠介が虫を見るような目で俺を見てくる・・・。


  「はい・・・」


  俺は力なく返事をして、のそのそと服を着た・・・今日は厄日だ・・・心底そう思った・・・。





  俺は悠介に事のあらましを説明した。

  悠介は俺の説明を聞き、誤解した事を謝り、千枝に話しかけた。


  「千枝、誠治さんに迷惑かけたらダメだろう? ただでさえ、俺達の事で気を遣わせてしまってるんだから、あまり我が儘を言っちゃダメだ」


  悠介は、千枝に諭すように言った。

  千枝は涙ぐんでいる・・・。


  「千枝、誠治さんに謝りなさい・・・」


  美希も千枝に優しい声音で注意する。


  「だって・・・」


  「だってじゃないだろう!」


  口籠もった千枝に悠介が声を荒げた・・・。

  千枝は怯えている・・・。


  「悠介、あまりきつく言わないでやってくれ・・・悪気があった訳じゃ無いんだし・・・」


  「でも・・・!」


  俺は悠介を窘め、千枝に語りかける。


  「千枝ちゃんは悪気は無かったんだよな? 怒らないから、言ってごらん?」


  俺は、千枝を怖がらせないように優しく言った。

  千枝は涙を流しながら口を開いた・・・。


  「だって・・・おじちゃんのために、何かしたかったんだもん・・・! おじちゃんのために、頑張るって言ったから、何かしてあげたかったんだもん!」


  小さく、震えた声で・・・しかし、はっきりと言った・・・。


  俺達3人は言葉を失った・・・。


  千枝は肩を震わせて泣いている・・・。

  今日1日俺から離れなかったのは、俺のために何かしたかったからなのだと、ようやく気付いた・・・。

  こんな小さな身体で、俺のために頑張ろうとしてくれた・・・。

  俺は、そんな千枝が愛おしく思った・・・。


  俺は千枝を胸に抱き寄せた・・・。


  「千枝ちゃん、ごめんな・・・俺のために頑張ってくれたのに、こんな事になっちゃって・・・気付いてあげられなくてゴメンな・・・」


  俺の頰を涙がつたう・・・。

 

  千枝は俺の胸で泣いている・・・。

  

  悠介と美希はショックを受けている・・・。

  その気持ちも解る・・・千枝が一生懸命頑張ろうとしたのを気付かず、否定してしまったのだ・・・。


  「千枝ちゃん、気付いてあげられなかったお詫びに、何かしてあげたいんだけど、何が良い・・・?」


  俺は頰の涙を拭い、千枝に問いかけた。

  

  千枝は瞳に涙を浮かべたまま呟いた。


  「おじちゃんと一緒に寝たい・・・」


  遠慮がちに・・・そして、照れくさそうに答えた。


  俺は悠介と美希を見る・・・2人は肩を落として、仕方ないといった感じで頷いた。


  「よし! じゃあ、今日はおじちゃんと一緒に寝よう!」


  俺は明るく千枝に言い、2人で布団に入った。

  


  俺の横には、まだあどけない少女の寝顔がある・・・。

  この優しく、愛おしい少女を、彼等と共に守り抜く・・・そう改めて決心し、瞳をとじた・・・。



  

  

  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ