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第七十一章『征西の艦隊…3』

状況を整理してみるとこうだ…


第一次攻撃隊はセイロン島コロンボに攻撃を加えつつある。一時間半後には艦隊に

戻ってくる…その時点で空母の飛行甲板は空いてなければならない。


艦艇攻撃用の兵装をした第二次攻撃隊の準備はできている。ただし、飛行甲板にあげ発進

させるには三十分はかかる。セイロン島の基地から五月雨式に来襲している英軍機に対処

しながらだと、もう少しかかるかも…


戦艦五隻を中心とする敵艦隊は南西に約三百キロの位置にあってこちらにむかっている。

この艦隊の編制や事前の情報から空母を含む別働隊がいる可能性が高いがまだ発見されて

いない。


我が方の索敵機は第一段が帰途についており、二段目が進出線の先端にさしかかる頃である。

この海域一帯はかなり雲が多く、索敵には困難をきたしている…


選択肢の中でもっともわかりやすいのが、南西の戦艦部隊に向け第二次攻撃隊を発進させる

ことだ。第一次攻撃隊の収容スケジュールから考えてもスムーズに運びやすい。

敵空母部隊が発見されればタイミングによっては目標を変更することも可能だろう。


だが、椿の心理を悪しき経験がおおっていた…いや、実際の経験じゃないのだが…

『ミッドウエー』…飛行甲板に攻撃隊が並んだ状態で被弾、誘爆で炎上する『赤城』『加賀』

『蒼龍』の姿がちらつく。


電探があるから完全な奇襲を食らうことはない。しかし、電探が敵機を捉えてから頭上に来るまで

速度にもよるが十五〜二十分だ。タイミングが悪ければ攻撃隊を発進させきれずに空襲を受ける

ことになる。


「長官…?」


「…『あだち』と『かつしか』に確認してくれ。すぐに上げられる零戦は何機か…

ああ、君…コーヒーの代わりを頼む」


「両艦とも最初に上げた機の収容中です。十分間もらえれば九から十二機は発進可能との

ことです」


隊内電話の受話器を置いた下西参謀長が報告する。


「……『すみだ』から『としま」までに連絡。零戦のみを飛行甲板に上げる…半数はただちに

発艦、のこりは即時発艦態勢で待機…だ」


「攻撃は行わないということですか」


「ここは防御に徹しよう。まだ午前中だ…攻撃の機会は必ずある」


「は、はいっ」


十数分後…二つの報告がほぼ同時に入ってきた。


「電探室より、南南東九十キロに反応大、接近中…おそらく百機程度の編隊と思われます」


「索敵機より…『南南東三百六十キロに敵艦隊発見、イラストリアス級と思われる大型空母二、

中型空母一を含む』です」


「やっぱりいましたか…高速性を生かして回り込んでいたわけですな」


「上げられるだけの零戦を出してお迎えすることにしよう。それと各空母に大至急攻撃隊の

兵装を外し弾薬庫に収納するように…燃料もできるだけ抜くようにいってくれ」


どうやら賭けに勝ったようだ…と椿は思った。これで『見えない敵』に脅えずに済む。


「それにしても敵空母は遠くありませんか?ハリケーンやスピット・ファイヤーの

航続距離ではきついでしょう。ついてこれるとしたらフェルマーですが、零戦の敵でない

ことは英軍もわかっていると思うのですが…まさか全部攻撃機ということは…」


「先任、もう一つ可能性があるよ。英空母が『マートレット』…F4Fを搭載してる場合だ。

あれなら充分ついてこれる。他の機体もソードフィッシュやアルバコアといった英軍機と

思わない方がいいかもしれんな」


その通りであった…『イラストリアス』『ビクトリアス』と『イーグル』はアメリカから

供与されたF4F、ドーントレス急降下爆撃機、新鋭のアベンジャー雷撃機まで搭載していた。

なにせ今のところ米海軍には、それを載せる空母がいないので気前よく提供してくれたのだ。

もっとも、各艦数機ずつのソードフィッシュを対潜警戒用に載せているのは英海軍のせめてもの

意地といったところである。


マートレット(F4Fの英軍名)三十五、ドーントレス四十、アベンジャー二十五機…

英空母の搭載数の少なさを甲板綮止で多少補っていた…は自らの倍の零戦が待ち構える中に

突入していく。しかも雲の多さから編隊は乱れかなりばらけた形で各個に戦闘に入るしか

なかった。それは日本側も同様で、雲の切れ間から飛び出してくる敵機を逐一攻撃することを

余儀なくされた。敵味方識別装置のない現状では電探による指揮には限界があり、しだいに

乱戦模様になっていく。


「艦隊上空に敵降爆!対空射撃開始!」


数機単位で侵入してくる敵機を高角砲と三十ミリ機関砲が迎え撃つ。一機、また一機と火の網に

絡めとられた機体が火だるまに、あるいはバラバラになって海面に落下する。


「雲が低い…敵機の視認からほとんど時間がとれませんな…おおっ!?」


「…『しぶや』被雷…いや、至近弾のようです!」


空母の舷側近くに巨大な水柱が上がっている。千ポンド…四百五十キロ爆弾の至近弾は

油断できない。水圧で水線下の舷側に大きな被害を与えることもあるからだ。


椿の乗る『みなと』の対空火器がいっせいに火を噴いた…近くに敵機がいるということだ。

発射音で会話が聞き取りにくい…松島先任参謀がさす方向を見ると数十、数百の高角砲弾が

炸裂した黒煙のかたまりの中から三機のドーントレスがまとまって墜ちていくのが見えた。


…そのうちの一機は損傷を受けながらもまだ生きていた…ただし爆弾は懸架装置もろとも

どこかに吹き飛ばされていたが…パイロットは必死でコントロールを取り戻そうとして、

海面すれすれでようやく機体を引き起こすのに成功した。


しかし、眼前には巨大な船の舷側が広がっていて、そこにびっしりと並んだ対空火器が

自機に狙いをつけるのがわかった。


「………イガッ!!」


火に押し包まれる刹那、ドーントレスの機首に12,7ミリ機銃の発射炎が閃いた。


     レクイエムが流れた…ような気がする。


使える能力ポイントは二百六十六億三千八百八十四万四千七百五十…になった。


つづく






いきあたりばったりで書いていると、とんでもないことになってしまいますね。地獄の戦場も金…能力ポイント次第ですが、二百六十億も失ってしまって、この先の戦争をどうするのか…これから考えます。

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