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夏休みの幕開け

月日が流れ、といっても1週間と少ししか過ぎていないけれど、俺達の所へようやく夏休みが舞い降りてきた。子ども達はみなアレをしようこれをしようと、様々な予定を立てては、笑顔になってゆく。自分自身も、笑顔になっている小学生の1人であった。

なんてったって、夏休みが始まればすぐに夏祭りがある。夏祭りといえば、俺は湧別と一緒に祭りへ行く約束をした。しかも俺からではなく、向こうから誘ってきたのだ。これはいわゆる“脈アリ”というやつなのではなかろうか。そうであってほしい。いや、そうでないと俺の計画が果たされないではないか。

「まーさし!やっとこさ夏休みだな!」

夏休みの予定を組み立てようと、夏輝と晃が俺の所へやってきた。虫を取りに山へ行こう、隣町へ遊びに行こう、プールに行こう、夏休みの予定は留まるところを知らないまま、3人の間を飛び回っていた。

そんな中、教室の中へと入ってきた湧別の姿を見つけ、そちらの方を見やると、湧別も偶然此方の方を振り向き、目が合ってしまった。すると湧別は、ニコリと微笑んで俺の方へ歩いてきたではないか!

俺がワタワタとしている間に、湧別は目の前まで来て「夏祭り、楽しみだね。」とだけ言うと自分の机の所へ行ってしまった。気の利いた一言も俺は言えないのか。だから冴えないサラリーマンなのだと落ち込んでいると、「まあ、頑張れよ正士。」「ガンバ!正士!」と2人からの応援。その優しさが身にしみ過ぎる。


学校がやっと終わり、自宅へと帰った俺に待ち構えていたのは、「よこしなさい。」「見せなさい。」という母からの威圧。そう、通信簿のことだ。小学生の頃の俺は出来ないという訳ではなかったハズだから、怒られる心配は無いはず。

「貴方は本当に出来ないわけじゃないんだけど、パッとしないわねえ・・・。」

母親の言葉に愛想笑いを浮かべつつも、なんとか自室へと戻り、俺は久しぶりにウサギを呼んでみた。

「ええと、そのお久しぶりです。」

呼び出したウサギは正座をしていた。そしてそのまま話しはじめる。

「私をお呼び出したという事は、現世へ帰りたいということでしょうか。」

ウサギの言葉にとんでもない!と頭を横に振り、「ただ、なんとなく呼んでみただけです。ずっと会ってなかったので心配になってしまって・・・。」と言うと、ウサギは首を傾げた。このウサギは心配というモノも分からないのか。それで今まではうまくやってきたのだろうか。

「その、今度お目当ての子と一緒に夏祭りに行くんです。なんだかそれが、運命の分岐点のように感じて。」

手を組んだ後に、親指だけをクルクルさせながら言う。俺は昔からこれがクセなんだ。何かドキドキすることや、緊張することがあるとすぐにやってしまう。

「そうですか。頑張ってください。運命というのは軽く変える事は無理でしょうから、告白などは必須でしょうね。」

そう言われて、ボッと顔が赤くなるのを感じる。告白。そうだ、告白。小学生の湧別にはまだ早いかもしれないけど、そんなことを気にして中途半端な行動をしてしまったら、それこそ無駄な労力に終わってしまう。そうだそうだ。ガツンと行くんだガツンと。俺は自分の運命を変える為に今いるんだからな。

「用がなければ、をちすひやばるみせ。おっと、すみません。チューニングがズレてしまいました。」

ウサギはそう言うと、ボフンとどこかへ消え去ってしまった。チューニングなんてあるのか。ウサギも大変なんだなと思っていると、部屋のドアがコンコンとノックされから、開けられる。

「正士、誰かいるの?何か話し声が聞こえてきたような気がしたんだけど。」

母親の鋭いセリフにドキッとしつつも、「だ、誰もいないって!」となんとか誤魔化し、俺は部屋から母親を追い出すことに成功した。

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