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幸福を示す羅針盤  作者: 夏波
本編
7/39

お父様は名誉ある男

レイ視点です。タイトルで大体わかる話かも……。

 美しさ、優雅さ、完璧さ、勇気ある人――――。これらの肯定的な意味で使用されていた言葉。それは「マフィア」だ。マフィアは名誉を重んじ、仲間に対する信頼は命がけで守らなければいけない。そんな彼らは、自らの組織を「名誉ある社会」と称するのを好む。






 …………え?なんで俺がそんなことをいきなり言い出したかって?――――そのマフィアの屋敷に連れてこられたからだよ!!!



 一応言っておくけど、俺は何もしていない。いや、何かできるわけがない!!だって俺だよ!?チキンでビビりな俺が何かできると思う!?何もできない!!!うん、胸を張って言えるが、何もできない!!!!

 そんな俺が、なぜ連れてこられたかというと……母さんがいたからだ……。






 俺が4歳のころのことだ。俺はその時、昔でいう寺子屋みたいなところに通ってたんだ。生まれたときから言葉は理解できたけど、もちろん読み書きはできなかった。どんな場所で生きていくにも、読み書きや計算ができるくらいの学はあっても困らないよな、と考えた俺は、仕事の合間に母さんやマリアおばさんにいろいろ教えてもらってたんだけど、まぁ中身受験勉強終えた元学生な俺には、簡単な足し算や引き算はできて当たり前で。それでまぁ、いろいろあって、近所にあった無償で勉強を教えてくれる人の所に通ってたんだ。……べ、別に勉強ができると母さんたちが喜ぶからって張り切ったわけじゃないぞ!?そりゃあ、すっごい喜ばれて嬉しかったから頑張ったこともあるけど!!

 まぁとにかく、いつものようにそこに行って勉強して、帰ろうとした時だった。



「――――君が、レイ君かな?」



 なんかすっごいサングラスが似合うイケメンのお兄さんに声をかけられた。あの、日本人には絶対似合わない……なんていうんだっけ?あれだよ、ほら……下が滴みたいな形のサングラスかけたダークスーツのお兄さん。人は見た目で判断しちゃいけないって言うけど、普通に怖い!!!

 っていうかなんで俺の名前知ってんの!?あんた誰!何の用だよ!?って思ったが、チキンな俺がそんなこと言えるはずもなく、ただ黙って頷くだけだった。……いや、めっちゃビビりすぎて、ちゃんと頷けたかもわからない。けれど、「そうか」という呟きが聞こえたから、相手には伝わったみたいで安心した。



「君に、来てほしいところがあるんだが」



 俺には行きたいところなんてないですー!!ってそんなの無理ですよね、わかります!!

 低いのによく通る声で「ついてきてくれるかな」なんて言われたら、これまた頷くしかない。けれどその前に。



「かあさん……」



 に行ってくるって伝えたいって言おうと思ったのに声がかすれる俺はなんてチキンすぎるんだ……っ!!恥ずかしいっ……!やめてお兄さん見ないで!!あなたのそのイケメンすぎる顔で見られると傷が深くなるからやーめーてー!!



「……君のお母さんも、そこにいる」



 やめ………………はい?今、何て言った?母さんが、いる?……なんだ、これ。何が起きている?

 俺をどこかに連れて行きたいらしいお兄さん。そこに、母さんがいる?どういうことだ?











 車に乗せられて、どこかに連れていかれる間、俺は考えていた。誰が、何のためにかはわからないけれど、俺をある場所に行かせたい。そして、確実にそこへ行かせるために、……母さんを、人質にした……?

 ……ありえない。冷静な思考の一部が、そう言う。俺だって、そんなことはわかっている。こんな子供一人をどこかに連れて行きたいだなんて、誰が思う?俺はそんなすごいやつじゃない。それに、もし万が一そんなことを考えるやつがいたとしても、相手はたかが4歳児だぞ?飴玉一個で充分だろ。あ、いや、さすがに俺はそんな簡単な物には引っかからないけど、普通に考えれば、それでいけるって、大人は考えるんじゃないか?なのに、母さんを使って、俺を連れ出そうとするなんて……。リスクが大きすぎる。母さんは立派な大人だし。

 けれど、もし本気で俺に言うことを聞かせたいってやつがいるなら、母さんを利用するのは正解だとも思う。俺は母さんが一番大事だ。母さんは俺のためなら何でもするという。俺だって、母さんのためなら何でもする。それが、普通とは違う俺を愛してくれる母さんへの感謝の気持ちの表し方だと思うから。……だから、正解だと思うんだ。実際に俺は、母さんがいるって聞いて、ビビり具合はそのままだけど、行きたくないとは思わなくなった。











 そして、連れて来られたのは、俺の住む町を牛耳るマフィアのお屋敷でした。

 あれよあれよという間に、あのお兄さんに連れられて、重厚な扉が並ぶ長い廊下を歩き、一際立派な扉の前に連れてこられたんだ。……うん、なんかすっごく……ものすごーく、いやーな気がする。



「どうぞ、ボスがお待ちです」



 はい当たりー!!!って嬉しくないけどな!!!!!今ボスって言った?ボスって言ったよね?ボスって言ったな!?いや、待ってなくていいよ!ボスとか……やめてくれ!!もっとこう、可愛いのがいい、待っててくれるなら!!!ってやめてー!!!何扉開けてんだよこのイケメンが!!!



「……お前が……レイ、だな……?」



 心の準備できてないけどボスとご対めーん!!――――っていうか怖っ!!さっきのお兄さんがかすむほどサングラスが良くお似合いですね!!!!お髭も立派で!!!っていうか何よりもまず、なんでそんなに声が震えていらっしゃる!?はっ、もしや超怒ってる!?え、俺何した!?



「そうか……お前が、レイか……」



 あっれ、俺無意識に頷いてた!?いやまぁ、間違いではないけど。無意識怖っ!頼むから無意識で変なこと言ったりしたりするなよ、俺!!もうすでに超怒ってるっぽいんだから!!!――――あぁほらっ!!サングラス外すほど怒って……あれ?なんか、目から水出てますけど……。



「レイ……私の、息子……」



 えぇぇえええっ息子ぉおおーっ!?



レイ君ダディの登場です!「名誉ある男」というのは、「マフィアに属する者」と私は解釈しております。

マフィアについての文章は、外国の支配に対する自衛組織に起源があるという記述を読んだことがあり、大分好意的に書きました。そんなの間違ってる!と思われる方も居られると思いますが、どうかご理解くださいませ。

補足です。レイ君の言う下が滴のサングラスというのは、ティアドロップ型の事です。最近、それをかけたかっこいい外人のお兄さんを見かけたので、思わず書いてしまいました。あれって絶対日本人には似合わない形だと思うんです。

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