退屈な日常2
◎同日 昇降口
煌は帰ろうとして昇降口に向かったところで見知った顔と遭遇した。
「よう煌、今から帰りか?」
こいつの名前は結城 英雄、縁あって小学校からの付き合いである。
特撮モノや怪談のようなオカルト的なことが好きらしく、何かにつけて俺におすすめの特撮モノを薦めてきたりする。
前に一度なぜそんなにも好きなのかと聞いたことがあったが、それに対する英雄の答えは、
「普通に生きていては分からない非日常の片鱗に触れられるから」
全くもって理解出来ない。俺は恐らく一生こいつの思考を理解することが出来ないのだろう。
「先週のマスクライダーズでレッドがさー」
学校の帰り道でまた性懲りもなく英雄が特撮モノを薦めてくる。
俺は興味が全くないので半分以上聞いていない。
「そういえば、となり町で怪物が出たんだって」
今度は怪談か、お前はどうだか知らないが俺は幽霊だの妖怪だのは信じてないんだ。よってこれも半分以上聞いていない。
「それじゃ、また明日」
交差点の辺りまで来たところで英雄と別れた。
結局英雄がどんな話をしていたのかほとんど覚えてない。
煌は興味のないことに関して徹底的に話を聞かない男だった
◎18:00 自宅
家に帰った煌は椅子に座って一息つく。
煌は一人っ子で兄弟などはいない。親もいつも遅くまで働いているので今の時間帯で家に居るのは煌だけの筈である。
「き……さん…せ……じょまで…て…さい」
「!?」
突然聞こえた少女のような声に驚いていると
「煌さん、洗面所まで来てください。」
今度ははっきり聞こえた。
洗面所に来い?どういうことだ?
俺は初め親が帰って来ていたのかと思ったが、すぐに考えを改めた。
親であれば「煌さん」という呼び方などしないはずだ、そもそも親の声よりも随分若かったので絶対に親ではない。
放って置いても良かったのだが、よく分からないものをそのままにしておくのは気持ち悪かったので、その声の指示に従っておくことにした。
恐る恐る洗面所を覗いてみたがそこには誰も居なかった。周りも確認してみたがおかしなところは見られなかった。
ある一点を除いて
「なっ、なんだこれ!?」
その光景の異常さに俺は頭の中が真っ白になっていた。
鏡だ
鏡に水面に水滴を落としたように波紋が広がっていたのである。
驚きからやっと回復した俺は鏡に触れてみることにした。するとどうだろうか、その鏡はまるで本物の水のように手応えなくズブズブと手が沈んでいった。
気がつくと肘の辺りまで腕が沈んでまっていたので引き抜こうとしたところで俺は気づいた。
「なんだこれ、抜けない!?」
俺の腕は鏡から抜けなくなっていた。
さらに驚くことに俺の腕はまるで何かに引っ張られるようにゆっくりとだが確実に引きずり込まれていっている。
「ぐおおおおぉぉぉ」
必死に抵抗するも甲斐なく右腕、頭、腰と鏡の中に入っていき
「うわあああああぁぁぁ」
俺は鏡の中に落ちていった……
今回は初めてなので2話掲載しました。