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第三十二章『ゆく年くる年』

「全滅…か。チャーチルとの会談では、まず悔やみを言うことになるな」


クリスマスの後だが大統領はえらく不機嫌そうである。


「ヒューストンが最後まで送ってきた連絡を総合しますと、日本海軍は戦艦を五隻

繰り出してきました。うち一隻は未知の新戦艦でウェールズよりかなり大きかったと

いうことです。かねてから情報部が存在を報告していた四十センチ砲搭載艦と

思われます」


合衆国艦隊司令長官兼海軍作戦本部議長…長い…キング大将が答える。


「戦艦数は二対五、巡洋艦以下の艦艇も二倍から三倍の数でかかってこられては

大英帝国海軍といえども、この結果はやむを得なかったかと…

生き残った艦が無いので詳細は不明ですが、敵にも相応の損害は与えたようで、

日本側もそれを認める発表をしています」


「ふむ…問題は我が海軍だ。太平洋艦隊は日本海軍を打ち破れるのだろうね」


海軍びいきで、『マイ・ネイビー』といってはばからないルーズベルトは

イエス以外の答えを許さない声音で聞いた。


「艦艇数で…少なくとも戦艦数で同等以上ならば必ず…そのための戦力集中は

準備が整っております」


『アイスエッジ』と異名を取るキングの冷静な思考は『否』と言っていた。

プリンス・オブ・ウェールズは四万トンの巨艦だ…それよりかなりでかいということは

ドイツのビスマルク級並みかもしれん。


我がノースカロライナとワシントンはたしかに四十センチ砲を搭載しているが

ウェールズより若干小さい。元々三十六センチ砲搭載艦として計画されたものを

ビスマルクや日本の新型戦艦の情報を受けて設計変更をしたのだ。

四十センチ砲を受けるには防御力がこころもとない…そのため全長を短くして

その分防御力を強化した改良型の『サウスダコタ級』が建造されているのだ。


現状では数の力で押し切るしかない…最悪でも差し違えの形にもっていければそれで良い。

来年中にはサウスダコタ級が四隻就役するし、1943年以降は拡大発展型の『アイオワ級』

さらには大統領が建造許可のサインをしたばかりの『モンタナ級』も登場する。

三年後には真の『無敵艦隊』が太平洋を押し渡ることになるのだから…


「…ギルバード諸島確保に必要な陸上兵力、物資、船舶もようやくハワイと西海岸に

集結できました。キンメル大将からは今年最後の日にパールハーバーを出ると報告がきています。

…『その他』の作戦準備も『陸軍主導』のもとで着々と進められております」


陸軍総参謀長マーシャル大将が、わずかに顔を歪める。


『キングのやつ、いまから責任逃れか…まあいい、成功したら手柄顔は

させんからな』


「よろしい!1941年は最後まで平和を希求した合衆国が、戦争準備に狂奔していた

日本に立ち後れた…ということだ。きたる年こそ正義の反撃に立ち上がらねばならぬ…

諸君が早急に成果を上げることを期待する」


慌ただしい年の瀬、椿も連日総連の会議に出席して情勢の説明を受けたり助言を

与えたりしていた。新兵器の開発等に関しては能力ポイントの消費を含め記述して

おかねばならぬことも多々あるが、なんせ忙しいのでいずれの機会にまわすことにする。


レイテ島では米軍の組織的抵抗はすでに終息して、設営隊による飛行場建設が

複数箇所で始まっていた。国産の土木機械に加え、オリンピックの準備の

ために…まだ通商ができた時期にアメリカから…大量に輸入したブルドーザーや

ロードローラーが投入されている。


年明けには戦闘機用の、中旬には爆撃機も発着できる滑走路ができ上がる予定だ。

航空隊が進出すれば台湾からと合わせて、フィリピン全土を空から制することができる。

道路、橋、港湾、船舶等を破壊すれば米軍は身動きもできず、ただ食うだけの大男の

集団と化す。


日本海軍は次期作戦に向けて、艦艇の整備と補給に追われていたが、一部をもって

マリアナ諸島のグアムに攻撃をかけた。同島にはろくな戦力がおらず、グアム総督は

形ばかりの戦闘の後で上陸した海軍陸戦隊に降伏した。


レイテとグアムの戦闘終結後に日本政府は声明を出した。


『我が国は領土的野心をもたない。フィリピン諸島の一部とグアム島の占領は、

我が領土や航路に対する理不尽な攻撃を排除するための一時的なものであり、

戦争の帰趨がどのようになっても、終結とともに即時返還することを約束するものである』


どんなに忙しくても、人は寝なくちゃならないし、椿の場合は酒も飲まなくちゃならない。

熱々の鱈チリをつついてコップ酒をあおる…長ネギをかんだときうっかり熱い芯をのどに

すべり込ませてしまい、『クッフ〜』などと言いながら、ひとり妄想と現実を行き来する

この時間が椿五十郎にとり至福の時…である。


『まあ、ここまでは上出来だ。物資や情報、知識と引き換えとはいえ、政府もよく耳を貸して

くれているよ。大分史実と離れてきてるからこの先の展開は読みにくいが、ともかくやれる

とこまでやってもらおう』


ふすまの向こうから遠藤中尉の声がした。


「東郷外相からお電話です」


電話が好きでない椿はプライベートタイムには電話器を遠ざけ、ベルの音量も下げてある。

平成の世界でも固定電話しかもたなかったし、主にファクスを使用したので月々の電話代は

通話料込み二千円を切ることが多かったと言えばどのくらい嫌いだったかわかるだろう。


「はい………おお、大島駐ソ大使から連絡が…クイヴィシェフですか。

モスクワから七、八百キロといったところですね。…ふむ…権力はまだスターリンが

掌握してる…と……わかりました。明朝六時から会議ですね。

はい、いやこちらこそ…来年もよろしくお願いしますよ」


元営業マンの椿だから事務的な通話はそつなくできる。ただ、長く話すのがいやで

一回の通話は三分以内に終わらせたいだけなのである。


どこかで除夜の鐘が……


つづく



この先一週間〜十日ばかり仕事がとても忙しいので、おそらく更新はできないと思います。更新を楽しみにして下さってる皆さんに無駄足を運ばせては申し訳ないのであらかじめお断りしておきます。再開したらまたよろしく!

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