第97話 1537年 7歳 再び上洛だぞ
前回は三人娘の登場回でした。
そして今回は――将軍との直接交渉。
<室町御所>
京都の室町幕府の拠点、室町御所にやってきた。
二回目なので、何人か顔を覚えている者もいる。
俺と祖父で将軍の部屋へ行く。
土産物は予め渡してある。
俺と祖父は平伏する。
新津焼二皿、越乃柿酒、越乃枇杷酒、石けん、蜂蜜、越後上布、
佐渡ヶ島の金銀各二kg、蝦夷地の商品――昆布、鮑、各種干物、希少な毛皮の数々。
さらに銭一万貫。
俺と祖父が将軍の部屋に入ると、
土産物が綺麗に並べられていた。
将軍・足利義晴が部屋に入ってくる。
将軍
「為景に龍義よ。
面を上げよ。
遠き越後の地より、はるばる参ってくれたか。誠に心強いぞ。
この土産、誠に見事な品々よ。
この様な逸品は滅多に見られぬぞ。
うん?
この皿は何か」
俺
「新津焼と言います。
通常とは違う土を使い、磁器と言います」
将軍
「龍義よ、この新津焼、見事な出来栄えよ。
この様な佳品は贈答にこそ相応しい。
さらなる数を献上せよ。幕府の儀礼に用いるぞ」
将軍は前回と比べ、言葉が固い。
権威付けして何か無理難題を言ってくる予兆だ。注意しよう。
将軍
「聞けば細川氏綱の軍勢を見事に打ち破ったとか。
大いに功を立てたものだ。まことに大義である!」
1537年。
京は細川晴元が将軍義晴を擁して支配していた。
だが細川高国の遺児・細川氏綱が各地で兵を集め、
「反晴元」の旗を掲げて京奪還を狙っていた。
細川氏綱が、俺の軍を細川晴元の援軍と勘違いして攻撃してきた。
だから撃破した。ただそれだけだ。
今の俺達にとって、細川氏綱などどうでもいい。
蝦夷地が欲しいから、ここまで来たのだ。
余計な事を言われる前に、要件を先に言おう。
俺
「将軍様。
この度、遥々参上仕りましたは、謹んでお願い申し上げる儀にございます。
いま蝦夷の地は、南部氏にも安東氏にもあらず、
弊方長尾家が実効を以て治めております。
つきましては、
長尾家を蝦夷の守護大名としてご認可賜りますよう、
伏して願い奉ります」
将軍
「龍義よ。
蝦夷の守護大名を望むならば、まずはその力を示せ。
細川晴元の横暴を成敗し、
幕府の安寧を取り戻すのだ。
さすれば、そなたの請願を認め、
蝦夷の守護に任ずることを約すぞ」
――やはり出た。無理難題。
正直、細川撃破は難しくはない。
兵士を海路で一万人連れて来て、軍馬五千頭あれば可能だ。
しかし問題は騎馬だ。
この地に軍馬を運ぶ事が困難。
海路で軍馬は不可能。
陸路では敵国・加賀を無傷で通してくれねば無理。
俺
「将軍様。
細川晴元を成敗せよとのご下命、謹んで承りました。
されど、その大業を果たすには、
幕府にて軍馬五千頭をご用意賜るか、
加賀の地を我が軍勢が無傷にて通過できるよう、
ご手配頂きたく存じます。
さすれば、必ずや細川を討ち果たし、
幕府の御威光を示しましょう。
さらには、
先んじて蝦夷の守護大名にご任じ頂ければ、
感謝のしるしとして礼金二万貫を謹んで献上仕ります」
要は、相手の無理難題に、
こちらも無理難題を返して引っ込めさせる。
そして相手が欲しい餌をぶら下げる作戦だ。
将軍
「龍義よ。
二万貫の礼金、誠に気前のよい申し出よ。
されど、その巨額、
いつ頃参れば幕府の手元に届くのか。
はっきりと申せ」
――餌にかかった。
俺
「将軍様。
二万貫の礼金につきまして、謹んでお答え申し上げます。
蝦夷の守護大名にご任じ頂きましたその日の内に、
速やかに献上仕る所存にございます」
将軍
「龍義よ。
そなたの請願と礼金の申し出、しかと承った。
されど、余の一存にて即断はできぬ。
しばし待たれよ」
<御所を出る>
俺達一同は、室町御所を出た。
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