「人外」とは何も人以外のものを指す言葉ではない。倫理観の無い人間を価値観の恐ろしくずれた人間を「人外」と定義しても別にかまわないだろう。
《光ト》
大量殺戮(?)が行われた陸上兼競輪のグランドでは一人と男と一人の女が真っ直ぐに出入り口を見ていた。まるでその視線はカーテンから覗く若い女性の着替えシーンを凝視するような真剣さを含んでおり、だが、動機は全く違った。
そこにはいつの間にか――、
いつの間にか――、
一人の女の子がたたずんでいた。
その姿はこの状況において――異様、異常、意外、異質、異形。
様々な意味を孕むその少女は――彼らを見てにやりと笑った。そして、トコトコと擬音が付きそうな純粋無垢な歩き方で彼らの前まで行き、どうすればいいのか戸惑っている彼らの手を取り、元来た道――つまりは出入り口までの軌跡を紡ぐように歩きだした。
「ねぇキミ、これはついて行っていいものかね?」
「俺は幼女には興味ないから知らん」
彼はあからさまに適当でどうでもいい対応をした。明らかな差別だった。キャラが変わっていた。いや、この場合は普通なのだと安心するべきなのだろうか。もし、この状況で彼が「当然だ、なぜならこの世界は幼女のためにあるからな」なんて言えば、彼女は昇天しかねないだろう。どうやら、彼女も彼の心の内を察したらしく、一度ニコッと笑って女の子の足並みに歩幅をそろえた。
そうして、彼、彼女は女の子とともに扉をくぐった。ただし、その扉の向こうは暗いといった性質は存在していなかった。その逆、明るいという性質のみが存在していた。こんな事はまずあり得ない、この時初めて彼らは自らの置かれている状況を理解するのであった。
彼女がどれだけ異質であるということも―――――――。