表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名の無い彼と名無しの彼女  作者: 水口 秋
第一章、皆様に安らぎを。
34/50

「生殺与奪」――最低だ。

《暗迷ノ心》


何を言っているの?

どうしてそんな目で私を見る?

その背後からうねっているモノは何?


まるで別次元どうしの会話だった。いや、会話として成立していない。けれど、私からの会話は全く無視。相手にしないという表現でもすこし足りないほどに。

彼女の眼は――私を見ていなかった。

彼女の眼は――――別のものを見ていた。

彼女の眼は――――――酷く濁って淀んでいた。

彼女の眼は――――――――人の眼とは思えなかった。


計り知れない、直接対峙してしまうと飲み込まれ、内から食い破られるほどの殺気――怒気をはらむ視線。

まさに―――死線。

視線――死線――私選――――死を結ぶ線。

足が、指先が、下顎が、眼球が、皮膚が、血液が、白血球が、赤血球が、魂が、脳が、筋肉が、膝が、肘が、大腿骨が、五臓六腑が、奥歯が、舌が、喉が、息が、


――――震える。


いや、実際には震えない。だが、『震えない』のに『震える』と誤認させてしまうほどに強烈――なものに私は脅えている。


まさに、―――脅怖。


『強』いられたのではない。


『脅』えるのだ。私が、勝手に、自分勝手に、唯の視線で、自己的に、わざわざ、文字道理の意味で恐縮する。


もはや『以前の彼女ではなかった』。


私が知っている彼女はもっと普通だった。

人間じゃなくて仏人。

普通じゃなくて異常。

人間視点では異常。

仏人視点では普通。

これが彼女の私による認識だった。


だが今はどうだ。


仏人の私から見ても異常。

異常を突破して異質。

異質を突破してもはや壊滅している。

いや、瓦解している。

まるで、私の持つ『病病』という名の『魔剣』のように使用するだけで普遍を壊す。

それと同義。

それと同等。


――それと等価。


おそらく彼女は私が空間を、普遍を瓦解させたように、私を『瓦解』させるのだろう。


弱肉強食。


違う。


言葉の意識が弱い。


もっと、『太刀打ちできるわけがない言葉』を。


そうだ、


まさに『蛇に睨まれた蛙』。


いや、すこしニュアンスが違う。


もっとシャープに、シンプルに。


そして、私の脳裏には案外あっさりと一つの言葉が出現した。


それは私の生体本能や野性や本質が打ち出した―――至極当然の言葉だ。


《生殺与奪》。


確信して革新が起きて核心を私は掴んだ。


だから、太刀打ちをするために、いや、そんなことももはや私はどうでもいいのだろう。


どうにかしてこの状況を脱さなければ。


その一心で喋る。


「仏ノ組織 代物支部 部長 赤皿藍理 コードΙ(イオタ)、覚えていないの、印人(しるしびと)のくせに。どうしてあの時こなかったの?」


違う。


違うっ―――――


to be contenued

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ