第九章『設定そのいち』
この時代の指導者層に会うまでの間、今回のミッションと使える能力ポイントの
設定について述べておかねばならない。
『予想される対米、英戦争において1945年までに無条件降伏以外の結末を迎えること』
これをコンプリートすることで、この世界の2007年までの未来のどこか、
または元々の出発点である平成に戻るかという選択肢が得られる。
ずいぶんと曖昧な感じもするが、別に深く考えた結果ではない。
設定は椿が決めるのだが、その基準はどうしたら『面白くなりそうか』だからだ。
能力ポイントを限りなく大きくして超巨大戦力を出現させ、全世界を踏みにじる…
ということだって可能なんだけど、なんかつまらなさそうな気がする。
やっぱり戦記には『おおっ』とか『ぐっ』とかいう所があって、さらに『むむ…』
『おー』『それっ』などを経た後に『うんうん』『ふうう』となるべきだろう。
不確定な要素は展開のスパイスになるが、それにしても無条件降伏以外の『結末』とは
どういうことか…講和でなくともよいのか?対ソ連戦は対象外なのか?
さきの日露戦争のように、『史実より有利な条件で講和する』といった単純なものでは
なさそうだ。その意味するものがなんであるかはまだわからない。そんな無責任な…と
言われると、これからよく考えますとしか答えようがない。大丈夫なのか…
そして今回持ってる能力ポイントは…一千億ポイント(円)である。
おおっ、前回の日露戦に比べると百倍!もっとも明治時代より物価は上がって…
すなわち貨幣価値はさがっているから単純に比較するわけにはいかない。
前回は金本位制をとっていたこともあり、そこからの算定で一円を現代の五千円とした。
今回は一円が現代の千五百円と設定する…現代とは生活様式がかなり違うので
物価統計などの比較もしにくい。まあ、軍事関連にポイントを使うことが多いだろうし
『戦艦大和の建造費が約一億四千万』…『現代なら二千五百億』といわれるところから、
ごくおおざっぱに決めたということだ。実際史実のこの辺りは中国との長い戦争、
軍事予算偏重、アメリカの締め付けなどにより経済がメチャクチャになっていた
時期であるので、ポイントの換算は非常に難しいのだ。
大和級戦艦が七百隻出せる!とはいっても、それだけで勝てるわけじゃない。
そりゃあ海上に並んだら壮観だろうが、熟練の乗組員、燃料、弾薬、食料
その他諸々が揃って初めて戦力になるのだ。そもそも、そんなに大和級が
泊まれる港だってないし、くず鉄の材料になるばかりである。
史実でのこの時期の国家予算の二十倍近い数字は確かに大きいが、逆に言うと
米英と戦うにはこれくらいあって、初めて『面白く』なるということなのだ。
それを考えると、日中戦争で経済がすでに破綻しかけていながらさらに
大戦争に突入…追い込まれていった史実の日本の哀れさがしみじみわかる。
ともかくこの一千億で思いっきり遊んでやろうじゃないか。今回の未来兵器の
縛りは『史実の1945年までの世界の技術による通常兵器ならなんでもあり』である。
ビミョ〜な所だ…日本軍の兵器という縛りがないのは超助かるけどね。特攻兵器の
バカボム『桜花』や人間魚雷『回天』をいくら出現させてもなんにもならんから。
『核』は一応タブーということか…アメリカが開発する可能性は高いだろうが。
また、朝鮮戦争時の主力ジェット戦闘機F-86セイバーやミグ15で、本土を爆撃しに
飛んでくるB-29をばたばた撃ち落とすというのもなしだな。
まあよい、世界の兵器が使えるならやりようはあるはずだ。
もう一つの前回との相違点はなんといっても、兵器のカスタマイズができることだ。
旭日旗を掲げた戦艦アイオワや空母エセックスはどうもいただけないものな。
使える技術の範囲内ですきなように艦艇や航空機をでっち上げることができる…
これぞ妄想戦記の醍醐味である!!
もちろん未来度やカスタマイズ度が高いほど消費ポイントは飛躍的に大きくなる。
扱う人間の熟練度やサポート体制も高度なものが要求されるから、その面でも
どんどんポイントをつかうことになる…戦争という名の地獄の沙汰も金次第。
日本の領土、領海の外に出現させると(輸送費分?)一割り増しなのは前回と同じだ。
なお、これまでに椿はタバコ(マイルドセ…ンライト以外吸わない)などの消耗品や
一年余の明治時代の滞在でへたったTシャツ、トレーナーなどの衣類、スニーカー
カップラーメンなどを出現させており、その消費ポイントは一万五百…現代だと
約千六百万円だよ、たっか〜!
…というわけで、残るポイントは九百九十九億九千九百九十八万九千五百…である。
つづく