第99話 1537年 7歳 細川氏綱との戦いだぞ
前回、細川晴元に
「偽装撤退してください」とお願いしました。
つまり――
「囮役よろしくお願いします」。
さて、
ちゃんと来てくれるのでしょうか?
俺達も戦の準備をする。
まず赤目を飛ばす。
三姉妹にも働いてもらう。
軍馬四百頭はすぐに集まった。
残り百頭は時間がかかるようだ。
軍馬四百頭で出発する。
行軍しながら軍略会議を行う。
今回は親衛隊五十人も、
十人だけを残し、
四十人を軽騎兵か重装歩兵に組み込む。
親衛隊は島田を船から連れてきた。
船の護衛百名も連れて来る。
船の護衛の手配は小西に任せた。
今回のカギは軽騎兵になる。
柿崎、志村大吾、雷蔵、風馬、水斗を
軽騎兵とする。
工兵予定の高井と浜本も
重装歩兵に組み込む。
浜本
『工兵をやらなくていいんだ〜』
俺
「いや、その内工兵で
たっぷり活躍して貰うぞ」
戦場予定地に着く。
我々は少し離れた所に陣取り、側面攻撃に備える。
赤目から報告を受ける。
細川氏綱の軍は傭兵や金で集めた雑兵が大半だ。
計画は――
十五時(未の刻)。
細川晴元の軍五百人が
細川氏綱の軍に先制攻撃を仕掛け、
偽装撤退。
俺達が側面を突く作戦だ。
<細川春元との約束>
十六時。
まだ来ない。
赤目から連絡が来る。
「細川晴元の軍が動かず」
まだ来ない。
イライラしながら待つ。
その時、
細川氏綱の軍がこちらの存在に気付く。
何しろ敵は二千人。
こちらは千人。
二倍の人数。
正直――大ピンチだ。
細川晴元が来ない。
こちらの作戦は実行出来ない。
しかも、いつものメンバーはおらず片手落ち。
――ならば。
作戦変更だ。
<即席陣形>
重装歩兵で横陣をひく。
前面二列、六百人。
重装歩兵の後ろに、
軽騎兵四百人を紡錘陣形にする。
上から見ると――
〒 の形だ。
敵が近づいて来てくれるというので、
こちらは動かず。
皆に作戦を伝達。
俺と祖父は親衛隊十名に守られる。
( 敵 )
────────────────────
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
(重装歩兵 前面二列・600人)
△
△△△
△△△△△
(軽騎兵 紡錘陣形・400騎)
◎
(俺と祖父・親衛隊10名)
戦闘開始だ。
敵がこちらの射程内に入った。
重装歩兵の前列は、
いつもはリスク回避の為に盾を構えさせるが、
今日は半弓を撃たせる。
かなりリスクはあるが、
緊急時だ。しょうがない。
味方は横陣。
敵も横陣である。
味方は全て半弓を装備している。
相手の横陣の中央を全員で狙う。
次第に相手横陣の真ん中が空いてくる。
真ん中だけに弓矢がくれば、
誰でも左右に逃げる。
( 敵 ) ( 敵 )
弓を敵中央に集中
敵の隊列の真ん中が空く
↑弓矢
↑ ↑
↑ ↑
────────────────────
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
(重装歩兵 前面二列・600人)
△
△△△
△△△△△
(軽騎兵 紡錘陣形・400騎)
◎
(俺と祖父・親衛隊10名)
重装歩兵に、
軽騎兵が通る為、
横陣の真ん中を開けさせる。
軽騎兵の敵中央への突撃である。
最前列は雷蔵、風馬、水斗だ。
四百名の軽騎兵とは、
普段は重装歩兵の者達。
通常訓練の乗馬をこなしただけで、
騎馬での実戦経験がない。
よって軽騎兵の未経験を補う為、
一番後ろに柿崎と志村を付け、
皆に指示してもらう。
弓矢で空けた敵中央に軽騎兵が突撃。
△
(敵) △△△ ( 敵 )
△△△△△
軽騎兵
■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■
■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■
(重装歩兵)
◎
(俺と祖父・親衛隊10名)
幸い敵は寄せ集めの雑兵だった。
突撃する騎馬攻撃に、
逃げ一択となってくれた。
俺は重装歩兵全員に
半弓を背中のフックに仕舞わせ、
盾と片手十字槍を用意させる。
一分後、
重装歩兵を突撃させる。
軽騎兵は敵陣中央を切り開いた。
軽騎兵の背面展開だ。
不慣れでもたついたが、
柿崎と志村が指示を出し、
陣を立て直していく。
やがて軽騎兵が開けた穴に
重装歩兵が入る。
敵を二つに分断。
各個撃破。
包囲殲滅戦の完成である。
敵は重装歩兵の装甲の厚さに恐怖し、
戦意を喪失している。
敵を徹底的に削る。
敵の戦意は逃げ一色になる。
各個撃破 包囲殲滅戦完成
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
■ ( 敵 )■ ■ ( 敵 )■
■ ■ ■ ■■ ■ ■ ■ ■ ■■ ■
◎
(俺と祖父・親衛隊10名)
それでも敵は二倍。
まだ千以上残っている。
包囲の一部を開け、
追撃戦に移る。
俺
『細川氏綱を逃がすな』
赤目にも指示を出す。
一段落ついて祖父を見る。
祖父
『龍義。
お前は儂より間違いなく戦が上手い。
これからの越後の戦は、
龍義が総指揮を取れ』
俺
『わかりました。お任せください』
守役安田がこの光景を眺め、
静かに感動していた。
細川氏綱は城へ逃げる――
そう読んで、
柿崎と志村の軽騎兵五十人を向かわせていた。
だが違った。
細川氏綱は堺港へ逃げ、
船で脱出しようとした所を
三姉妹が捕まえた。
厳重に縛られ、
目隠し、猿轡。
芋虫のような細川氏綱。
三姉妹が
エッホ、エッホと
俺の前まで運んで来る。
三姉妹は褒めて欲しそうな顔をする。
俺
『お前達、良くやったぞ!
論功行賞を楽しみにしてろ』
三姉妹
『若様、有難うございます!』
俺が去った後。
三女 菫
『論功行賞って何?』
次女 楓
『ばっかねー。
お金貰える場所に決まってンじゃん』
三女 菫
『いくら貰えるの?』
次女 楓
『いくらって、いっぱいよー』
三女 菫
『さてはお姉ちゃん知らないんでしょー
知ったかぶりでしょーカッコ悪ー』
アホな会話とは裏腹に、
敵二千人はほぼ全滅させた。
しかしコチラも、
軽騎兵を中心に二百人の死傷者を出してしまった。
強引な作戦だったから
世間的には少ない方だが、
我々から見るとかなり多い。
大損害だ。
俺達は死傷者を小西の所へ送り、
戦後処理を雷蔵に任せて
細川晴元邸へ行く。
芋虫のようになった細川氏綱を
手土産にする。
もちろん、
重装歩兵と軽騎兵も全員連れていく。
細川晴元邸に着いた。
細川晴元が外で俺達を出迎えた。
俺が文句を言う前に――
細川晴元
『よくぞやってくれた。
それが細川氏綱だな。預かろう。
作戦を実行出来なくて申し訳なかった。
儂は行こうとしたのだが、
三好に止められたんじゃ。
詫びと言っては何だが、
長尾家が蝦夷地の守護大名に決定だ。
後、長尾為景殿は従四位下が与えられる。
めでたい、めでたい!』
俺
『晴元様。
三好長慶は晴元様にとって災いになりますよ。
私が世間で何と呼ばれているか、
ご存じでしょ』
細川晴元は顔色が青くなり、
細川晴元
『神の子の予言か。
確か龍義殿は法華経と浄土真宗の争いを当てたな。
しかし三好長慶がおらぬと軍はまとまらん』
俺
『軍がまとまらない以上の災いが、
晴元様の身に起こります』
細川晴元
『分かった。何とかする。
このお礼は必ずさせてもらう』
守護大名決定のため、
二万貫を将軍宅へ届けねばならない。
柿崎と風馬と水斗に
明朝、将軍宅へ届けるよう指示する。
俺達は軍勢を引き連れ堺へ戻った。
俺は小西宅へ行く。
幹部や軍団は小西が用意した宿屋へ。
死者の実数が出た。
死者八十人。
重傷者百二十人。
当初の作戦通り、
細川晴元が偽装撤退をして
側面を突けていれば、
犠牲はほぼ無かっただろう。
それを思うと腹立たしい。
死者は軽騎兵が中心だ。
騎馬に不慣れな事が災いした。
また大きな募集をかけ、
訓練し直さねばならない。
戦は勝った。
だが――
代償は、確かに重かった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
『面白かった!』『続きが気になる!』と思っていただけたら、
ブックマークや、評価ポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★にして
応援していただけると、とても励みになります。
皆様のブックマークと評価が、
今後の更新の大きなモチベーションになっています。
どうぞ、よろしくお願いいたします!




