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The End of The World   作者: コロタン
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第1話 特別な日

  遠くでパトカーのサイレンが鳴り響いている。

俺はその音で目が覚め、カーテンと窓を開けて部屋の換気をした。

  俺が住んでるのは、駅まで徒歩15分という、比較的立地の良い5階建の賃貸マンションの最上階だ。ただ、このマンションにはエレベーターが無い。残業後や飲み会の後に5階まで登るのは、正直しんどい。

  まぁ、その分家賃が安いので仕方が無いと無理矢理自分を納得させている。

  今日は10月31日、昼間はまだまだ暑い日が続いているが、朝晩は肌寒くなってきている。マンションの5階なら尚更だ。


  「ん・・・」


  冷えた空気を胸いっぱいに吸い込み伸びをする。やはり朝の空気はうまい。

  時計を見るとまだ6時を少し回ったところだ。

まだサイレンは鳴っている。いくつか重なって聞こえているので、結構な台数が出動しているらしい。


  「警察も朝から大変だねぇ、当直はそろそろ交代の時間だろうに・・・」


  俺はベッドから降り、洗面所へ向かった。洗面台の鏡を見ると、職場の制服のままである事に気付いた。昨夜はクレーム処理のため、夜遅くまで残業をしていて、家に帰り着くなり寝てしまったのだ。

  制服の胸に付いてる社員証には、井沢(いざわ) 誠治(せいじ)と名前が入っている。俺の名前だ。

  昨夜風呂に入らなかったため、取り敢えずシャワーを浴びた後、朝食の準備を始めた。

  今日の朝食は目玉焼きを乗せたトーストだ。先日テレビでジ○リの映画が放送されていたのだが、作中で主人公達が食べていた目玉焼きの乗ったトーストが、とても美味しそうだったのだ。

  

   「うん、美味い! それにしても、ジ○リの作品に出てくる食べ物は何であんなに美味しそうなんだろうか?」


  独り言を呟きつつ、テレビの電源を入れた。

  適当にチャンネルを変えつつ、面白い番組がないか眺めていると、あるニュース番組に目が止まった。

  最近多発している連続バラバラ殺人事件が取り沙汰されていた。遺体の損傷が激しいうえ、被害者にはホームレスも多いらしく、身元の確認が難しいとの事だ。


  「隣町でもあったらしいし、あまり人気の無い所は歩かないようにしないとな。いつ自分が巻き込まれるかもわからないし」


  俺は朝食を終え、テレビを消して皿洗いと洗濯を始めた。

  今夜は予定が入っている。早めに家の事を済ませておきたい。

  俺には、今日で付き合って2年になる5つ年下の彼女がいる。名前は中谷(なかたに) 夏帆(かほ)、長く綺麗な黒髪の似合う清楚系の美人で、引っ込み思案だが誰に対しても優しく真面目で、よく気の利く良い娘だ。

  何でそんな娘が俺みたいな平凡な30代の男と付き合ってくれているのか、俺自身も不思議だ。

  俺は、その彼女と今夜会う約束をしている。プロポーズをしようと思っているのだ。


  「あぁ・・・約束の時間まで10時間近くもあるのに、すでに緊張してる。どうしよう! 何て言ってプロポーズしよう!?」


  俺は頭を抱えて蹲る。


  「大事な話があるって言ったら、嬉しそうに期待してる感じだったしなぁ・・・後には引けないよなぁ」


  自分でも嫌になるくらいにヘタレだ。

  なかなか掃除に身が入らず、あれこれと悩んでいると、スマホにメールが届いた。夏帆からだ。


  『今夜楽しみにしてるね! 仕事が終わったらまたメールするね❤︎』


  ヤバイ、退路を断たれた・・・。


  「これは、腹をくくるしかない! 頑張れ井沢 誠治!お前はやれば出来る子だ!親にもそう言われて来ただろう!?」


   俺は、自分で自分を奮い起たせ、覚悟を決めた。

  時計の針は13時に掛かろうとしていた。待ち合わせまで後5時間、ヘタレないように気をつけよう・・・。






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