第66話 1536年 6歳 意外な人物との出会いだぞ
前回は李牧との出会い回でした。
今回は対馬で、もう一人の人材と出会います。
地味ですが、後々かなり効いてきます。
そうこうしているうちに、対馬に着いた。
宋氏への贈り物は、
大内家への半分ほどにしておく。
同行するのは、
俺、小西、甘粕、直江、安田。
手土産持ちとして、
兵士八名と島田、水斗を連れる。
宋氏の印象は――
凡庸、その一言だ。
特に語ることもない。
用事を済ませ、舟へ戻る途中。
何やら揉め事が起きていた。
普通なら通り過ぎる。
だが――
朝鮮語が聞こえてきた。
興味を引かれ、足を止める。
見ると、
一人の朝鮮人が朝鮮語と日本語で怒っている。
原因は単純だった。
「朝鮮人は金を持っているだろう」
そう決めつけた店の主人が、
法外な値を吹っかけたのだ。
俺は、
店主に差額分を払ってやる。
店主は渋い顔をしたが、
偉そうな武士を引き連れた六歳児に説教されれば、
逆らえるはずもない。
朝鮮人に話を聞く。
名は、キム・ペジョン。
朝鮮で陶芸家をしていたが、
まったく売れず、
良い土を求めて対馬に来たらしい。
片言の日本語は、
対馬出身の妻から学んだとのことだ。
俺
「キムの作品を見せてくれ」
キムは、
驚くほど嬉しそうに作品を差し出した。
出てきたのは、
九谷焼のような派手な絵柄の器。
……なるほど。
儒教の考えでは、
こうした奢侈は嫌われる。
朝鮮本土で評価されなかった理由は分かる。
だが――
磁器で作られ、
絵付けの腕も確かだ。
これは、
後世で評価される作品だ。
俺
「とても良い作品だ。気に入った」
「越後に来ないか。
良い土がある」
「日本で弟子を育ててほしい。
資金は俺が出す」
「金の苦労はなくなる。
作品と、弟子に時間を使え」
キムは、
呆然とした顔をした。
自分の作品を褒められたのは、
初めてだったのだろう。
キム
「……良い土が無ければ、帰るぞ」
問題ない。
日本で磁器が作られるのは、
本来なら1610年。
今は、1536年だ。
だが越後には、
新津氏の領地に磁器向きの土がある。
新津に任せればいい。
俺はキムに告げた。
「今から越後に帰る。
荷物をまとめて来い」
三時間後。
キムは、
妻と道具一式を抱えて舟に現れた。
迷いはない。
こうして俺たちは、
そのまま直江津へ戻った。
今回は対馬での人材獲得回でした。
磁器の話は、まだ序章です。
キム・ペジョンは重要人物で、これから物語に深く関わってきます。
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