「曖昧」模糊って何回も言ってると『アイマ』『イモコ』っていう名前にならない?
《現実》
私はクロエ=A=シャヴァリエ。
ごく普通の家庭に生まれ、
普通に育って、勉強して、恋をして、運動をして、魔法を使って、
ただ、普通に生きている。
私の周りなんかで人は一度も死んだことが無いし、動物にいたっても死んだのを
見たことない。
普通で、幸せな生活
そう、
異常で、死逢わせな生活―とはかけ離れている人生の境遇の境界線。
凱旋するものは福。
倒壊するものは不幸。
絶倒の夢。
嗚呼、私はコレを望んでいた。
稲葉の白兎のような淡く弱く儚い夢を。
『傍観』を決め込む事しか私には出来ない。
『儚』く、それでいて濃霧のような『夢』だ。
悪夢とも言えなくはない。
纏わりついてくる。
自らが望んだことが悪夢だなど、滑稽なことだ。
…アレ?私は世界を壊したはずなのに、どうして夢なんか視てあるのだろう。
世界という概念に、別の世界の本質をぶつけて壊したはずなのに、ドウシテ?
"死んだ"のではなく"壊れた"のだ。
"壊れて"それだから"何も残らない"
世界の理を度外視して。
って、え。
おかしいって。
おかしいって。
可笑しいって、可笑しいって。
オカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイ――――――。
なんで、自分は、自分の概念は、自分の精神は、自分の――――――――――――――は、ここにあるのだろう。
なぜ意識できるのだろう。
失われたはずの肉体が、魔眼が、私に在る。
どうして。
早々に焦燥感に駆られる。
――――ドクンっ。
これはッ!?
――――――ドクンっ。
私の見ている世界が歪曲する。
私の思考が雑踏される。
『魔眼の能力』――――しか考えられない、
恢這の魔眼。
私は自分の肉体がここにあると感じている。
確かに。確実に。
ならば、これしか考えられない。
クソっ、
組み替えたはずのシステムが、瞬時刹那に組み直されたされた。
魔眼の能力で。
私は世界と世界の概念をぶつけ、壊す事が出来なかった。
寸前で、届かなかった。
この眼は、私の存在のみを世界から消した。
それは只の先送りだ。
私のような存在を生み出す先送り。
私は私のような呪われた存在を生み出すこの世界を、壊すためだった。
なのに、この眼は、世界と人々から私の記憶と存在の身を奪い、その世界は私の抜けた穴に私と酷似した概念を持つ人間を後釜に入れた。
そして、私の今の状況。
夢……だと思う。
私はシャボン玉のような光沢があり、光を七色に屈折させるような新円の膜に覆われている。
夢の世界。
いや、私がいた世界を別の視点から視ているのだ。
この眼で。
恢這の魔眼の能力。
「世界の透可視」
それに、この状況。
私は――――自分の眼に『囚われた』。
「自己囚々機能」
私は。
私の目的は。
まだ達成されていない。
まだ、登場人物は他にいる。
この世界ではない―――違うところに。
さぁ、まずは時間をかけなければ。
自分の、恢這の魔眼の能力を、
読み解かなければ。
そのための時間と、もうひとつ。
恢這の魔眼のもう一つの名を私は今、ここに示そう。
『采配されし蒙昧者の生きし擬眼』――――
――――――――――――――――――『レヴェルイーター』
と。