第58話 1536年 6歳 黒崎仁と黒田リン
前回、蝦夷地を得れば天下に手が届くと話した。
だが、土地だけでは足りない。
それを支える“力”も必要だ。
黒田リンは、武芸大会でスカウトした弓の名手だ。
俺
「訓練の方はどうだった?」
黒田リン
「厳しかったですが、弦君と仁君が助けてくれました」
……弦君、仁君、か。
普通なら「黒崎弦様」「仁様」だろう。
俺
「ずいぶん仲がいいな」
黒崎仁
「リンは覚えが早いですから」
甘やかしてるな、これは。
部隊全体で可愛がってそうだ。
俺
「他の連中から、不満は出てないか?」
黒崎仁
「出てません」
……ということは、全員でチヤホヤしてるな。
俺
「仁から見て、リンはもう長弓に慣れたか?」
黒崎仁
「はい。とても上手いです」
俺
「なら、甲板に出て試そう」
今回、長弓は二十二張。
矢も十分に積んである。
半弓も五十張用意してきた。
仁とリンは、使い慣れた長弓を手に取る。
見物人の兵士が集まり、
騒ぎを聞きつけた甘粕と直江もやって来た。
俺
「リン。あれを撃て」
三十メートル先を飛ぶ鳥を指す。
普通の人間には、点にしか見えない距離だ。
――放たれた矢が、鳥を射抜く。
どよめきが起こる。
俺は、別の鳥を指した。
俺
「今度は仁だ」
黒崎仁が撃つ。
――命中。
再び、どよめき。
甘粕
「……若様。
是非、私も長弓を撃ってみたいのですが」
直江
「私も、ぜひ」
俺
「仁、リン。討ち方を教えてやれ」
二人は頷き、丁寧に説明を始めた。
今の俺の体では、
長弓も半弓も撃てない。
……早く成長したいものだ。
他の兵士には半弓を持たせ、
基本から教えていく。
リンと仁が指導する姿を見て、俺は思う。
――普段から、きちんと教えている。
それなら、任せて大丈夫だ。
天下を動かすのは、
戦略だけではありません。
それを形にするのは、人です。
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