第九話 夢の中の詩
〃エドじゃない、どうしたの?〃
「突然で悪い。明日のパーティー、エルトリックも参加していいか?」
〃いいわよ。でも、なんで急に?〃
「エルトリックの様子がおかしいんだ。部屋には壁中に絵と文章が貼られてるし、捨てられていた人形を持って帰ってくるし、新しい友達ができるし・・・・・」
〃心を閉ざしたままなのね、エルトリック。その友達には会ったことある?〃
「会った事なんかないぜ」
〃それって、想像の友達じゃない?」
「俺もそう思うんだ。だから、明日のパーティーいいか?」
〃わかったわ。エルトリックは大丈夫よ。私がエルトリックの好きな物をプレゼントするわ。じゃぁ、明日ね!〃
「ああ、明日な」
「エルトリック」
エドリックはリビングで本を読んでいるエルトリックを呼んだ。
エルトリックは本を読んでいるままで、返事を返さない。
「明日、キャサリンの家でパーティーがあるんだ。行かないか?」
エルトリックがわずかに反応した。
「まぁ、小中の頃の友達との同窓会だ。キャサリンにはお前が参加することになってるんだ」
「・・・・いいよ」
エルトリックが返事を返した。
エルトリックは本を閉じると、自分の部屋に戻った。エドリックは心配そうにエルトリックを見た。
「また、このニュースか。最近、多くなったな・・・・この、十字架って、エルトリックの部屋にあった絵と同じだ。・・・・まさか」
一瞬、エドリックはアレックスとエドワードが実在するような感覚になった。
その時、上からエルトリックの笑い声がかすかに聞こえた。
エドリックは驚いて、階段越しに近づいた。
そして、エルトリックに気づかれず、そっと二階に上がった。
エルトリックの部屋の前に来ると、何か聞こえてくる。
「ごらん、今日も赤いドレスを着た片足のエディが、一人ぼっちでポルカを踊っているよ・・・・」
そう、その声はエドリックが見た夢の中に出てきた詩だった。
途端に、エドリックはあの時見た夢を思いだした。
二人の少年が詩を言い出す。そのときの声が聞こえる・・・・・・
ゴクリと唾を呑み込むと、エルトリックの部屋のドアを開けた。
エルトリックはベッドに座って、笑みを浮かべている。その前には椅子が二つ。
さっきまで誰かがいたような感じだ。
「エルトリック、何を笑っていたんだ?」
「なんでもないよ、兄さん」エルトリックはそういうと、エルトリックはさっき聞こえた詩を言い出した。
ごらん、今日も赤いドレスを着た片足のエディが
一人ぼっちでポルカを踊っているよ
無くした右足と物が見つからなくて
哀しくて踊っているのさ
『静かにおやすみ』を口ずさみながら
真っ白な雪の上でポルカを踊っている・・・・
「エルトリック、やめるんだ」
そんなエドリックの声は聞こえず、エルトリックは詩を言い続ける。
パパが買ってあげよう
マネシツグミ鳥を
もしも歌を歌ってくれない小鳥なら
代わりに買ってあげよう
ダイヤの指輪を
もしもダイヤが真鍮に変わってしまったら
代わりに買ってあげよう
飾りのある鏡を
もしも鏡が粉々に割れたら
代わりに買ってあげよう
雄のヤギを!
「やめろ、エルトリック」
エルトリックはエドリックの言葉を無視して言い続ける。
楽しそうに・・・・・
赤いドレスを着た片足のエディは
真っ白な雪の上でポルカを踊り続ける
ほら、見てごらん
今日も赤いドレスを着た片足のエディが・・・・・
「エルトリック!」
エドリックが叫んだ。
その声に驚いたのか、エルトリックは詩を言うのを止めた。
エドリックは急に吐き気がし、ガクッと床に膝をついた。エルトリックはエドリックのそばに駆け寄り、エドリックの様子を見た。
エドリックは小さく呟いた。その言葉に、エルトリックは青白い顔へと変わった。
なんか、今度はパーティーの話に変わってきました〜
ファイディングニモで、「パーティー!パーティー!」と言っている魚がいました^^
なんて、名前の魚だっけ??