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名の無い彼と名無しの彼女  作者: 水口 秋
第一章、皆様に安らぎを。
17/50

「約束」は口にするととても良い響きのする台詞だ。…使う人間は大体偽善者だが。

《約束》


「約束は破れるから約束なんだよ。破っていいから約束。破ることができるから約束。破ることができないのが契約。敵同士なんだし、この程度は当たり前じゃないか。それに、さっきから勘違いしているようだが、お前だけが――――


   『化け物(レヴェルイーター)


じゃないんだぜ」


『ぬぁっ、なにぃ……そんな筈はない。おにーちゃんの魂の性質(ネイチャー)はまぎれもなく崇高(ピュアー)だった』

両手を失ってだらしなく断面から体液を垂れ流して呆然と彼を見ている化け物は言う。

「それが俺の化け物(レヴェルイーター)としての特殊――いや、特異――否、異質能力。感覚退避(マインドエスケイプ)だ。俺は第六天(06th)としてこの世に誕生したモノ。同期(フォーマット)なんか必要ない。誕生した時から完遂していた。生物としての能力はもう失ったよ。俺は生物という枠からは追放された。全九天(シングル)からも俺は放棄されてしまった。それほどまでに俺は強い。


 (ツバサ)ツキのたった一度だけ同期(フォーマット)した


だけの化け物程度には


                  荷が重い。


俺を殺そうとなど。オコガマシイダケダ」

刹那だった。彼が化け物と成ったのは。化け物と言ってもあまり変化は見受けられない。だが一つ、その全貌が明らかになる部分がある。それは肌。肌の色だ。

すこし日に焼けた肌色より少し焦げた素肌が、真っ白の絵具のような瑞々しい…よりは、ドロリとした白。触れたら最後、抜けなくなりそうな白。底なしの白。

眼前の化け物とは格が違う。価値が違う。存在が、違う。

嫌が応でも感じてしまう。感じさせられる。

圧倒的な存在感。

そして、その中で一つだけ、青色の二つの瞳が輝いていた。

白濁した白とは対極の、純粋に芯まで澄んでいる、見れば引き込まれそうなほどの魅力的な青。

「これが、レヴェルイーター=シックスとしての姿だ」

そう言って彼――シックスは、イヤらしく笑った。

『あ、アリエナイ。アリエルわけがない。全九天(シングル)(シックス)がここにいるわけが、アリエナイ。いや、まず全九天(シングル)の容量でこの空間に入れるわけがないっ。ここが崩壊するっ。なら、……おにーちゃんは、一体         誰?』

怯える自らを認識していない様子のレヴェルイーターが、身体全身で恐怖を表現しつつも、後ずさりつつも、聞く。

「だから、全九天の第六天、レヴェルイーター=シックスだって。まぁ、堕とされたから存在要領はかなり減ってるけどな」

シックスは自分のヘドロのような白の手をかざしながら言う。

『そ、それが本当なら―――』「ムリだ。お前じゃ俺は喰らえない。閃々(ポッド)

前触れもなく、シックスは口にする。

そして蛇に睨まれた蛙の化け物の(ツバサ)が遠隔でもげる。シックスとは数メートル間が開いている。なのに、もげた。

まるで、今顔の前にかざしている手で力いっぱい羽の動かない方向へもいだように、グロイ音を立てながら羽を奪われる。化け物は、もはや再起不能―――戦意喪失していた。

化け物の思考にはもうこの言葉(フレーズ)しかないようだった。

          逃げなければ。

と。

もう終わりだった。

化け物は両手と羽を失って、その傷口全てからは白い体液が絶えず痛々しく流れている。

羽は根元からメシリと折れ、地面にだらりと垂れている。

のにもかかわらず、もう痛覚さえ麻痺してしまったかのようで、いや、麻痺しているのだろう。

シックスの存在。決してこのレヴェルイーターは弱い方ではないのだろう。だが、シックスの出現でここまで弱体化――するのは、シックスに対する認識。すなわち恐怖。の現れだろう。

『ぎゃぁあああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!1ゆ、ユルシテクダサイユルシテクダサイユルシテクダサイィイイッ!!!!!に、逃げナキャ、ニゲナケレバァッ!!』

この瞬間、この空間に異変が生じた。

コレはシックスがか、それとも化け物がしたのか―――、

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