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幸福を示す羅針盤  作者: 夏波
本編
21/39

自慢の兄

ヴィンセント視点です。反抗期の裏側は……?


実はこれ、20話目です。びっくり。


 おれの兄さんはすごいんだ!カッコいいし、やさしいし、つよいし、あたまもよくて、なんでもできる。

 みんな言ってるよ、おれの兄さんはすごいって!えっと……し、しんどーとか、ひゃくねんにひとりのいつざい?っていうんだって。





 兄さんは、おれよりちっちゃいときから、もうくんれんはじめてるんだ。……おれはもう5才になったのに、父さんがまだはやいって言って、やらせてくれない。おれだってはやくくんれんして、兄さんのやくにたちたいのに!


 ずっとべんきょうばっかり。おれ、べんきょうあんまりすきじゃないから、たまにぬけだして兄さんのところに行ってるんだ。見つかったらつれもどされるから、兄さんのところにつくまではすっごいかくれながら行くんだけど、さいきんあんまり見つからないで行けるようになったよ!けど、兄さんにはすぐ見つかっちゃうんだ。だっていっつも、兄さんはくんれん終わったらおれの方を見るんだもん。兄さんに見つけられるのはいやじゃないからうれしいけどね!



 うれしいからとびつきに行くんだけど、兄さんはいっつも、ちゃんとうけとめてくれる。それもすっごいうれしいんだ!











 おれもはやく、兄さんみたいになりたい。兄さんみたいにつよくて、カッコよくて、やさしいおとこになりたいんだ。


 ……でも、ほんとになれるかな。兄さんみたいに……。

 父さんにいっぱいお願いお願いって言って、さいきんくんれんやらせてくれるようになったんだ。でも、おれぜんぜんだめ……。兄さんみたいにカッコよくできないし、ぜんぜんつよくなれない。おれにもたいじゅつとか、しゃげきとかのせんせーがいるけど、ぜんぜんだめなおれに、きっとがっかりしてると思うんだ……。兄さんはあんなにすごいのに、なんでおれはだめだめなんだろうって思ってる……。



 なんでおれが、兄さんのおとうとなんだろう。……おれがおとうとで、ほんとにいいのかな……?











 あたまがグルグルして、なんだかしんぞーがきゅってする……。あたまの中で、なんで、なんでって、言ってるみたいなんだ……。




 あ……。兄さんだ。あれ?おれ、兄さんのところに来ちゃってたみたいだ。

 兄さんのじゃまになるからって、あんまり兄さんのところに行くなってみんなに言われてるけど、兄さんはいっつも笑っておれをまっててくれる。だから、ふらふらって来ちゃったんだけど……。



 じゅうをかまえた兄さん……。セストじぃが言ってた。兄さんはターゲットをはずしたことないんだって。おれよりちっちゃいときから、ぜんぜんはずさないんだって。……おれはぜんぜん、ターゲットにあてられない。

 たいじゅつだってそうなんだ。兄さんはすででも、ぶきでも、せんせーたちをあっとうしてたんだって。おれはいっつも、せんせーにやられてばっかりで、お母さんとか兄さんのところで泣いてる。


 ……おれがおとうとなんて、兄さんだっていやだよね……?おれ、兄さんにきらわれたくないけどっ……でもおれ、兄さんみたいにつよくないし、よわいし……。おれみたいなおとうと、兄さんは……い、いらないんじゃ、ないかな……?











「……ヴィンセント、何があった?」



 兄さんが見えたから、ふらふらって歩きだした。そしたらおれを見つけた兄さんが、そうきいてきた。兄さんがおれを見るときは、いつだってやさしいんだ。……おれは、だめだめなのに。そう思ったら、すっごくかなしくなった。



「おれ……おれ、なんでっ……」



 泣くなんて、おれほんとにカッコわるい。……こんなんじゃ兄さんにきらわれる。



「っなんで、おれが兄さんのおとうとなのっ……?」



 ごめんなさい、ごめんなさい兄さん。兄さんのおとうとなのに、だめだめで、よわくて泣きむしで……。



「……いきなり、どうした」



 っ!!兄さんの、すっごくひくい声……。いっつもやさしい兄さんのそんな声、きいたことない。兄さん、おこってる……?ほんとにおれ、兄さんにきらわれた……!?で、でもっ。



「だっ、て……ダメダメだしっ、みんなだって、ゼ、ゼフィレリのむすこ、にしてはっ、たよりないって……っ!」



 おれしってるんだ。みんながおれのこと、ぜんぜんだめで、ゼフィレリのむすこなのに、よわくて泣いてばっかりで、おとうとなのに、兄さんとはぜんぜんちがうって言ってるんだ。こんなおれが兄さんのおとうとでいちゃだめなんだ……。



「――――だめでも、頼りなくても……。俺は、お前の兄でいたい」



 え?いま、兄さんなんて言ったの?おれがだめだめでも、たよりないやつでも……兄さんは、おれの兄さんでいたいって、思ってくれてるの……?

 ……ほんとに、いいのかな。おれが、兄さんのおとうとで。おれは、兄さんがおれの兄さんだとすごくうれしいから、兄さんのおとうとがいい。兄さんも、おれがおとうとでいいって、思ってくれてるんだ……。


 それってなんだか、すっごくうれしい……!


 うれしくって、なんだかなみだが出てきた。なんでだろう、うれしいのに。

 せっかく兄さんに、おとうとでいていいって言ってもらったのに泣いたのがはずかしくて、おれは兄さんにだきついて、ぐりぐりあたまをすりつけた。


 兄さんはおれをいつもみたいにぎゅって抱きしめてくれた。うれしくってなんども兄さんって言ったら、いつもみたいにやさしい声でどうした?ってきいてくれて、おれはもっとうれしくなったんだ!


5歳児がどれだけ単語を操れるのかがわからなかったので、ひらがなばっかりになりました……。意外にヴィンス視点は難しい。けど、途中で切ってしまったので、次回もヴィンス視点です……。頑張ります。

まさかの反抗期の裏側はこんな感じでしたが、いかがでしたか?ヴィンスはとても純粋で、レイ君に憧れているので、どうして自分はこんなに出来ないんだろうと、子供ながらに思ってしまいました。純粋でお兄ちゃん大好きっ子だからグレませんが、レイ君には多少ダメージを与えました(笑)


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