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名の無い彼と名無しの彼女  作者: 水口 秋
第一章、皆様に安らぎを。
44/50

「餌」の時間だぁーー、お前らっ!!!

《スクエナイ魂》


『餌』に満足したらしいコカトリスは僕の言葉を聞くとそそくさと帰って行った。


まったくー、強情な奴だよ。可愛いぜっ。

っと、まだ話は終わって無かったなー。

手遅れだったけど、手は伸ばせたってところかな。


百%の融合率だったはずなのに、そうではなかった。

そうでなければこんな現象は起こり得ない。


「ナ……にっ!?おかしいよっ、こんなこと」


あーー、藍理は戸惑ってるな。

まぁしょうがないけれど……そこまで戸惑うものかい普通?

僕はもっと症状が酷かったけれどそこまでは取り乱さなかったヨ(笑)。

おっと、オチャラケ過ぎたら緊縛――緊迫感が無くなるねっ!!!

べ、別に決して緊縛って言葉が言いたかったから前の四行分を頭で考えたんじゃないんだからねっ!!


彼女はキッとこちらを睨み、

「何をしたっ!?」

と僕に聞く。

普通だね意外と。質問が。

「何も。けど、キミはコカトリスに『触れた』かい?」

ああ、自分でも意味の判らない質問をしていると自覚しているよ。

だけどコレは意味をなしている。

次元の違う存在に触れることは出来ない。


「触れていない。触れていないから――盗られたんだっ」

「盗ったなんて人聞きの良い事を言ってくれるなよ」


なんて言ってみる。

「コレを盗ったと言えるのだろうか、いや、言えないだろうっ」

「反語表現を使っても意味は一緒だっ!あんたは私の刀を盗った、そして何をしたっ?」

「なーにも、してないよ。なーんてね。これはキミの為を思っての行為なんだぜ。好意と厚意と更意のある行為なんて言葉遊びにしちゃあ弩三流だけど、現実的には大のお人よしのする行為なんだよー。おっと、こういってまた言っちゃった」

「ぐっ、馬鹿にしてっ――――「馬鹿になどしていない」」

「なら――「なら、なんだ。あのまま僕をぶち抜いて、細切れにしてどうする気だった?戻るあてでもあったのか?」―――ぐぅ」

僕は今までになく辛辣な言葉を吐きかける。

嘔吐するように。鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように。

どうでもいいけど鬱憤って平仮名で書くと《うっぷん》であって何か格好悪いよねっ。

関係無いけど。


「あー、話が逸れたね。今『キミの体に起きている現象』を――説明すればいいんだっけ?」

「そう、よ」

「簡単だ。キミは魂を注いだね―――病病に。魔剣と知っていながら―――注いだ。違うかい?」

「違うっ、私は彼女と同じ位置に立ち、彼女を救いたかっただけ」

「そして憑かしたのかい?魔剣を。魔剣の名を体にして、病病という輪状の道具を魔剣の名の元に刀状に仕上げたのかい?ソレを魂に憑かせて―――融かしたのかい?まるで刀鍛冶を行うように、否。刀鍛冶を行なって。自らの体内で」「何が『彼女と同じ位置に立ち、彼女を救いたかった《だけ》』だ。それだけでは済んでいないじゃあないか。彼女より―――より高い位置に立ってどうする」「こんな事は言いたくはないけど、王道過ぎるから。言わせてもらうよ。あまりに大きすぎる力は逆に波乱を生むよ。大きすぎるものに小さき者は助けられない。優しく握っても……《潰してしまう》」


「話を逸らすなっ」


「逸れていないよ。必要不可欠の説教入りの解説と思ってもらっていい。回折しながらの解説だけどね」

右往左往しながらの。

「そしてキミの魂で『うった』刀はキミの魂と完全に融合していた。僕はそう思っていた。けれど、そうではなかった。もしもの為を思って、手心を加えて、僕は『コカトリス』を放ったんだ」

「もし完全に融合していなかったら、出来ていなかったら」

「それを切り離すために」

「病気に侵された部分の魂を」

「それを切り離すために」

「コカトリスを放った」

「キミは触れたね、コカトリスに」

「――だから触れていないって」

「いーや、あのコカトリスは『魂』に触れることが出来る」

「っつっ!!」

「触れただろう?キミの魂に。コカトリスのあの状態は精神体――突きつめれば只の魂の状態」

「ならば次元が違っていても何であっても肉体は交差せずとも中身は交差するはずだよね」

「キミの魂で『うった』刀病は強奪出来たんだ。キミの魂に触れることが出来ないわけがないだろう?」

「そこで、だ。僕のコカトリスはキミの魂に病を写した。それこそ刀病のようにね」

「刀病の―――ように?」

「そ、眼には目を、剣には拳を、病には痾を」

「魂には魄を…か?」

「そうだね」

「そこでその病気と言うのが…」

「魂の侵蝕部分の石化、か?」

「ザッツライト、その通り。九十九点だね」

「…?」

「まだ、『それだけじゃあないよ』」

「ぐっ、ぐあぁああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!あ!ああ――――」

「『侵蝕部分の精製と再生』の作用が―――残りの一点だ」

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「ああ、礼はいらないから。僕の心遣いだと思ってくれていい。痛みは伴うけど元通りになるはずだよ」

「ああああああああああああああっ、……―――――――っくぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「ま、耐えてくれたまえ。キミは『両手』のみの石化でその程度だ。僕なんて『全身くまなく』だったんだ。痛すぎて痛すぎて一カ月は気が狂っていたね。キミも…そうならないように頑張って」


「ぐぅうううううううううがぁっ!!!!!!――――――――――っうつっ!!…――――待っがぁああああああああああああああああああ」


あー、痛いだろうな。それはもう。全ての痛みを味わっているだろうな。

僕もそうだった。


僕は視線を移す。そこにはぐったりと倒れているレヴェルイーターがいた。

大量に体液を垂れ流して倒れている。

―――死んだのか。哀れな奴。いたたまれないな。

「砲狂鳴――――――――ゥゥウァアアアア……――――――――――――」

「ルウ。アル。ヘルイ。暗宴(アンバンク・エット)…静まれ」

僕の唱えた魔法でレヴェルイーターの能力?らしきものをかき消す。

明らかに声帯からでる音ではなかった。

おそらく何らかの効果が付加してあるはずだ。

ならば、音を遮る魔法を。


どうやら身体は動かせないらしい。


おしまいだな。


ルウ。アル。ゾァド。

沈下(テサイド)…沈め、そして鎮め。鎮魂歌は『歌って』やらない」


「皆さんに――――安らぎを。あなたに――――永遠の安らぎを」


捧げよう。

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