第64話 1536年 6歳 よし、直江津に着いたけど大内家に向けて出発するぞ
前回、龍義は蝦夷地に足場を築いた。
だが、それは終わりではない。
国家を動かすには、次の一手が必要だった。
よし、直江津に着いた。
だが、休んでいる暇はない。
大内家に向けて、すぐに出発する。
一度、直江津に戻る。
春日山商店を呼び、
蝦夷地の商品を一部売却した。
空いた舟室には、
越乃菊酒、越乃枇杷酒、石けん、蜂蜜、越後上布を積み込む。
兵士は150名。
そのうち30名と、赤目、仁、リンを舟に残し、
残り120名を下船させた。
直江津での滞在は二日ほど。
準備を整え、大内家に向けて出発する。
舟は変わらず七隻。
事前に、
我々が向かうことは大内家と小西商店に知らせてある。
風も順調だった。
十日ほどで、下関に到着する。
手続きを済ませ、港を降りたところで――
小西隆佐が待っていた。
小西
「これは若様。
遠いところまで、よくいらっしゃいました。
蝦夷地まで行かれたとか」
……さすが小西。
情報が早い。
俺
「これは小西殿。
いつもながら、かたじけない。
早速だが、大内家に参ろうぞ」
同行するのは、
俺、小西、甘粕、直江、安田。
手土産持ちとして、
兵士八名、島田、水斗を連れる。
大内義隆は、ケチだ。
贈り物が少なければ、
何を言われるかわからない。
蝦夷地の希少な毛皮、鮭、昆布。
いつもの越乃柿酒、蜂蜜、石けん、越後上布。
総額、売価五千貫。
まず小西も礼物と金銭を出し、
我々も将軍からの紹介状と土産を渡す。
大内義隆は、すっかり上機嫌だった。
大内
「まずは立派な物を頂き、痛み入る。
将軍様も言っておられたが、
貴殿は神様の声が聞けるそうだな。
神様は、儂の今後をどう言っておった?」
――1551年。
陶隆房ら周防国守護代が、
「京都の上意」を受けたとして謀反を起こす。
ここから、大内家は転落していく。
……言うべきか。
言わないべきか。
どっちだ。
俺
「これから大内家は、
ますます栄えますでしょう!」
言わないことにした。
理由は単純だ。
大内家と深く付き合っても、
この先に繋がらない。
滅んでいく家と付き合っても、益はない。
大内義隆との関係は、
小西を通じて明との貿易ができれば十分だ。
それなりの歓待を受け、
俺たちは大内家を後にする。
向かったのは、
小西商店・下関支店。
ここで九島弥太郎を交え、
明との貿易用商品と、
堺で販売する商品を決めた。
七隻のうち――
一隻は、対馬の宋氏へ。
五隻は、明との貿易用。
一隻は、堺で販売する。
明との貿易は、
堺で売るより一・五倍の値が付く。
だが、
堺で売らなければ、次に繋がらない。
小西も大内も、
中間利益が取れる。
皆、大儲けだ。
取引は九島弥太郎に任せ、
俺たちは――
次なる目的地、対馬へ向かった。
蝦夷地は終点ではなく、起点です。
交易は人を結び、
選ばなかった未来もまた、静かに積み重なっていきます。
次回も、お付き合いいただければ幸いです。
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