そんなこと言えない
レイ視点です。相変わらず会話がない……。
やっぱ無理だよ、俺がボスなんて!絶対俺なんかに跡継がせちゃだめだ……。だって俺、ビビりだしチキンだし、だめだめなんだよ。それに、理由はともかくとしても、つい最近現れたぽっと出の息子だ。そんなやつが次期ボスだなんて、納得できない人もきっといると思うし……。
俺のだめっぷりはわかっているはずなのに、父さんは見た目に似合わず優しいから、俺の事だめなやつだって言わないでいてくれてる。なんとか次期ボスになれるように、訓練とかいろいろさせてくれてるんだ……。いや、俺ボスになりたくないけど。
どうしたら、跡取りじゃなくなるのか……。だめ過ぎてボスに向かないって思ってくれそうな気配はない。むしろビシビシ鍛えて、なんとか使えるようにさせられそうなんだよ……。っていうか実際そうさせられてる。
それもこれも、俺しか父さんの息子がいないから。だから俺なんかに、こんなだめだめな俺なんかに期待をかけなきゃいけないんだ……。――――あ。
…………解決策、それじゃね?
そうだよ。俺しか子供がいないから、だめだめな俺を跡継ぎにしなきゃなんないだけで、他に息子がいれば、わざわざ俺なんかに期待しなくてもいいんじゃん!!ってことはあれだ、父さんに息子……俺にとっては弟か、弟がいればいいんだ!
弟!俺、弟が欲しい!!
――――……なんて言えるかっ!!精神的にきついぞ、それは!
普通の4歳児なら言えるだろうけど、中身成人な俺にはきつい……!臆面もなく「弟が欲しい」なんて言えるほど無邪気じゃないんだ、俺は!!コウノトリもキャベツ畑も、俺にはもう通じないんだよ!コウノトリはただの鳥なんだ、キャベツ畑だってただの畑でしかないんだよ。何も運ばないし、採れるのはキャベツだけ!見た目4歳児でも、無邪気さの欠片もないんだ、だから言えない!それに!――――……それに、何だか最近、母さんの調子が悪いみたいなんだ……。
母さんはあまり顔に出さないけど、なんとなくつらそうなんだよ……。そういうのが、最近多い。大丈夫よって言うけど……信じられない。マリアおばさん達と住んでた時、母さんよくキッチンで火柱起こしてたんだけど、その時だって大丈夫よって言ったんだ……。ただの火じゃなくて火柱だからな!?……もはや消火の手際の方が良くなってたよ……。
あー……母さん、家事とか全然した事ない人だったんだって。まぁ今のこの生活を見れば大体分かるけど。身の回りの世話は全部メイドさんがやってくれるし、食事だって待ってる間にシェフが美味しいものを作ってくれる。そんな生活から一変して、俺を抱えて何でも自分でやらなきゃいけなかった生活は、想像以上に母さんに負担をかけていたんだと思う……。頑張らなきゃって気を張ってたのがなくなって、体の力まで抜けたみたいなんだ……。
そんな感じで、怠そうにしながらも大丈夫って言い張る母さんが心配だから、俺は毎日、勉強の時間が終わったら母さんのところに行くようにしてる。母さんは大抵ビアンカさんと一緒にいるんだけど、そのビアンカさんだって、心配だから休んでって言ってるのに。
それからしばらくして、俺が5歳の頃。母さんは俺と父さん、ビアンカさんに看取られながら死んだ。
こ、こんな終わり方にしてしまったのですが……いかがだったでしょうか?
お母様にはもう少し長生きしてほしかったのですが、いろいろ考えた結果、この先の展開上の都合もあり、美人薄命ということで、レイ君やダディたちの心の中で永遠に生きていただくことにしました。
今更ですが、お母様は上品でミステリアスなブロンド美女というイメージで書いていました。あまり表情が変わらず、何を考えているのかわからないから、ダディは不安になってビアンカさんにいろいろ相談していたという裏話もあります。表情が変わらない、何考えているかわからないという点は、しっかりレイ君に受け継がれています!前世の記憶があったって親子だもの!




