「生殺与奪」――最低だ。
《暗迷ノ心》
何を言っているの?
どうしてそんな目で私を見る?
その背後からうねっているモノは何?
まるで別次元どうしの会話だった。いや、会話として成立していない。けれど、私からの会話は全く無視。相手にしないという表現でもすこし足りないほどに。
彼女の眼は――私を見ていなかった。
彼女の眼は――――別のものを見ていた。
彼女の眼は――――――酷く濁って淀んでいた。
彼女の眼は――――――――人の眼とは思えなかった。
計り知れない、直接対峙してしまうと飲み込まれ、内から食い破られるほどの殺気――怒気をはらむ視線。
まさに―――死線。
視線――死線――私選――――死を結ぶ線。
足が、指先が、下顎が、眼球が、皮膚が、血液が、白血球が、赤血球が、魂が、脳が、筋肉が、膝が、肘が、大腿骨が、五臓六腑が、奥歯が、舌が、喉が、息が、
――――震える。
いや、実際には震えない。だが、『震えない』のに『震える』と誤認させてしまうほどに強烈――なものに私は脅えている。
まさに、―――脅怖。
『強』いられたのではない。
『脅』えるのだ。私が、勝手に、自分勝手に、唯の視線で、自己的に、わざわざ、文字道理の意味で恐縮する。
もはや『以前の彼女ではなかった』。
私が知っている彼女はもっと普通だった。
人間じゃなくて仏人。
普通じゃなくて異常。
人間視点では異常。
仏人視点では普通。
これが彼女の私による認識だった。
だが今はどうだ。
仏人の私から見ても異常。
異常を突破して異質。
異質を突破してもはや壊滅している。
いや、瓦解している。
まるで、私の持つ『病病』という名の『魔剣』のように使用するだけで普遍を壊す。
それと同義。
それと同等。
――それと等価。
おそらく彼女は私が空間を、普遍を瓦解させたように、私を『瓦解』させるのだろう。
弱肉強食。
違う。
言葉の意識が弱い。
もっと、『太刀打ちできるわけがない言葉』を。
そうだ、
まさに『蛇に睨まれた蛙』。
いや、すこしニュアンスが違う。
もっとシャープに、シンプルに。
そして、私の脳裏には案外あっさりと一つの言葉が出現した。
それは私の生体本能や野性や本質が打ち出した―――至極当然の言葉だ。
《生殺与奪》。
確信して革新が起きて核心を私は掴んだ。
だから、太刀打ちをするために、いや、そんなことももはや私はどうでもいいのだろう。
どうにかしてこの状況を脱さなければ。
その一心で喋る。
「仏ノ組織 代物支部 部長 赤皿藍理 コードΙ(イオタ)、覚えていないの、印人のくせに。どうしてあの時こなかったの?」
違う。
違うっ―――――
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