「禁」でいちばん始めに男が想像するのは18禁だと私は思う。
《魔法》
クレアの前方に砂塵の竜巻が現れ、ビュウビュウと音を立てて二つ直立している。
色は黄色と緑色。
純色の原色の黄色。
そしてその分岐の緑色。
そして砂塵は掻き消える。
音もなく、姿をなくす。
なくして、現れる。
二人の黒色の衣服に身を包んだ人間が。
右側の人間は見たことがある。
魔法時駆のフェイ。
左側の人間は見たことがない。
ただ、黒の短髪で耳たぶに付いている錆びてところどころ欠いている鎖、
どこかで…。
『「あら、颯爽登場ねぇ。初っ端から軽快に飛ばしてるわねぇ。
彼らがこの聖域の守護者なのぉ。
鬼強いから、覚悟してね。
多分……あなたはここで死ぬから」』
ルールフォータスが言葉を言い切ると同時に戦いの火蓋が落とされる。
無詠唱の大魔法。
魔法時駆のフェイによる魔法。
何が起こったか分からず、流れに思わず身を任せてしまう。
右側からの打撃。
眼球が視界を放棄した。
周りがぶれて地面に無様に転がったクレア。
圧倒的。
フェイしか動いていない。まだ。
しかも、一つの魔法のみ。
知識としては存在する。《ファスリー》という魔法。
効果は……不明。
身体を即座に起こし、次の攻撃に備えるクレア。
先ほどは右肩に打撃をくらったらしく、右肩をかばうような動作が見受けられる。
二ヤァリ。
口元が歪につりあがる。
クレアだ。
目元は無表情。
口元だけが。
「私はー、滑空魔法はドベだよッ!だけど、《レイン》の魔法は学校一、いや、世界一だッ。
射砲の魔法。そして、《レイン》支配の魔法もッ!」
圧倒的。
圧巻。
圧勝。
何も、
出来ない。
何も、
許さなかった。
支配
した
彼らの全てを。
魔禁法―――レイン。
それは支配の魔法。魔禁法はいわゆる特別個体にのみ許された魔法。
だれも抗えない。対をなす魔法も存在しない。
禁じられた魔法。
血、性質、肉体、
三拍子そろって獲得される。
そして、クレアの魔禁法は支配だった。
完全なる支配。
完膚無き支配。
欲望なる支配。
当然なる支配。
秩序なき支配。
死することは許可シナイ。
生きることは許可スル。
ソレハ全テ彼女ノ手。
彼女ノ為ニ生キロ。
彼女以外ハ無視。
欲望ノママデ。
欲望ニヨル。
完全ナル。
支配ダ。
踊レ。
屑ドモ。
人形ドモ。
彼女ノ為ニ。
死ヲ恐レルナ。
彼女ノシモベ達。
混沌の世を作り出そうとした彼女にはあてはまりすぎる魔法。
肉体を蝕む悪意、
切り札すぎて、
切り札になっている。
もはや切り札でもぬるい。
生ぬるい。
体現するなら《神》。
彼らの眼球は焦点が合っていない。
小刻みに身体が震えている。
抗っているのだ。
常人の精神で。
常人程度の精神で。
人形にされる程度の精神で。
屑どもがぁッ!
彼女は魔法を使うと性格が変わる。
特に魔禁法は。
性格が変わる。
いや、それ用の性格なのか。
歯をガタガタと打ち鳴らしてうっるさいよッ!
彼らは脅えている。
クレアと、未確認の未知の魔法に。
クレアは手を突き出す。
石板では無く、フェイに向けて。
魔法、「射砲ッ!!!」、発動。
手のひらに直径12cm程の魔法陣が現れる。
色は白。
白銀。とも見える。
陣の中央に光量が集中し、つまりは魔力が塊となり、直径三センチほどの何処までも伸びそうな勢いで魔力の円柱が瞬射される。
刹那、
クレアは手を横に引き、
刹那、
フェイの首が… 飛んだ。
文字通り、 飛んだ。
処刑のようだった。
その光景は。
磔にされて身動き一つ取れないものを、
一閃して殺す。
「次ぃッ!!―――――ッ!?」「いないッ!?」
彼女はレインを、レインを解いていない。
ならば、
その束縛を一人で破ったということになる。
不可能だ。
不可、能だ。
不、可能だ。
「どこへッ!?」
『魁と成す、浮上の神を心に宿す。心罰獣化』
「呪文伐採!!!浄化砲!!!」
波動。波状の波動。
身体が吹っ飛ぶ。ぶっ飛ぶ。
ドォン!!!!
打ちつけられる。
右肩の付け根に痛みが走る。
「……ッく!………ッ!?」
『「言ったでしょうぉ?
死ぬって
。 」』
ルールフォータスは不敵に笑う。
ふふふっ。