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幸福を示す羅針盤  作者: 夏波
本編
17/39

彼女の宝物

ビアンカ視点です。区切りがいいから切ってしまい、短め。

『何で私がスチュアートに好きだなんて言われなきゃなんないの!』



 そんな事を言ってから、2年しか経ってない。それなのに、舌の根も乾かない内にとは言わないけど、まさかそのスチュアートと結婚してるだなんて。当時の私に何て言われるか。


 ナタリアの頼みだから仕方なく――――なんて言えないわ。私だって、好きでもない男の妻になるなんてごめんだもの。それにナタリアが、好きじゃなくても結婚してだなんて、私にそんな事頼む訳がない。



 素直に認めるのは癪だけど、いつの間にか、私はスチュアートを好きになっていた。私の方が年上だから、天使みたいに可愛かった小さい頃から、ナタリアの事で女々しいくらいにウジウジ悩んでたところまで知ってる。だから未だに、私がまさかスチュアートを好きになるなんてって思う。

 けどたぶん……ほだされちゃったのね、その頼りないところに。ボスとしてのスチュアートは立派にゼフィレリ家を引っ張ってるけど、ただの男になるとてんでだめになるんだから。

 だから、ナタリアに頼まれたから仕方なくっていうのは、所詮照れ隠しにしかならないわ。






 でもねぇ……。



「レイがまだ私の事、お母さんって呼んでくれないんだけど?あぁ、もちろんレイは悪くないわよ?誰のせいかわかってるわよね」

「……私のせいなのだろう」

「なのだろう、じゃないわよ!あんたのせいに決まってるでしょ!?母親亡くしたばかりだってのに、再婚した途端妊娠ってどういう事よ!」



 私だって、子供ができたのが嬉しくないわけじゃない。曲がりなりにも、好きな男との間にできた子供だし。だからって、事情はちゃんと話したけれど、妻が亡くなってすぐに再婚した父親に対する不信感をレイが抱えてるかもしれないっていうのに、妊娠までしたなんて。






 ナタリアの生前、レイとは3人でよく話してたから避けられたり邪険にされたりすることはないけど、だからって母親だと認めてくれているわけでもない。未だに「ビアンカさん」呼びなのは、母親の親友として接していた時と変わらない。



 ナタリアがよく言ってたけど、レイは本当に優しい子だから、妊娠している私を気遣ってくれる。自分はゼフィレリのボスの息子で、私はボスの妻だっていうことをよくわかっているから、お母さんとは呼んでくれないけど、私を大切にしようとしてくれてる。



 あぁイライラする!何もかも全部スチュアートのせいよ!!











 ギクシャク、とまではいかない、むしろ世の中の子供がいる男の後妻に比べれば、格段に恵まれてるだろう関係が変わったのは、息子のヴィンセントが生まれてからだった。義理の弟の誕生は、レイにとっても嬉しく思うことだったみたい。

 そういえば、スチュアートのせいでナタリアが屋敷から出ていっちゃってた間、数人の家族と同居していたって言ってたわね。レイは面倒見がよくて、年下の子達にもすごく好かれてたらしいから、私やスチュアートの事は別にして、ヴィンセントの事を可愛がってくれるはず。



「ほら、ヴィンセント。あなたのお兄ちゃんよ」

「……おれが、兄でいいの?」

「当然よ!私はあなたの事を息子だと思っているのよ、レイ」

「…………ありがとう、――――……お母さん……」



 ……この時の私の感動は、きっと誰にもわからないわ。




 ねぇ、ナタリア?あなたの息子は、とってもいい子だわ。レイの事、私、あなたの分まで大事にするから……。だから、安心して。見守っててくれると嬉しいわ。


タイトルの「彼女」は、ビアンカさんから見たナタリアお母様と、作者夏波から見たビアンカさんという二つの意味があります。

ビアンカさんはダディへの当たりがきつめですが、それは従姉弟としてそうやってずっと過ごしてきたからです。ビアンカさんもゼフィレリの娘ですから、周囲は注意できないし、きっと先代のボス(ダディのパパ)も気にしなかったのでしょう。


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