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第五十四章『酩酊の海戦』

『退屈だ』…と『異質な精神』は思った。


1942年五月末、世界を覆う大戦争は各地でほぼ同時に激しく動き始めていた。

ロシアでは二百万のソ連軍が大地を砲弾穴とスクラップ置き場と死体置き場に変えながら

モスクワにじりじりと迫っていたし、アフリカではドイツ軍がエルアラメインを突破しようと

イギリス軍陣地に猛攻を開始していた。地中海ではイタリア艦隊が大挙出撃、近く大海戦が

起きるかもしれない…英海軍と出会うと帰っちゃうこともありうるけど。


決してそれほど退屈な状況ではなかったのだけど…


太平洋は静かであった。文字通り水面下では日米の潜水艦隊が活動を続けていたが、しばらく

艦隊決戦は起こりようがない。第二機動艦隊の一部がオーストラリアに対する通商破壊戦のため

インド洋に進出しているほかは、日本海軍は艦艇の補修と訓練に明け暮れており、米海軍は

攻勢に出てくるはずもなかったから…


『いまが戦力を整備する時期であることはわかっている。いまの内にやっておかねばならない

ことも山のようにあるのだが…』


要するに椿は『魔王の艦隊』を出現させるタイミングが見えないことで、いらついているのだ。


戦争の期間を通して実際に戦闘が行われる時間は短かく…休止期間、準備や移動に費やされる

時間の方がずっと長いのだ。人も兵器も四六時中ドンパチを続けられるようにはできていない。

史実のラバウル航空隊とポートモレスビーの連合国航空隊の航空戦や、B−29の本土空襲に

しても『連日連夜』と言葉では形容されるが当然インターバルはあった。

ましてや海戦となると、潜水艦戦を別にすれば真珠湾から大和の撃沈まで規模の小さなものを

含めても三十回ほどである。日米空母部隊同士の戦いなんて42年十月から44年六月まで

一年半以上も起こらなかったりした。


スポーツや格闘技の試合と違うから双方が息を合わせてぶつかりあうことはめったにない。

それぞれ自分の都合で戦闘を避けるし、有利と思ってる方が相手を避けられない状況に

追いつめるにしてもそれなりに時間がかかるからだ。


米海軍がほぼ史実に近いペースで新造艦を送り出して来た場合、43年末にはエセックス級

正規空母が六〜七隻、インディペンデンス級軽空母が八〜九隻…おそらくもう少し増えるだろう。

戦艦はサウスダコタ級四隻、アイオワ級も突貫工事で四隻は就役させるはずだ。

この時点なら日本海軍が大きく目減りしていなければ何とか勝負になる…が、アメリカが

必勝を期すならエセックス級をもう五〜六隻、戦艦もモンタナ級ができてからにする可能性が

高い。


すると、決戦の時期は史実のレイテ沖海戦のあたり…44年九月頃か。


『ん〜、二年半近く先か…それまで地道に『悪い芽』を摘み取りながら戦備を充実させて

いくのが一番まっとうなんだが…』


魔王艦隊で戦争を最高に楽しむには出現させるタイミングが重要だ。日米の戦力バランスを

考えて、日本側から適度な感謝と畏敬の念を受けるぐらいの結果をもたらすことが望ましい。

…もしかするとあるかもしれない『次の戦争』のためにも…だ。


椿の地道な干渉だけで、この世界の日本がほとんど自力で戦争を終わらす…勝てないまでも

史実と違う形での戦争終結…なんてことになっては魔王艦隊の立場はないし、つまらん!


モチベーションを保つためにもここらで一発『抜いておきたい』などと不穏なことを

考えながら、鰹のなまりの煮付けで一杯やっていた椿の元に総連から二つの報告が

相次いで入ったのは42年六月三日の夜のことであった。


一つ目はインド洋上で二機艦が敵輸送船団を捕捉、飛鷹、隼鷹、龍驤、龍鳳から二波に渡り

百十機が攻撃をかけた結果、輸送船九隻、護衛艦艇二隻を撃沈破したというものである。

空母部隊によるインド洋での通商破壊戦は陸路によるビルマ(平成のミャンマー)進攻に

代わるものとして計画されたものだ。ビルマやその先のインドにかかわることは日本の

手には余ることである…ビルマの反英組織に対する武器や食料、医薬品などの物的援助

および特務機関による協力は行われたが…


日本とドイツおよび枢軸国は同盟関係にはないにもかかわらず、共通の敵と戦争をしてるという

不思議な状態にある。インド洋の交通路を遮断することがアフリカ戦線にどの程度影響を

与えるかは未知数であるが、戦力に余裕のあるいまのうちはやっておくべきであろうとされた

のだ。


二つ目の報告はハワイ近海に配置されている潜水艦隊が一隻の喪失と引き換えにもたらした

報告で、日本の勢力圏に出没しては荒し回っていた米軍の空母部隊が真珠湾に帰投したもよう

…という情報であった。


これが椿に決心をさせる…とりあえず魔王艦隊をデビューさせる…という中途半端のそしりを

まぬかれないものではあったが、酔っぱらいにとやかく言っても始まらない。作戦決行予定日は

1942年六月五日…そう!妄想戦記には欠かかすことのできないあの日…である。


つづく



作中の椿同様、展開に少し退屈気味の作者は酔っぱらいながらキーを打ってます。これが戦争の行く末にどんな影響を与えるか…ん〜、知ったこっちゃないという感じになってきましたので、後はまた考えま〜す。

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