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第六章『一休み一休み』

主力艦建造についてのルールを定め、大戦の誘因の一つにもなった建艦競争に

歯止めを造ろう。これがワシントン軍縮会議に参加した英、米,仏、伊、日の

五大海軍国のテーマ…のはずであった。


ワシントン会議そのものの目的はベルサイユで積み残した戦後処理の解決にあり、

中国問題などが話し合われた。史実だとここで大戦中に日本が中国に押し付けた

『対華二十一か条』が糾弾され、いくつかの条項を取り下げざるを得なくなるのだが

今回?はそれはなし。列強が中国の主権を認めるということで話はまとまる…もちろん

列強がもってる租借地などの利権が返還されることは(ごく一部を除いて)なかった。


しかし、なんといっても目玉は軍縮交渉にある。会議を主導し…というかもっとも必要性を

感じていたのはイギリスであった。大戦で疲弊してツーパワー・スタンダードが保てなく

なったどころか、放置すれば近い将来アメリカ海軍に抜かれることが確実なのだ。

ここは、割とおとなしくしている日本や仏、伊を抱き込んでアメリカの軍拡を阻止しよう…

というのがイギリスのもくろみだった。


いくつかの齟齬は発生した…その最たるものは日本の『主力艦のみならず、補助艦艇を含めた

海軍戦力全体に枠をはめなければ効果が上がらない』という主張だった。


『国によって、地政学上や運用のドクトリンによって必要な艦艇も違いがある。

各国は総枠の中で独自の戦力を構成する自由をもつべきだ』


この主張にフランスとイタリアが同調した。大海軍を造るつもりも、能力もない両国だが、

独自の道を行きたがる国民性と、特にイタリアは地中海用に特化した海軍を造る予定なので

日本の言い分は意にかなうものだった。


会議は長引くことになったが、最終的にはその線でなんとか合意に達する。

英、米,日、仏、伊の戦力比率は10、10、6.5、3.5、3.5に決定した。


主力艦の排水量は三万五千トン以下、主砲は十五インチ(三十八サンチ)までとする。

1925年までは準備期間として建造中、計画中の艦は(枠を超える分の)従来艦の廃棄と

引き換えに認められる。条約の期限は十年間…1935年まで。


アメリカは各国に引きずり回された気がして面白くなさそうだったが、イギリスと並んで

名実とも世界のリーダーとしての立場を確立したことで、一応の満足をするしかなかった。


日本は二隻の戦艦を建造した。制限一杯の三万五千トンの艦体に金剛や扶桑と同じ

十四インチの主砲を三連裝、三基九門をのせる。速度は二十七ノット…後の近代化改装で

二十九ノットまで上がった。三連裝という新機軸に危惧の念をもつ者もいたが、十年の間に

じっくりと熟成させれば良いということになった。


大戦の記憶が生々しい当時…少なくとも大戦争は当分起こらないだろうと世界の誰もが思った。

中にはあれが最終戦争で列強間の戦争はもう起きないなどと言う…気持ちはわかるが…お気楽な

人間もたくさんいた時代だったのだ。


本来、扶桑級の改良型につけられる予定だった艦名の『伊勢』『日向』は完全な新型艦には

どうも…ということで、やっぱり?『長門』『陸奥』になった。当分の間この両艦が、

いろはガルタで『日本の誇り』と謳われることになるだろう。


戦艦四隻、巡洋戦艦四隻の『四四艦隊』の誕生である。

その他の艦艇については項を改めていずれまた…


こうして世界の海軍は長い休日に入っていった。


つづく


海軍休日…ネイヴァルホリデーの間、日本海軍は八隻の主力艦で過ごすことになりました。『八八艦隊計画』なぞ、はなっからありません。史実の十隻よりも少ないですが、健全なのではないでしょうか。

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