第54話 1536年 6歳 訓練を始めるぞ
最初から厳しい訓練をする者は、愚か者だ。
俺はそう考えている。
だから――
最初の七日間は、懇親会にした。
魚も肉も酒も、腹一杯。
風呂にも入れ、まずは体を休めさせる。
そして、円になって座らせた。
俺
「順番に自己紹介だ。
家族のこと、生い立ち、なんでもいい」
場が温まると、早速――
ヤンキー兄弟
「俺が敵を皆殺しにするんで、よろしく」
周囲が苦笑する。
浜本
「僕は敵に殺されます」
高井
「いきなり死ぬな」
物真似師の清水が、俺の声真似を始める。
安田
「不謹慎です!」
大助はというと、色っぽい木杉付子を見つけて――
大助
「あなたの為なら死ねます」
木杉
「死ね」
即答だった。
志村大吾は酔っぱらい演技をしながら、小島弥太郎と話し込んでいる。
志村
「騎兵ってさぁ、突っ込むだけじゃ駄目なんだよ」
小島
「分かる。速度と角度だ」
殺人教団の教祖、空曹は意外にも穏やかだった。
酔った者を介抱し、愚痴を聞いて回っている。
空曹
「まあ、無理するな」
自来也は天才・大谷相手に昔話を延々と語っている。
黒崎兄弟は、黒田リンの苦労話を聞いて涙ぐんでいた。
兄
「……守ってやりたいな」
弟
「兄貴、俺もだ」
――仲の良い兄弟が、同じ女に惚れているらしい。
二メートルの大島は、医者の青田を捕まえて質問攻めだ。
大島
「戦場で一番死なない方法って何ですか」
青田
「怪我をしないことだ」
一同が笑う。
雷蔵、胤嵐、水斗、風馬、島田、北爺は固まって、
戦術や今後の訓練について話し合っている。
俺は、その光景を見ながら思った。
――知らない奴の背中は助けたくない。
だが、顔を知っている仲間なら、助けたい。
人間とは、そういう生き物だ。
七日後。
俺
「ここからは、厳しくなるぞ」
次の七日間は基礎体力。
二十キロ背負って三十キロ走。
腕立て、腹筋。
重装歩兵は半弓、十字槍、盾の基本。
軽騎兵は半弓、十字槍、乗馬。
長弓兵は長弓の基礎。
城や砦の特別攻撃隊――黒子。
俺
「ここは北爺に丸投げだ」
北爺
「覚悟しとけ」
悲鳴が上がった。
懇親会を挟みながら、訓練はどんどん厳しくなる。
三週間後。
全体戦術練習だ。
横陣、斜線陣、鶴翼、縦陣。
偽装撤退、中央突破、背面展開。
長駆迂回、伏兵、追撃。
軽装歩兵、遊撃、親衛隊には――
まず重装歩兵と軽騎兵の訓練を受けさせた。
理由は簡単だ。
俺
「軽装は、状況次第で重装にも騎兵にも戻る。
全部できないと意味がない」
五週間後から、模擬戦。
二隊、四隊に分けて戦わせる。
負けた者には反省をさせる。
勝った者には理由を言語化させる。
俺
「人間はな、負けないと本気にならない」
個人の反省が、
意識、知識、精神、技能を底上げする。
それを仲間に伝え、全体が強くなる。
後は――
締める所は締め、緩める所は緩める。
全体指導は、柿崎景家と宇佐美定満。
柿崎
「なかなか面白い軍だな」
宇佐美
「若様、化けますぞ」
重装歩兵は雷蔵と胤嵐。
軽騎兵は風馬。
長弓兵は黒崎弦。
黒子は北爺。
将来、親衛隊は島田と水斗に任せる。
軽装歩兵、遊撃、工兵の責任者は――
まだ決めない。
俺
「訓練の結果で決める」
戦場は、平等だ。




