第四話 幸せを願って
「夜、何がいい?」
「えーっとね〜」
街に買い物に来た俺とエルトリック。エルトリックは親子の会話を聞いていた。
淋しそうな顔になる。
当たり前だ。まだ、10歳の少年だ。両親が恋しいにきまっている。
「夜、何がいい?」
俺はエルトリックに聞いた。思った通り、エルトリックは嬉し気な顔をして答えた。
「シチューが食べたい!」
エルトリックのリクエストに応じて、今夜はシチューを作る事にした。
野菜、肉、ミルクなどを買い、最後にエルトリックが欲しい物を買うことにした。
両親を亡くし、今は自分と共に生きている弟を何としてでも、幸せにしてやりたい。
エルトリックは本屋に行きたいと言った。
「すごい。いっぱい、本がある!」
ほとんど外に出た事がなかったエルトリックは、こんなに沢山の本を見るのははじめてだった。
エルトリックの嬉しそうな顔に、俺はほっとした。
いつも悲しそうな顔をしているエルトリックが、あんなにも嬉しそうな顔をしている。
それが嬉しかった。
「兄さん、僕、この本が欲しいな」
エルトリックは一冊の本を俺に見せた。
〃バーティミアス サマルカンドの秘宝〃という題名の本だ。
「どういう話なんだ?」
俺はエルトリックに聞いた。エルトリックは2〜4頁読んだらしく、すぐ答えた。
「悪魔と魔術師の話だよ、面白そうだったから」
「こんな、分厚い本、読めるのか?」
「大丈夫だよ。これぐらい、読めるよ」
「わかった。じゃぁ、買いに行こう」
俺とエルトリックは会計を払いに、レジに向かった。
家につくころには空には沢山の綺麗な星達が輝いていた。
「兄さん、ありがとう」
エルトリックは俺に微笑みかけながら言った。
俺も笑って返した。
「幸せになるんだぞ、エルトリック」
今の俺には、エルトリックの幸せが一番だった・・・・・・
ホラーなのに、ほのぼの系を書いてしまいました。
でも、こういう場面もあっていいと思います。
自分的にはですけど・・・^^;