転校生 望月
翌日、教室内は大騒ぎだった。
「おい、今日転校生が来るらしいぞ」
「どんなやつ?」
「昨日教室に入ってきた女らしい」
僕が教室に入ると同時にクラスの連中が集まってきた。
「弓張! あの女の子誰!?」
「何で昨日帰ったんだよ!」
「名前は?」
いろいろと一斉に聞かれて何も出来なくなった。
しどろもどろになっていると、予鈴が鳴ったと同時に担任が来た。
「はいはいみんな座ってー。まあ、昨日あんなことあったからみんなも知ってると思うが、今日は転校生がいまーす。望月さん入ってー」
毎回ダルそうな話し方をする担任が望月を呼ぶ。
しかし、望月は来ない。
担任が教室の外を覗くと望月がいなかった。
「あれ? 望月さんがいないぞ?」
教室がガヤガヤし始めた。
視線が僕の方へ向く前に、僕はこっそりと教室を抜け出し、非常階段へ向かった。
四階非常階段の踊り場の扉を開けると、望月がいた。
「何してんだよ。教室が、お前がいないから大騒ぎだぞ」
「・・・・やっぱり、転校生として紹介されたくない・・・」
目に涙を溜めて、嗚咽交じりに望月は言う。
僕は、頭を掻きながら言った。
「心配しなくてもさ、お前のこと、みんな知ってるから大丈夫だよ。昨日、教室に入ってきたんだからさ。顔は普通にバレてると思うぞ?」
「えっ」
彼女は驚いている。
「僕の席にやってくるまでに、クラス中のやつ、お前の顔を見てると思うし。多分、名前だけ言えば大丈夫だよ。お前、結構可愛いからすぐに人とも触れ合えるよ。現に、僕と初めて会ったとき、望月から話しかけてきたんだしさ」
彼女はしばらく外の眺めを見ていたが、意を決したように僕の方を向いた。
同時に、望月の長い髪が風に揺れる。
「弓張。私、教室に戻るよ。頑張ってみる」
「僕もいるから、安心して」
僕と望月は教室へと戻った。
教室が近付くと、望月の表情が固まっていた。
「大丈夫だよ。何なら、横に僕もいるから」
咄嗟に言ってしまった。
僕は何を言っているのか。すぐに否定の言葉を言おうとするが、遅かった。
「良かった!! じゃあ、弓張、横にいて!」
そう言って、僕の手を引っ張りながら教室に入った。
担任は望月探しに行っていなかった。
僕と手を繋ぎながら壇上に登った望月は、言った。
「て、転校生の。も、望月・・・・・美月、です。えっと、その、よ、よよよろしくお願いします!!」
言い終えた後、歓声が響き渡る。
席が分からないから困っていると、僕の横の席の女子が席からいなくなっていた。
「弓張くんの横、使って良いよ」
横の席だった女子は、仲の良い友達の近くへと勝手に移動したのだとすぐに察した。
自分たちの席に向かうだけでもみんなからはやし立てられた。
望月は平静を装っているが、僕には無理だった。
始終顔が真っ赤だった。
つづく
2ヶ月ぶりの投稿です。
最近はネタが尽きてきて何も書けませんでした。
またこう言う不定期更新が続きますが、よろしくお願いします。