変わること、変わらないこと
レイ視点です。やっと会話……!
母さんが死んでしまってから、変わった事もあれば、変わらなかった事もあった。
変わらなかったのは、だめだめな俺が次期ボスだっていう事。進歩のない俺に、さすがの父さんも焦ったみたいで、教師の数が増えたんだ……。すっごい熱心に教えられるから、ビビりながらも何とか頑張らざるを得ないんだけど、やっぱり射撃は苦手なまま……。ターゲットの穴が一個以上空いた事がないって……だめ過ぎるな、俺ってやつは!セストさんごめん……!
「レイ様、ビアンカ様から、珍しい菓子を取り寄せたので一緒にどうかとのお誘いが来ております」
「……わかった。ぜひと返事を」
「畏まりました」
い、いきなり声をかけられてビビった……。何とか言葉を返した俺に一礼して部屋を出ていくのは、グレンっていうイケメン。父さんから頼まれた、俺の部下だ。――――……大事なところだからもう一回言うけど、俺の部下なんだ!友達より先に部下できたんだよ!……哀しくなんかないからな!!
とにかく俺に、部下ができたんだ。あれはもうすぐ6歳になるって頃だったかな。グレンを連れた父さんが俺に言ったんだ。
『彼はグレン=ベネット。お前付きの部下だ。これから彼を腹心の部下として、好きに使いなさい』
ってな……。中身大人でも、外見もうすぐ6歳児に何てこと言うんだ父さん!って思ったよ。す、好きに使えだなんて……!年は30歳だっていう、前世と合わせたって俺より年上のイケメンを好きに使うだなんて、恐れ多くて俺には無理!!
……なんて思ったけど、グレンってすっげー良い人でさ。気が利くし、何でもソツなくこなしちゃう大人で、俺の事もよくわかってるから、フォローしてくれるんだよ!この間だって、歩いてた時に壁に掛けてあった時計が落ちてきたんだけど、うわっ落ちる!って思って動けなかった俺を、さりげなく横に移動させてくれて、怪我しないようにしてくれたんだ!すっごいできるイケメンだよ。俺惚れそう!!あ、あくまで人としてだから!
――――ってそんな事より、そもそもなんで時計が落ちてくんだよっ!って思わないか!?……多分それ、俺のせい。
いやぁー……俺が屋敷に来てすぐくらいからかな?俺の周りで、なんか不思議な現象が起こり始めたんだ……。俺が前を通っただけでいきなりオーディオプレーヤーが壊れたり、花瓶が割れたり、時計が落ちたり、写真立てが倒れたり……。これってもしかして……俺は不思議なハンドパワーを手に入れたのか!!…………すみません調子に乗りました、ただの不注意です……。
母さんが生きてた時も落ち着きがなかったけど、母さんが死んでからさらにそれがひどくなってさ……。俺のベッド、頭の方に天蓋っていうのかな、それがあって半分覆われてるんだけど、……あ、女の子が憧れるようなレースのやつじゃなくて、金の糸で縁取られた重厚な、緞帳?みたいなやつ!それが、朝起きたら破れて俺の横で寝てたこともあった……。明らかにそれ、俺が破いちゃったんだよな、寝ている間に……。寝てる時まで物壊すとか……。ギャー!!父さんごめん……!故意じゃないんだ、それはわかって!俺だってそれ見つけた時はやべぇ……って思ったんだよ!
グレンが俺の部下になったのも、もしかしたらそういう背景があるんじゃないかなー……って思う。俺のあまりの破壊っぷりに父さんも困って、グレンっていうお目付け役を俺の側に置いたんだ、きっと。そうすれば、破壊行動を事前に止められるし、俺をボスとして支えてくれる土台を今から作れるし。いや、だから俺はボスになんてなりたくないんだって!
ハンドパワー(笑)。レイ君の破壊神っぷりには、第三者から見たらきちんと理由がありますが、それはまた何れ……。
できるイケメン、グレンさんの登場です!彼はダークブラウンの髪にブラウンの瞳の大人なイケメンさんです。レイ君はグレンさんが、自分のだめさ加減をわかってくれてると思っていますが、実際はもちろん……(笑)
レイ君がグレンさんを呼び捨てなのは、頑張っての事です。きっと、「私の事はどうぞグレンと」といわれたのでしょうが、ビビりでチキンなレイ君は気を抜くとさん付けしてしまいそうになるので、頑張って心の中でも呼び捨てているのです。




