表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/127

第七十九章『ノーベンバー・クライシス3』

1942年十一月十五日…フランス領ニューカレドニア島ヌーメア


海外のフランス領は現地の自治政府や軍部の思惑および周囲の状況によって、

ドイツ占領下の本国ビシー政権とイギリスに亡命したドゴール将軍達の

自由フランス軍のいずれかに組みすることになった。

南半球にあって米英やオーストラリアの領土に囲まれたニューカレドニアは

いやおうなしに自由フランス軍の指示のもと米軍に基地を提供している。


ハルゼーの艦隊、ターナー提督の水陸両用部隊、第二海兵師団および陸軍二個師団が

ここヌーメアに集結していた。


「何だ、その『進化論』というのは? あの、人間の祖先は猿だという罰当たりな話か」


空母インディペンデンスの艦橋に響くハルゼーの怒声にブローニング参謀長も首をひねる。

通信士官の若い大尉がおずおずと発言を続けた。


「イギリスの博物学者チャールズ・ダーウィンが1859年に発表した学説で、

生物は太古の昔から進化を続けて今日のようになった…というものです」


「ふん、それで…ジャップの通信にその猿の学説がたくさん出てくるというのだな」


「はい、日本軍は暗号のコードを頻繁に変えますので解読が追いつかない状態ですが、

今回の変更前に解読できた範囲では大きな作戦を起こすだろうということと、そこに

この『進化論』という言葉がかなりの頻度で出ていたそうです」


「長官、二日前に日本機がオーストラリアのポート・ダーウィンに現れたという情報が

入っていますが、それですかね…」


夜明け前に飛来した二機の日本機はレーダーの反応からかなりの大型機だったらしい。

初めての空襲警報にダーウィンの街は大騒ぎになったが、爆弾が落ちることもなく

上空を航過した日本機はそのまま去っていった。


夜が明けてみると住民は街中に散らばっている日本の『謀略ビラ』を目にすることになった。

それには日本がオーストラリアに講和を持ちかけたこととその内容が書かれており、さらには

講和を拒否されたことにより、やむを得ず攻撃を選択することになったとも書かれていた。

港湾、飛行場、軍事基地のほか工場や都市も目標に入っているが、オーストラリア国民の

殺傷は避けたいので住民は避難するように…とも。


オーストラリア政府は日本からの働きかけを無視しただけではなく、国民にも報せて

いなかったから、この内容は大きな衝撃となった。数千の市民に箝口令が徹底するはずもなく、

全国的に政府を突き上げる動きが始まろうとしていた。これまで日本軍の攻撃がなかったのは

決してオーストラリアの軍備を恐れていたわけではなかった…英米海軍の敗北の情報は

伝わっており、日本軍の強力さはうすうすは感じていたが、こうしてその矢面に立たされることが

実感されるとその恐怖は一気に増幅した。


対処に追われる政府や軍関係者は、おりから入ってきた小さな情報をたいして気にとめなかった。

珊瑚海北縁の島々に配置してある監視員…コースト・ウォッチャーのうち何人かが連絡を

断っていることに…


「…ダーウィンで『進化論』か…芸がないな」


「長官、ターナー提督とバンデクリフト少将がお見えです」


「おお、今回はよろしくなターナー」


「それはこっちのセリフだよハルゼー」


「うちの第二海兵師団も今回が初陣だ。よろしく守って欲しい」


「第一の方はまだ再建中か」


「ああ、ギルバートでこっぴどくやられたからな…第三師団の戦力化の方が早いかもしれん」


「護衛はまかせてくれ。空母は小振りだが六隻、戦艦も新造艦が二隻いる。巡洋艦や

駆逐艦も新型ぞろいだからな」


「戦艦は『インディアナ』と『アラバマ』か、確かにピカピカだな…今回はネバダはつれて

こなかったのか?」


「ネバダはサンディエゴでドックに入ってる。いちおう対空火力を強化するための改装というのが

目的だが、ほんとのところは乗組員をほとんど『マサチューセッツ』に引っ張られちまった

せいだよ。ベテランは旧式艦より新型艦において早く戦力化したいってことだ」


「それにしても…陸軍も口ほどもない」


ターナーが周りに陸軍関係者がいないことを確認してから言った。


「すぐにでもインドネシアに攻め込むみたいな口ぶりだったのに、実際に出て来たのは

珊瑚界の航路の安全のための基地造りときたもんだ。結局のところ主導権をにぎりたかった

だけじゃないのか」


「兵隊も戦車も海の上は渡れない。どちらに主導権があるのかじきにわかるさ」


「島伝いというのが奴らの感覚だからな。確かにあそこに航空基地を造ればオーストラリアと

ニューブリテン、そしてニューカレドニアとで珊瑚海は完全にカバーできる」


「ジャップの潜水艦も出没してるというし不安で仕方ないというわけか」


「その…日本艦隊が出てくる可能性は?」


「出てくりゃ叩く! だが、今のところ奴らの興味はオーストラリア本土にあるらしい。

上陸作戦自体は実戦とはいえスムーズにいくだろう…なにしろ敵がいない…無人島に

毛が生えたような島だからな。飛行場の適地でもなけりゃ誰も見向きもせんだろう」


「ガダルカナル…か」


つづく



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ