第15話 進藤3兄妹
私は進藤 美希、高校3年生だけど、2年ほど休学していたので、今は20歳だ。
私には24歳の兄の悠介と、8歳の妹の千枝がいる。
昨日の夜、奴等に追われて危なかった所を、井沢 誠治さんという人に助けられ、彼と行動を共にする事になった。
誠治さんを最初に見た時はビックリした。
黒いフルフェイスのヘルメットに、レザージャケットとチャップス?という物を着ていて、兄よりもかなり身長が高く、体格が良かった。
(誠治さんにチャップスについて聞いたら、元はサボテン避けらしいけど・・・あの人、なんでそんな物持ってるんだろう?)
彼は、ヘルメットを脱ぐと、髪は短めで30代位の強面の人だった。
でも、見た目とは裏腹にとても親切にしてくれて、とても優しい人だった。
人見知りをしやすい妹もよく懐いている。
兄は最初は疑っていたけど、彼と話をして考えを改め、今は尊敬しているようだ。
気の強い兄が素直に誠治さんの言うことを聞いているのは少し変な感じだ・・・。
「そう言えば、さっき誠治さんが出て行く時、さらっと銃があるとか言ってたよな・・・」
誠治さんの言い残した言葉に兄が何やらそわそわしている。
誠治さんは私達が乗るための車を調達しようと外に行ったのだ・・・奴等がいて危ない筈なのに・・・おそらく、私達の事を気遣ってくれているのだろう。 優しい人だ。
「確かに言ってたね・・・」
「確か、トランクにあるって言ってたよな?」
兄がトランクを開ける。
あった・・・大きなバックの中に、ゴツゴツとした鉄の塊が何挺か入っていた・・・。
「マジであるし・・・いったいあの人何者なんだ・・・?」
兄が恐る恐るその中の1つを手に取る。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん達何見てるの?」
私達が困惑していると、千枝が近づいて来てトランクの中を覗き込む。
「わーっ! これって鉄砲!? 本物なのー?」
千枝は初めて見る拳銃に目をキラキラさせて手を伸ばす。
「千枝、ダメだよ! 危ないから触ったらダメだよ!」
私は慌てて千枝を止めた。
「えーっ・・・お兄ちゃん達だって触ってるのに、なんで私はダメなの?」
千枝は口をとがらせて文句を言った。
「ごめんね、千枝・・・お姉ちゃん達も初めて本物を間近で見たから・・・でも、本当に危ない物だから触っちゃダメだよ。 ほら、兄さんも何時迄も眺めてないでしまってよ! 千枝が見てるじゃない!」
私は夢中になって拳銃を眺めている兄を注意した。
「お・・・おぉ、悪い・・・千枝、ごめんな・・・兄ちゃん達が悪かった!」
兄は手を合わせ、拝むように千枝に謝った。
「仕方ないなぁ・・・許してあげる!」
千枝がそう言うと、兄は笑いながら千枝の頭を撫でてやった。
千枝は私達とは血が繋がっていない・・・母の再婚相手の連れ子だ・・・千枝が私達の家族になったのは6年前、千枝が2歳の時だった。
私達の父になった人は、母の職場の同僚で、母より少し年下だった。
奥さんと5歳になる娘さんが、保育園の帰りに事故に巻き込まれ亡くなり、生まれたばかりの千枝と2人だけ残されたらしい。
その人は、千枝を男手一つで育てていたが、子育てなどで色々アドバイスをしてあげていた母に惹かれ、プロポーズし、再婚する事になったのだ。
私達は、母ももう良い歳だし、前の父と別れてから女手一つで育ててくれていたので、そろそろ再婚したら?と話をしていた矢先の事だった。
私達兄妹もその人と会い、誠実そうな人だと思ったし、何より千枝が可愛いかったので、特に問題なく家族としてやっていけていた。
しかし、新しい父も、3年前に仕事中に車を運転している時、居眠り運転のトラックに正面から追突され亡くなった・・・母も私達も泣いた・・・血の繋がらない私達に、本当の家族として接してくれていた優しい人だった・・・そして何より、千枝がかわいそうだった・・・産みの親も、実の姉も全てが事故によって奪われた彼女の事を思うと、涙が止まらなかった・・・。
だから、私達は千枝の事を血の繋がった家族以上に愛している。
彼女が寂しくないように、彼女が辛い気持ちにならないように・・・。
千枝は少し我が儘を言ったりもするけど、注意するとちゃんと言う事を聞いてくれる。
可愛く、たくましく成長してくれている。
私達は千枝を守りたい・・・千枝に生きて欲しい・・・だからこそ、こんな地獄の様になってしまった現在を生きて行ける・・・。
それに、誠治さんも居てくれる。
彼は、どことなく雰囲気が千枝の父に似ている・・・私達の事を大切にしてくれたあの人に。
だから、私達は彼を信じられる・・・彼なら、千枝を・・・私達をちゃんと見て、守ってくれる・・・そう思える。
「誠治さん、早く帰ってきてくれないかな・・・」
私は、じゃれあっている愛する兄と妹を眺めながら、そう呟いた・・・。




