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名の無い彼と名無しの彼女  作者: 水口 秋
第一章、皆様に安らぎを。
22/50

「嫉妬」はいつも私の中に在る。私の人生で一人、絶対に敵わないと思った女の子がいる。私は―――

(ココロ)ノ中》


続きだ。

エピローグの続き。

「雷と成す。紺碧の紅電を我が芯に宿し、打ち放つっ―――紫針(ライロッド)っ!!!」

「――無駄。射砲レイン

左の手のひらから放出されたエグイほど枝分かれした紫電が私を襲う。だが、無駄。

紫電の放出の根元となる左腕を――切り落とす。

支配(レイン)による私に訪れた変化は、この部分にも表れた。

曲げる事ができたのだ。

2、3箇所根元を断ち切るより早く私を貫こうとする紫電があった。

ソレらを壊す。

曲げて―――壊す。

そして、その先には―――腕の付け根。

血が、血飛沫が上がる。

ピシャっ

頬を血が撫でる。

ベロリ。

頬に付着した血を舌で舐め、唾液と混ぜて咀嚼する。

味わう。追放された魔術師、グレイス=アルスロンの体液を。

砂塵から出てきたくせに、生々しい鉄分を含んだ血の味だった。

「ぐぅうううううっ!!!、『鬼と成す、禰蝋の角を右腕に宿す。人遮鬼化(モータルオフ)』」

「―――断魔成零(リペル)―――射砲(レイン)、ふんッ、終わりー。支配(レイン)

何も、何も楽しくはないのだろう。

ただの殺戮劇。

所詮は舞台での劇場での出来事と同じ。

おままごとと何ら変わりはない。

支配した。

左肩から噴水のように吹き出る有限の血をやすやすと止め、なにより地面に零れ落ちたおびただしい量の血と、それらの栓となっていた腕を元のようにくっつけたのだ。

つまり、傷口まで掌握した。

もはや絶対。

聖域の主とも言える。

だが、くっつけても意味はない。

魔人化していたグレイスを断魔成零(リペル)で断魔し、

射砲(レイン)で左胸を―――――貫いた。

そして、支配。

「『どうしてだっ!、どうしてその魔眼を所有しているっ』」

背後からの聞とりにくい声は、苦痛や敗北を含んでいるようだった。

「人間を、放棄したから。まぁ、魂の具現化に成功したってところだねー。自らを支配することにより、徐々に自分を知り、魂の許容量を視て、今自分に必要なモノを創り上げたって感じ。

それがたまたまこの 眼 だったってだけ。所詮は魔眼だよー。こんなもの、


まだまだ


じゃん」

「『ふ、ふざけるなよっ、我でも構築することの出来なかった、

   魔眼の枠を超越している魔眼を、まだまだとぬかすのか。

 ソレを創れなかったからここを創って世界を壊した。

 ソレを創れなかったから異端者として扱われた。

 ソレを創るどころか、欠片も創造法を見いだせなかったから今の我がある。


 なのに、ソレを、


 所詮と言うのかぁっ!!!

  』」

「っははっ、教えてあげるー。

この魔眼に、世界を壊す力なんて、


  『ない』

よ。残念だったね。異端者の残滓さん」

クレアは少し前のやり取りをパロディーして繰り返す。

彼女は――加速している。

彼女の存在は――加速している。

だが、ルールフォータスのは――固定されている。

彼女の存在は――固定している。

孤立しているといってもいい。

「『あ、ありえないぃ。そんな……、


』」

彼女――ルールフォータスの打ちひしがれたさまは見るに堪えないものだったと、私は思う。

私は、辺りを見渡し、石板を見つける。

戦いの余波があったというのに、その石板は―――出現した場所にあった。

今なら―――分かる。

「これは…閉殻構造であるこの世界と開放的のどこかの世界をつなく為の『回路』というわけか」

手をかざすと、石板が反応し、多数の光線が石板の輪郭を撫でるように走った。

「ふぅーん、なるほどー。だからアナタはそういう『形状』に成らなきゃいけなかった訳ね」

「だから世界を破壊するために魂を分断しなければいけなかった」

「魂は基本的に三つに分断できると言われている」

「概念」

「中核」

そして、

「性質」

「コレを世界を三度破壊する時に『使った』」

「そして、その成れの果てが―――今」

「違うね。この仮説は違う」

「この三段階を経て――今があるのか……」

「そして、本来なら『次』があった」

「『 !?』」

理解、する。

その理解力は最早人間の比ではなかった。

いや、それは当然だろう。何故ならば、彼女はもう、

人間ではないからだ。


残滓の彼女に残された選択は――、一択だけだった。


ルールフォータスの心中は一つの感情に支配――汚濁していた。


嫉妬(ジェラシー)


彼女はそのものだった。


だから、このような馬鹿な事をしてしまったのだろう。


代償を払い、人間から追放された存在に。


代償を払えず、代理品を代償とし、人間という括りから異端者という括りへ追放された存在が。


反機を翻したから、


いけなかったのだ。


「『深淵なる闇の左手《ダァクネス オブ シャドゥ》ぅぅうううううううううううっ!!!!!!!!』」


この世を、世界の根幹を破壊した魔術の、魔片の一欠片だった。


闇の魔術(ダーク マジック)


この魔法は特殊な系統に属するものだった。


だが、所詮は『人間が扱う事の出来る系統に属する魔法』だった。


簡単に、この程度の足掻きは崩れ去る。


純粋なる破壊によって。


「『侵入禁止(キープ アウト)』」


主要人物とモブキャラクターの能力の差は歴然たるもの――である。

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