お母様はワケあり
前話のナタリアお母様視点です
「おめでとう、ナタリア。男の子よ」
そう言ってマリアが、私の赤ちゃんを抱かせてくれた。私の腕に、小さな、けれど確かな重さがある暖かな体が、すっぽりと収まる。その瞬間、可愛らしい目をぱちりとさせた。
「まあ、綺麗なアンバーね」
「えぇ……本当に綺麗」
あの人そっくりの、綺麗な瞳……。私とは違うその色に、少し胸が痛む。だめよ、悲しむなんて……私が選んだのだから。
「私はちょっと外すけど、何かあったらすぐに呼ぶのよ」
「えぇ、ありがとうマリア」
あの人のことを思い出し、顔を曇らせた私を気遣ってか、マリアは私達だけにしてくれた。彼女は本当に優しい人……。その名の通り、まるで聖母マリアのよう。私の事情をきっと気にしているはずなのに、何も聞かずにそっと優しく見守ってくれる彼女には、感謝してもしきれない。
あぁ……本当に可愛らしい、私の坊や……。こんなに小さいのに、もうすでに整った顔をしているのだから、将来はきっと素敵な男性になるに違いないわ。けれど……この子には私のせいで、苦労をかけることになってしまう……。
アンバーの瞳は、あの人の子だという証。けれど、そうだと名乗り出ることはできない。彼にも、……彼女にも、迷惑をかけてしまうから。それに、決して見つかってはいけない。あの人が選んだのは、私じゃない……。だから私も、こうして選んだのだもの。
この子に罪はないのに、隠れるように生きることを強いなければいけないなんて……。わかっていたことだけど、どうしようもなく……胸が痛むの。こんなに愛らしい坊やなのに、日の当たらないところでひっそりと生きていかなければならないなんて……。
これはすべて、私の罪……。私がいけないの。私があの人を愛しいと思ってしまったから。あの人との子である、この可愛い坊やを望んでしまったから。
……許して、何て言わない。言えるはずがない。でもせめて……。
「ごめんね……」
謝らせてほしい。……許されなくてもいいから。
「ごめんなさい……本当に、ごめんね……」
けれど、あなたを愛しているのよ……。あの人のことも……心から愛しているの。
「っ……」
その時、坊やの瞳が――――あの人と同じアンバーの……いえ、それよりも色の濃い、金色の瞳が、何かを訴えかけるように、きらりと光った。
まさか、そんなことあるはずがない。けれど、それはまるで、私の事をすべてわかって、許してくれているかのように見えた……。本当はただ、許されなくてもいいと思いながら、許してほしいと願っていた私が、都合よく感じたことかもしれない。それでも、もし本当に許してくれているのなら……。
――――許されても、いい……?
「ごめんね……」
こんな弱いお母さんでごめんね。でも、お母さん頑張るから……。あなたのことを、精一杯愛して、育てるからね。だから……。
「ありがとう、私の坊や……レイ……」
こんな私のところに来てくれて……。本当に、ありがとう。
またしても自分でもよくわからない!!私はきっと、端折ったっていいじゃない病に罹っているのです……。発病しても自分では気づかないからこんなことに……!!!
ぜひ補足させてくださいませ。お母様の言う「あの人」は、レイ君のダディです。でもそばにいません。理由はお母様が自ら離れたからです。その原因はいずれ……。なのでお母様はシングルマザーです。アンバーは琥珀ですので、それをイメージして頂ければ。個体によってイエローだったりゴールドだったりするらしいので、レイ君はゴールドの瞳です。ゴールド好き。