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The End of The World   作者: コロタン
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第14話 調達

  朝だ。俺は目を開けるとビックリして飛び起きた。

  目の前に顔があったのだ。

  まだあどけない少女の顔だ。


  「千枝ちゃん・・・? 昨夜は美希ちゃんの膝枕で寝てたような・・・?」


  俺は混乱する頭をフル回転させ状況を確認する。

  周りを見渡すと、千枝の背中を抱くように美希が寝ている。

  悠介はその奥で大の字になっている・・・。

  

  (図太い神経してやがる・・・。)


  俺はそんな悠介を見て、心の中で呟き、腕時計を確認する。

  まだ7時前だ。 彼等はまだ寝かせておこう・・・昨日の事で心身ともに疲れているだろう。


  俺は立ち上がり、ヘルメットをかぶりマチェットを手に持って、裏の出入り口から静かに外に出た。

  昨夜の奴等が外にいないか確認するためだ。

  奴等は確認出来ただけで10体以上いた・・・もし、まだこの辺りに居たら危険だからだ。


  「よし、居ないな・・・これなら大丈夫そうだ・・・」


  もしかしたら、筋を曲がった所にいるかもしれないと思い、道路に出て周辺の通りを30分程かけて入念に確認し、ガレージに戻った。

  昨夜倒した奴からクロスボウの矢も回収して来た。 再利用出来るのはありがたい。


  「あ、誠治さん! おはようございます! 起きたら居なかったので、心配したじゃないですか・・・!」


  ガレージに戻ると美希が起きていた。


  「どうしたんです? まさか、奴等ですか・・・?」


  美希は俺の姿を見て、声のトーンを下げ、顔を俺に近づけて聞いてきた。

  

  美希さん、近いですよ? おじさん女性は夏帆しか知らないので、照れてしまいます・・・。


  美希は、はっきり言って美少女の部類だ。

  悠介もちょいワルイケメン風で、千枝も保護欲を掻き立てられるような美幼女だ。


  「いや・・・昨日の今日だからね、念のための確認だよ・・・」


  俺は内心赤面しながら美希に答える。


  (ヘルメットかぶってて良かった・・・ヘルメットさん、ありがとう!)


  俺は心の中でヘルメットに感謝した。


  「そうですか、ありがとうございます!」


  美希さん、だから近いですって!


  俺が照れてテンパっていると、チャップスを引っ張られた。


  「おじちゃん、おはようございます!」


  そこには、天使が居た・・・千枝だ。

  

  「あぁ、おはよう千枝ちゃん。 朝から元気に挨拶が出来て偉いね」


  俺はヘルメットを脱ぎ、しゃがんで千枝の頭を撫でながら挨拶をした。

  照れて顔が真っ赤だ・・・可愛い・・・。


  「千枝がこんなにすぐに懐くのって珍しいんですよ」


  美希がそう言って千枝の頭を撫でる。

  本当に仲の良い兄妹だ・・・俺はそう思いつつ悠介を見る・・・まだ寝ている。

  今は車のバンパーに足を乗せて眠っている。


  (凄い寝相だな・・・)


  「ごめんなさい、もう少しだけ寝せておいてあげてください・・・私達を守りながらずっと気遣ってくれてたので・・・」


  俺の視線に気付いた美希が、まだ寝ている兄をかばって弁明する。


  「いや、気にしてないよ・・・! ただ、凄い寝相だなって思ってね!」


  俺は慌てて否定する。


  「ですよね! 兄さんは昔から寝相が悪くて、隣で寝てるとよく殴られました・・・」


  美希が遠い目をしている・・・痛かったんだな・・・。


  「まぁ、起こさないように朝食の準備でもしてようか!」


  俺は2人に提案し、一緒に準備をした。


  「ん・・・。 あ、誠治さんおはようございます・・・美希と千枝もおはよう・・・」


  朝食の匂いにつられたらのか、悠介が起きて来た。


  「おう、おはようさん! 良く眠れたか?」


  「おはよう、兄さん・・・相変わらず凄い寝相だったよ」


  「おはよう、お兄ちゃん! 今日の朝ごはんはカレーだよ!」


  俺達は口々に悠介に朝の挨拶をする。


  「誠治さん、すみません・・・こんな状況で悠長に寝ちまって・・・」


  悠介が俺に謝ってきた。 気にすること無いのにな・・・。


  「気にすんなって! お前が大変だったのは昨日聞いたし、休める時に休むのも、生き残る為には大切な事だ・・・それより、早いとこ朝飯を済まして、今日の予定を立てよう」


  俺は悠介を促し、皆んなで朝食をとった。

  千枝はレトルト食品に文句も言わず、美味しそうに食べてくれている。

  悠介と美希は、それをみて優しく微笑んでいる。

  本当に仲の良い兄妹だ・・・独りっ子の俺には兄妹がいる感覚は解らないが、友人の所は喧嘩ばかりだと言っていた。

  だが、この3人・・・特に上2人は過保護過ぎるように見える・・・歳が離れているからだろうか?


  「そう言えば、君達と千枝ちゃんはかなり歳が離れてるみたいだけど、君達は何歳位で、こんな状況になる前はどんな仕事をしてたんだ?」


  俺は何気なく聞いてみた。


  「兄は24歳の会社員、私は20歳ですけど、病気で2年ほど休学してたので、高校3年生です・・・千枝は8歳で小学3年生です」


  (あ・・・ヤバい・・・さらっと地雷踏んだ・・・)


  「千枝は、母の再婚相手の連れ子だったんですけど・・・その人は3年前に事故で亡くなってしまって・・・兄と私のことも気遣ってくれる優しい人でした・・・兄は、私が2年前に病気で入院する事になった時に、通っていた大学を辞めて就職してくれました・・・」


  (重い・・・俺の無神経な一言で・・・)


  「ごめん・・・俺が無神経だった・・・」


  「気にしないでくださいよ誠治さん! いずれは話してたと思いますし、大学辞めたのは俺が自分で決めた事だし、美希も気にすんな」


  悠介は俺と美希を気遣って明るく言ってくれた・・・良い奴だなこいつ・・・そして、良い兄貴だ・・・。

  

  「それより、今日はどうするんです? 街を出ますか?」


  悠介が話を切り替え、俺に振ってきた。


  「そうだな・・・まずは君達のクルマを探そうと思う。 俺の使っている車は、前の座席以外は武器や物資が載っていて使えないんだ」


  俺は悠介に提案した。


  「それなら仕方ないですね・・・車は、いざという時の為にも有った方が良いですし、俺は賛成です。 俺も行きましょうか?」


  「いや、今回は俺1人で車を調達しようと思う・・・悠介君にはここと、君の妹達を守って貰いたい」


  俺の提案に賛同した彼に、1人で行く事を告げた。

  昨日会ったばかりの人間に貴重な物資を全て任せるのは少し不安ではあるが、彼等は裏切らないだろう・・・身内に害がない限り彼等は裏切らない・・・そう思える。


  「大丈夫なんですか?」


  「おじちゃん、どっか行っちゃうの・・・?」


  1人で行くと言った俺に、美希と千枝が不安そうに聞いてくる。


  「大丈夫だ・・・もし、午前中に帰ってこなかったら、この車と物資は全部君達に譲る。 まぁ、九州に帰るまで死ぬつもりは無いよ! 君達を連れて行くって約束したしね」


  俺は2人を安心させるため、明るく振る舞った。


  「誠治さん、俺達は誠治さんが帰ってくるまで待ってますよ!それと、俺の事は悠介で良いですよ!」


  悠介が俺を気遣って笑いながら声をかけてくれる。


  「いざという時はトランクにクロスボウと銃が何挺が入ってる。 だけど銃は、使わなければいけない事態にならない限り、絶対に撃たないでくれ・・・音で奴等が寄ってくるかもしれないから・・・。 じゃあ、行ってくるよ!」


  俺は3人に言い残し、ガレージの外に出た。

  早いところ車を調達し彼等の元に戻ろう・・・そう心に決め、マチェットとクロスボウを持ち走り出した。


  

  

  


  

  

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