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名の無い彼と名無しの彼女  作者: 水口 秋
第二章、皆様に更なる世界への導きを。
50/50

『運命』的出会いって確率にすると一体どれくらいなんだろう。千の階乗だったりして。

《続・承》


痕跡を追う事、約数十分。明らかに今までとは違う様子となった肉の空間は、大きな口を開いて俺を迎えた。

あれから、しゃらくさくなったので王胎で周りの壁をありったけの範囲で崩した。すると、一つの方向に真っ青の肉の壁を発見した。そこは大きな空洞になっており、そこから中の様子を察知することは不可能だった。


そして、その口の前。破壊痕はこの口にもある。右側が大きく削げている。断面からはたるんだ神経のようなものが見える。

舌の根元に溜まった粘質のつばをグッと飲み込み、覚悟を決めて一歩踏み出す。

中に入ると、そこには彼女とあの二人組がいた。

俺は愕然とした。

べつに彼女は触手に蹂躙されてもいなかったし裸でもなかったし服が溶けているわけでもなくキャーと叫んでいるわけでもなく恥ずかしがっているわけでもなく二人組は喋ることもなく敵対することもなくこっちを見ることもなく彼女と二人組は、


「……―――おい、死んでんじゃあねぇかよ」


手足を肉の壁に埋め込まれ、胴体の重さで前にうつむき、生気の全く籠っていない顔に焦点の合っていない瞳に何処かを空空漠漠と無限に映していた。


…おい。

……おい。

………おいっ。

「がぁあああああああああああっ!!!!!!!」


死んでいる。

事実を噛締め、脳で砕く。

先ほどまでの多少の高揚感と緊張と期待が混じり合い、汚濁の感情をブレンドする。

思考する。

彼女たちが、彼女が死んでいない確率を。

眼の前の事象を無視して。

あー、糞。

確定要素を度外視しすぎて全く現実味の無い答えに辿り着いた。

振り払う。

その考えを。払拭する。


もう一度、確認する。

こっちの焦点が合わなくなりそうだ。眼が、目に靄がかかる。

何かが頬を伝う。目尻から流れ出るソレは。

とっても悲しい物質で構成されていると、この時俺は思った。

「ああ、これが…悲しいってこと」

涙が唇の端に触れ、上唇と下唇の間に潜り込み、濡らす。

雪の降るあの日―――。


《俺は彼女を守ると心に誓った。》


《俺は彼女とともに生きると心に刻んだ。》


《俺は彼女と名を取り戻すと心に決めた。》


《俺は彼女と――――――――。》


―――そして、俺は『思い出す』。

『―――運命を敬え。―――運命を享受せよ。』

という頭に反響していたあの言葉を。


この事なのか…、だったら俺に語りかけたのは…誰。


―――運命を、変えることは出来ない。


言葉が流れる。頭を直撃するような頭痛が響く。


―――従え。それがお前と我の契約だろう。


お、お前は…―――、


―――知識は消失されているのかも知れんが、本能は記録してあるはずだ。


ああ、あの時俺が彼女とともに創った擬似的存在であった者、なのか?


―――そうだ、お前とアレはあの小童であるレヴェルイーターを消すためだけに幻影を創った。だが、お前の中に本当の我はいる。アレは自分の能力で創ったと言ったが、『そんなことは絶対にあり得ない』。


長い言葉をしゃべるたびに頭にギンッときつい衝撃が走る。


―――なぜなら、我は生まれて一瞬も肉体をもったことはない。いつも乗り移っていた。アレはお前の本質を無意識と意識の境界で理解していたのだ。


…第、六天。


―――そうだ。そしてお前は、お前の名前は××―――、それがお前の名前だ。


っがぁあ、今なんて言いやがった?


―――ふむ、やはりまだロックがかかっているな。これでは道理が通らない…、おい人間。


俺は仏人だ。


―――我から観たら人間も仏人も大して変わらん、異能か否かの違いだ。


何のようだ。


―――お前に名前を与えてやる。


どうして、


―――ふん、我は幾重もの死を体験した。そして知った。人間の精神のもろさに。今の貴様は水の膜のように今にも死んでしまいそうではないか。我はこの肉体が気に入っている。だから、死なれては困る。


俺は死ぬ気なんて…、


―――嘘をつけ。アレの死体を目の当たりにしてお前は創造能力オリジナルコンジェクターを使って何をしようとした。それは貴様自身が一番身にしみて知っているだろうに。


―――だから名前をやる。お前とアレを繋ぎ止めている楔と鎖のうち一つは名前だ。これで多少はマシになるはずだ。


俺たちはそんな薄情な関係ではない。


―――否定できるか?貴様らが関係を結ぶ理由は自己の本質―――名前を自らの魂の核に帰還させること、そうではなかったのか。だから自らの利害の為にアレを守ると決めたのではないのか。


違うっ!!!


―――強く否定することは反面では理解しているという事だ。


調子に乗るなよっ、六番目が!!


―――我の事が言えるのか、お前に。《リアルゼロ》のお前に。


リアルゼロ?それは―――「よぉ、ロク。久しぶりだなぁ。あたしのことまだ覚えているよな。あたしだけがお前を見抜く事が出来る同類だって」


脳内での会話に集中していると、背後から声が掛けられた。


『セカンドか、貴君とは一生会いたくはないのだが』


六番目は俺だけじゃない。この空間に存在する全ての生物に語りかけた。


「今はそこの《イマジナリー》に寄生しているってことかぁ?はっ、趣味の悪りぃやつだな相変わらず。まったく吐き気がする。おいっ、イマジナリー」


今の会話からすると俺がその《イマジナリー》なのだろう、


「なんだ?」


「今だけだ。《ロク》と変われ」

セカンドと言われたソイツは姿かたちが無い。

―――たのもう。一度だけ、今しがたその体を借り受けたい。


…承知した。


断る理由もない。今の、俺には。


そこから俺の意識は途切れた。

糸が切れるように、プッツリと。


意識が戻ったときには六番目もセカンドも、俺が感じる中ではいなくなっていた。


一つだけ、変わったことがある。

周りは肉に囲まれていた筈なのに、今は見渡す限りの平面となっている。


当然、死体も。六番目がアレと呼んでいた彼女も。

ギリッと奥歯をくいしばる。

もう、行き詰まりだ。

行き止まりでさえない。

戻れない。

前も後ろも詰まっていて。

…クソッ!!

すいません。

とても遅れてしまってました。

水口です。

少々内容がアレですが頑張っていきたいと心より思っています。

では。

三月は西尾サンの新作が出る様子です。

するがデ○ル。

楽しみですねー。

ではここらで。

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