「世間一般」ってただの人間の意見の平均値だよね、いまいち私には理解できない。
《分誠の網膜》
『分誠の網膜』
―――魔眼の遺物として扱われる存在。『網膜・瞳孔・水晶体・角膜・硝子体』の五つの部位に分けられる。五つで本来一つの魔眼。
魔眼としての能力を五分割した存在共。
目の構造は説明するとこうなる。
光は角膜・瞳孔・水晶体を通り硝子体を経て網膜を通過して人間の脳に認識される。
最終部位の網膜、これを彼女は所有している。
『分誠の網膜』
世間一般的には―――――魔眼は存在すると公表されている。
だが、分割された魔眼の部位は違う。
『魔眼以上の危険な存在として黙秘されている』
魔眼は生まれながらに持つ先天性な代物。
しかし―――一方、
部位は生まれながらには持てず後天性な代物。
危険性が違う。認識が違う。全く―――違う。
『喰い殺される』可能性があるのだ。部位には。
適合しない=死。
絶対的な神の方程式。しかし、部位の人間への移植は―――机上の空論である。
つまり、成功した―――なんて事例は裏にも表にも存在しないのだ。
―――存在も――――はっきりとは分からず、存在している。
そんな―――レヴェルの。
だから、一般の魔術師・魔法使いや、もぐりや裏の魔術師・魔法使いの中でも情報は黙秘、黙殺、滅殺、絶滅させられている。
ソレを、ルールフォータスは所有している。
至極当然のように自らの両目に移植している。
恐らく―――世界の破壊の為の鍵だったのだろう。
『分誠の網膜』には一つの力が宿っているといわれている。
《所有者の持つ魔力の色を赤に変える》だ。
たったこれだけ。だが、深い所にはもっと別の意味が隠されている。
どうやって赤に魔力を変えるのか。
簡単だ。安易に想像できる。
所有者の肉体を、魔力の変換機として使用する。
つまりは、所有者の魔力の生成には所有者の肉体の消費が=《イコール》で確定している。
コレを、ルールフォータスは利用した。
利用して―――肉体を捨てて―――魂だけになり――――切り離した。
三つに。
そして『赤』の魔力。
ルールフォータスは魔力を使いこなせていなかった。
神聖な――――赤。
聖域を構築するほどの純度の高い――――赤色の魔力。
ソレを彼女は聖域を創るために使い――――いや、違う。
そんなわけはない。
もっと初めにした事があったはずだ。
所詮、聖域は結果の後のお話でしかない。
本来の使用目的は―――――『世界の破壊』
ただ、それだけ。
とても、悪。
とっても、不純。
『活かせるわけがない』『能力を限界まで上昇させれるわけがない』
そんなもの、『分誠の網膜』が許可するわけがない。
矛盾―――パラドックス。
初めから―――、無理だったのだ。
だが、彼女の三度の世界の破壊は―――成功した。
なぜ。
全ての力を出さずしても、それほどの出力は出る。
それだけだ。
魔眼の部位の力。
だから、クレアには届かない。
クレアは、
クレアの目的は世界の破壊。
彼女は語る。
蝕まれ、徐々に浸食されていく彼女に、
語る。
その赤の瞳を携えて。