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名の無い彼と名無しの彼女  作者: 水口 秋
第一章、皆様に安らぎを。
24/50

「一時停止」は名目上の人生の完全停止。止まればそこで袋小路の行き止まり。

《外伝・Ⅱ》


私は全てを「悪」を否定した日、


在る場所を訪れていた。


それは遠くまで見通せる瑞々しい緑が群生する場所だった。


そこで私はあるものを見た。


世界が彼によって構築される光景だった。


私は、私は、


ここで全てを――総てを――凡てを、


××された。


「善」も「大義」否定した「悪」を、


「×」によって××された。


「×」によって体全体心全体を蹂躙された。


思わず激痛が走った。


痛みに悶える。


鋭痛・鈍痛・激痛――――


痛覚を消失してしまう程の多種の痛みを感じた。


それと同時に、心が、


感じてしまった。


心が感動してしまった。


世界を構築していたのは「×」であり、


私には「×」が存在しなかった。


不覚だった。


世界の創造を見て、ソレは「×」に満ち満ちていて、


「×」がここまで純粋な存在で、


所詮――雑念の籠った「悪」や「善」や「大義」は


「×」の前では御飯事なのだと。


食物連鎖の四角錘でたとえると、これらは底辺なのだと。


「×」は頂点に降臨して君臨して幾らでも再臨するものだと。


私は不覚にも胸を打たれた。


涙が湯っ繰ると頬をはかなく撫でる。


涙腺が崩壊する。


嗚咽が喉を通って零れる。


世界の想像が、創造が、


こんなにも、こんなにも、――――――、


そこで私は自分自身が彼に「嫉妬」している事に、気付いた。


「悪」を××されたにも関わらず、


「大義」「善」を凌駕し蹂躙した「悪」を××して徹底的に凌駕し蹂躙した「×」を目の前にして、


私の中に芽生えていた感情は「嫉妬」だった。


――私は絶叫した。


――私は見つめた。


――私は見据えた。


――私は渇望した。


――私は懇願した。


――私は「×」を理解しようとした。


なので私はここに一つの誓いを立てた。


コレは「悪」などから発生したモノではない。


私の中の純粋な感情だ。


私は彼と一緒に二人を見た。


彼女と彼だ。


二人も当然に「×」に満ち溢れていた。


彼らを見て、私は決めた。


私の中に在る「×」で「×」を××すると。


決めた。


コレは誓い。


残酷なまでの「×」で――彼らを××する。


コレは領域。


誓う――領域。


絶対に、絶望に、極限に、局地的に。


だから今は身を引くことにする。


優位性を得るために、獲得するために、


今は引く。


新しい世界に踏み込むのはそれからだ。


今は――まだ、


自分の世界を見て、自分と向き合う事にする。


「悪」は――捨てることにする。


「嫉妬」は私の中に芽生えた新しい感情だ。


だから「捨てる」


彼らと同じ立ち位置(ステージ)に立つために、


私の存在を刻み込むために、


今は―――。


私は涙の痕を手の甲で消し去り、


踵を返して元来た道をたどる。


その時、自分でも気付いていた。


口元に。


××っていた。


私は「七つの悪」を捨て去った。


焼却した。


滅却した。


だが「八つ目の悪」は捨て去れなかったようだ。


これだけは、これだけは。


心が躍る。


躍動。


一時停止。



コレは私の記録だ。


世界の始まりの記録。


今はもう完全に失われてしまった記録。


忘却の彼方だ。


私の子孫たちよ。


この記録を受け継ぐ必要はありません。


もし受け継いでも理解する必要はありません。


これは断絶されたモノ。


だから、自らで新たな記録を作りなさい。


私のように。


私を超えるように。


ああ、私が元いた世界は何なんだって。


それは世界が始まる前の世界だよ。


この世界は断絶された記録の中の断絶された記録だ。


気にするな。


ああ、そう言えば私は一つの事実を知った。


彼は彼は彼女は――世界を崩すために生まれてきたらしいよ。


中心ではなく外郭を――――。


物事の中心ではなく外郭を。


正常の外郭を崩して―――異常となす。


何千年後の世界には異常がはびこっているのかな。


分からないけれど――楽しそうだ。


ここでも私はやはり××っていた。

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